ラボ・エクセルシオ/20世紀・日本と世界Ⅱ

2月最初の日記は、昨日聴いたコンサートの感想です。
お日柄があまりよろしくない中、晴海の第一生命ホールに出掛けました。無謀な試み、現代音楽のみによる弦楽四重奏曲の演奏会です。
「無謀」とは考えなかった好事家も結構いて、ホールはこの種のコンサートにしては入りもまぁまぁだったようです。
内容は以下のもの。
ウェーベルン/弦楽四重奏曲(1905)
ウェーベルン/弦楽四重奏のための5つの楽章作品5
ウェーベルン/弦楽四重奏のための6つのバガテル作品9
ウェーベルン/弦楽四重奏曲作品28
     ~休憩~
間宮芳生/弦楽四重奏曲第1番(1963)
間宮芳生/弦楽四重奏曲第2番「いのちみな調和の海より」(1980)
 クァルテット・エクセルシオ
晴海のSQWガレリア・シリーズでエクセルシオが取り組んでいる「20世紀 日本と世界」の2回目です。前回のクセナキス+武満に続いてウェーベルン+間宮。この組み合わせには特に意味はないそうです。
開演は6時からでしたが、事前にプレトークが予定されているというので5時ギリギリにホール定席に駆け込みます。
このプレトークは、司会進行の渡辺和(わたなべ・やわら)氏と作曲家ご本人の間宮芳生(まみや・みちお)氏による対談形式。
プレトークが終わってからホールに来た方も大勢おられましたが、これを聞くと聞かぬとでは作品への理解が大きく異なったはず。実に深い内容満載のトークでした。
凡そ30分、第2四重奏のヒントになったというメラネシアのパン・パイプの録音も流されました。
(チケット購入者にはプレトークの案内が郵送されてきましたし、直近に配布されていたチラシにも案内が添付されていました。関係者の努力が足りない、という議論にはならんでしょう)
予習はこれだけではなく、エク・プロジェクト限定ではありましたが、コンサートに先立つ月曜日(26日)には試演会も行われていました。
私共はこちらにも参加して、この難しいプログラムに備えていたわけ。
で、どうだったかと言うと、ウェーベルンと間宮という20世紀生まれの弦楽四重奏曲に対する理解は大きく深まりましたね。もしもう一度同じプログラムが演奏されるなら、間違いなく聴きに行きたいと思います。
例えばウェーベルン。この中の一曲が他の作曲家の作品と並べて演奏されたとしても、ウェーベルンって??? で終わってしまうでしょう。
今回のように、マーラーを連想させる1905年から始めて、作曲順に最後の作品28までを通して聴くと、ウェーベルンが理解できるのでした。
(話が難しくなるので、この日記には書きません)
間宮作品も同じです。正直に告白すれば、試演会の段階ではピンと来なかった両曲。今日のプレトークで作曲家自身の言葉、人柄、音楽観に触れて初めて作品の価値に目覚めましたね。いや、愛着が沸いたと断言してもよろしい。
試演会+プレトーク+当日のプログラムノート、この3種の神器があればウェーベルンも間宮も決して怖くない、素晴らしい音楽です。
もちろんクァルテット・エクセルシオの本番も見事な演奏でした。いつもそうですが、特にこの日は集中力が凄まじく、しわぶき一つ立てるのも憚られるほどの緊張感。それが快く感じられる演奏と言えばよいでしょうか。
全曲が終了。客席の間宮氏もステージに上がって聴衆の喝采を浴びていました。
今年80歳を迎えられる間宮氏。節度ある多弁家とでも言いましょうか、頭脳明晰にして些かの老いもなく、堂々たる舞台姿が印象的。

追記:

一つ書き落としました。
間宮の弦楽四重奏曲第2番は、田中千香士氏によって(氏を第1ヴァイオリンとするメンバーによって)初演されました。
田中氏は作品を大いに気に入り、弦楽合奏による演奏をしたい、と間宮氏に申し入れされたそうです。そこで間宮氏はコントラバスのパートを加筆し弦楽オーケストラ版を完成、田中氏の指揮で初演され、この形での録音も存在するそうです。
ご承知のように、田中千香士氏はつい先日お亡くなりになりました。
第2弦楽四重奏曲は、そもそもシカゴの日本領事館職員の中根献二氏への追悼の意味を含んだ作品。
この日の演奏は、公にはしないけれども、田中千香士氏への追悼の気持ちを籠めて行われたことを報告しておきます。

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