ロンシャンのギニー・トライアル

日曜日はアイルランドとフランスでパターン・レースが行われました。そのレポートです。

先ずはアイルランド、カラー競馬場で行われたグラッドネス・ステークス Gladness S (GⅢ、3歳上、7ハロン)。soft の馬場に8頭が出走し、3歳シーズンをGⅢ(コンコルド・ステークス)勝ちで締め括ったスルーテン Sruthan (去年はスルサンと表記していたかも)が9対4の1番人気。4対1の2番人気には3頭が並ぶ混戦。
逃げたのは去年のこのレースを大穴で制したカスタム・カット Custom Cut 。去年はケント厩舎でしたが、今年はオメーラ厩舎に転じ、人気も2番人気の一角。これを追うのが人気先行の(今回も2番人気)クリストフォロ・コロンボ Cristoforo Colombo 。両馬を見ながら進めていた本命スルーテンが残り1ハロンで2番手に上がると、後は一気の脚で交わして人気に応えました。
1馬身半差でカスタム・カットが逃げ粘り、ハナ差でこれも2番人気の一角ワンナビ―・ベター Wannabe Better の順。チーム・オブライエンのクリストフォロ・コロンボは、今回も評判倒れの4着敗退。

ポール・ディーガン厩舎、クリス・ヘイズ騎乗のスルーテンは、年を跨いでGⅢに連勝。4歳となって更に成長度を増し、このあとは仏遠征(GⅡのミュゲ賞)からGⅠのロッキンジ・ステークスを狙うという青写真を描いているようです。

続いてはフランスのロンシャン競馬場から二つのクラシック・トライアル。馬場は good 。
先ず牝馬によるグロット賞 Prix de la Grotte (GⅢ、3歳牝、1600メートル)は僅かに5頭立て。去年の2歳牝馬チャンピオンでマルセル・ブーサック賞(GⅠ)を制したインドネシアン Indonesienne が13対10の1番人気。

先手を取ったのは2番人気(9対5)でマルセル・ブーサックでは本命馬に4分の3馬身差2着(1番人気で)だったレストーク・イン・パリ Lesstalk in Paris 、例によって極端なスローペースに落とします。2番手に付けた3番人気(23対10)のストレート・シンキング Straight Thinking 、3番手のインドネシアンの位置取りは結局最後まで変わらず、レストーク・イン・パリの逃げ切り勝ち。4分の3馬身差でストレート・シンキングが2着、更に半馬身差でインドネシアンは3着に終わりました。
勝ちタイムは1分50秒64と信じられないような遅さ、勝馬を管理するジャン=クロード・ルジェ師でさえ、“朝の調教より遅いよ”と嘆いたほど。鞍上クリストフ・スミオンの絶妙なペースと言うか、ペースメーカーのいないレースでは止むを得ないのかも知れません。
ということでインドネシアン陣営もこれを単なる試走としか見ていないようで、本番の仏1000ギニーこそ勝負でしょう。“バトルに負けただけで、戦争に負けたわけではない”と言う陣営。

そして牡馬によるフォンテンブロー賞 Prix Fontainebleau (GⅢ、3歳牡、1600メートル)。こちらは8頭立て。クリテリウム・インターナショナル(GⅠ)を含めG戦2勝のエクトー Ectot が19対10の1番人気。相手はジャン=リュック・ラガルデール賞(GⅠ)を含めこれもG戦2勝のカラコンティー Karakontie で、2対1の2番人気。

こちらはグロット賞とは異なり、エクトー陣営が同じオーナーのセランス Serans をペースメーカーとして出走させ、レースが紛れることを防ぎます。そのセランス、スタートでやや出遅れますが、直ぐにペースメーカーの役割を果たすべく先頭に立ちます。これを2番手で追うエクトーが残り2ハロンで先頭に立つと、3番手の内に付けていたカラコンティーとの一騎打ち。2ハロンの激闘の末、エクトーがカラコンティーを首差抑えて優勝。3馬身半差で3番人気(76対10)のガリウェイ Galiway が3着に入りました。期待通りのトライアルです。
エリー・ルルーシュ厩舎、グレゴリー・ブノア騎乗のエクトーは、これで去年から5連勝。デビュー戦2着が唯一の敗戦です。その敗戦、7月フランス地方競馬コンピエーニュでの新馬戦で、破ったのがカラコンティーという因縁のライヴァルでもあります。その後はお互い別の路線を歩み、今回が久し振りの邂逅。今後もライヴァルとして切磋琢磨して行くことに期待が掛かります。

エクトーは英国のギニーとダービーにも登録があり、英2000ギニーには16対1のオッズが出されていますが、陣営は遠征せずに仏2000ギニーを目標にする由。勝タイムは1分39秒13で、決して速い時計ではありませんが、グロット賞の酷いタイムと比べれば遥かに実力が出た結果だったと言えそうです。

このレポートはこれで終わりですが、ロンシャンではG戦に先立って興味深いレースが行われました。その名もオルフェーヴル賞 Prix des Orfevres 。もちろん凱旋門賞2回2着の名馬を記念した命名ですが、日本を差し置いてロンシャンに新設されたのが面白い所。3歳の条件クラス戦ですが、距離は2200メートル。因みに今年は5頭立ての最低人気オーレ― Aurray という馬が勝ったようです。
これを反対から見れば、JRAという組織が如何に頭が固いか、遊び心が無いかの表れでもありましょう。日本で馬名を冠したレースと言えば、シンザン記念、トキノミノル記念、かつて存在したクモハタ記念、カブトヤマ記念くらいのもの。シンボリルドルフ賞もディープインパクト杯もありません。オルフェーヴルのような素晴らしい馬名に付いては、もっと大切に育んで行ってもらいたいと思いますがどうでしょうか。

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