日本フィル・第297回横浜定期演奏会

というようなワケで、みなとみらいに飛び込んだ時には、山田和樹自身によるプレトークがラフマニノフにまで進んでいました。いつも以上に人垣が大きい輪の大外でラフマニノフについての思い出などを聞きます。
何でも山田の英国デビューがラフマニノフの第2だったこと、後にロシアのオケと演奏した際には、演奏後に“君はロシア人だ”と言われて嬉しかったことなどを自ら語っていました。

今回のプログラムも、山田らしい伏線を張り巡らせた凝ったもの。若手ナンバーワンながら、山田の個性はプログラムの組み立て、考え抜いた選曲に表れていると言えそうです。↓

コルンゴルト/ヴァイオリン協奏曲
     ~休憩~
ラフマニノフ/交響曲第2番
 指揮/山田和樹
 ヴァイオリン/小林美樹
 コンサートマスター/白井圭(ゲスト)
 フォアシュピーラー/千葉清加
 ソロ・チェロ/菊地知也

プログラム誌を見るまでもなく、今定期の隠れテーマは「遅れて来たロマン派」とでも言うもの。現役時代は時代遅れのレッテルを貼られながら、21世紀の現代では却ってその新鮮からルネサンスさえ感じさせる二人の作曲家の代表作を並べたというのが選曲のミソでしょう。
コルンゴルトはもちろんのこと、ラフマニノフの作品も映画音楽で度々使われるという「映画繋がり」という側面も。ハリウッドを舞台にしたウィーン人とロシア人というエトランジェの作品という視点も魅力です。先ずはこのプログラムにブラヴォ~。

前半のコルンゴルト、私は確か3回目のナマ体験でしたが、改めて作品の素晴らしさを堪能。ミロを途中で切り上げて駆け付けた甲斐は充分ありましたな。
意外だった(失礼か)のは、ソリストの小林美樹。日本人離れした体躯と、何よりも楽器を鳴らす音量の半端では無いことに圧倒されました。完全に暗譜で臨むコルンゴルト、作品の内容と性格を鮮やかに弾き切りました。最近に出光音楽賞を受賞したばかりとのこと、知らなかった私が迂闊なのです。今後は彼女の動向から目が離せません。

山田のバックも見事で、2012年にワイマールでも取り上げただけのことはあります。以前にも触れたことがありますが、指揮するスタイルはお師匠さんソックリでも、出てくる音楽は先生とは全く別。何よりも協奏曲を振れる、という点を頼もしく感じます。例えば協奏曲の冒頭は3拍子→4拍子→3拍子と小節毎に拍子が変わりますが、この辺りの棒テク、4拍子の2拍目を左に持って行く仕草は師匠のコピー。しかし苦笑すること勿れ、音楽は遥かに瑞々しく、推進力にも事欠きません。

それは後半のラフマニノフでも同じで、正に山田は伸び盛りの人と評することが出来ましょう。接する度に成長が窺われる。
日本フィルのラフマニノフ第2と言えば、これまでも二人の巨匠による演奏に接したし、それらはCDにもなっています。ここでまた若手指揮者に任せることも無かろうにとは思いましたが、やはり聴いてみれば山田らしい青春の輝きが聴こえてきます。
第3楽章の昇華などには更に成長の余地はありましょうが、これはこれで3人3様の名演だったと思います。“日本フィルはロシアのオケだ”、とロシアのオケが言うかも知れません。
今回のコンマスは、ウィーン・フィルでも弾いた経験を持つゲストの白井氏。不思議なことに日フィルの音がいつもよりウィーン的に聴こえてきましたっけ。

山田の次回日フィル登場は9月の東京定期。単にリヒャルト・シュトラウス生誕記念のプログラムに留まらず、「屈折した愛」という隠れテーマがチラチラしている選曲。それを考えただけでも、聴き逃すわけにはいきませんね。

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