2014クラシック馬のプロフィール(3)

早速、先の日曜日に行われたフランスのクラシックを制した馬の血統を紹介していきましょう。先ずは仏1000ギニー、プール・デッセ・プーリッシュを3番人気で勝ったアヴニール・セルタン Avenir Certain から。
アヴニール・セルタンは、父ル・アーヴル Le Havre 、母パジー Puggy 、母の父マーク・オブ・エスティーム Mark of Esteem という血統です。因みに馬名は「確かな未来」とでも言った意味でしょうか。

牝系に入る前に訂正とお詫びがあります。昨日アップしたギニー・レポートで同馬の父をオアシス・ドリームと書いてしまいましたが、これは上記の様にル・アーヴルの間違いでした。ごめんなさい。
ということでル・アーヴルについては一言、仏2000ギニーでは2着だったものの、仏ダービーに勝ったクラシック・ホース。無傷でクラシック・ホースになった「確かな未来」のオークスでの運命も予言するような父親と呼んでも良いかも知れません。

アヴニール・セルタンの母パジー(2004年 鹿毛)は、2歳から4歳まで走って14戦1勝と、数字だけ見れば大した経歴ではないと思われるかも知れません。1勝は2歳時にソールズベリーのデビュー戦(7ハロン)に勝ったもので、これが彼女の唯一の勝鞍でした。
その後は未勝利だったものの、2戦目で挑戦したオー・ソー・シャープ・ステークス(当時はリステッド)が2着、2歳最後のロックフェル・ステークス(GⅡ)でも3着と入着を果たしています。3歳初戦のフレッド・ダーリング・ステークス(GⅢ)は13頭立ての最下位と調整途上でしたが、果敢に1000ギニーに挑戦してフィンシール・べオ Finsceal Beo の8着(21頭立て)と善戦しました。
このあとも結果こそ出なかったもののトップ・クラスに挑戦し続けます。即ちエプサムのプリンセス・エリザベス・ステークス(GⅢ)7着、ロイヤル・アスコットのコロネーション・ステークス(GⅠ)11着、グッドウッドではオーク・トゥリー・ステークス(GⅢ)12着と。負けても続けてG戦に出走したのは、陣営に期待感があった表れかと思われます。
3歳終戦となるポンテフラクトのリステッド戦を最後に北欧に転厩、4歳時はノルウェーとスウェーデンの短距離と1マイル戦に5戦し、現地のG戦でも入着を果たして繁殖に上がりました。

アヴニール・セルタンはパジーの2番仔に当たりますが、母の初産駒はアジュダン・シェフ Adjudant Chef (2010年 鹿毛 牡)と言い、面白いのは父がヴィータローザであることでしょう。競馬歴10年以上のファンならご存知の通り、ヴィータローザはサンデー・サイレンス Sunday Silence 産駒でラジオたんぱ賞、セントライト記念、中山金杯と重賞に3勝した馬。菊花賞は7着、天皇賞は二度挑戦して春12着、秋7着の結果が残っています。
ヴィータローザは現在イタリアで種牡馬として供用されているようで、アヴニール・セルタンの半兄の父でもあります。現地でのスペルは Vita Rosa 。このアジュダン・シェフ、現時点では13戦2勝だそうですが、詳しい履歴などは判りません。

2代母ジャカルタ Jakarta (1999年 鹿毛 父マキャヴェリアン Machiavellian)は、英国でクライヴ・ブリテン師が調教し8戦1勝の実績。唯一の勝鞍はブライトン競馬場の7ハロン戦でした。調べた限りで彼女の代表産駒はパジーただ1頭ですが、念のため産駒を列記すると、
2004年 パジー アヴニール・セルタンの母
2005年 ベンクーレン Bencoolen 鹿毛 せん 父デイラミ Daylami 未出走?
2006年 インドネシアン・アイドル Indonesian Idol 鹿毛 牡 父エクシード・アンド・エクセル Exceed and Excel 1戦未勝利
2008年 ジャワ・ジャズ Java Jazz 鹿毛 牝 父ジングシュピール Singspiel 未出走?
2009年 ミシャー Mishhar 鹿毛 牝 父オーソライズド Authorized クライヴ・ブリテン厩舎所属 16戦未勝利

3代母ランダ Lunda (1993年 鹿毛 父ソヴィエト・スター Soviet Star)も3戦未勝利と競走成績は全く無い馬でしたが、その仔ランディーズ・レーン Lundy’s Lane (2000年 鹿毛 せん 父ダーシャーン Darshaan)はタフな中距離馬で、50戦4勝。8ハロンから13ハロンまで走り、牡馬だった頃にはイタリア・ダービー3着、クレイヴァン・ステークス(GⅡ)2着の実績があり、英2000ギニーと英ダービーでも共に19着(どちらも20頭立て)という珍しい結果も残っています。

そして4代母ルカイヤン・プリンセス Lucayan Princess (1983年 鹿毛 父ハイ・ライン High Line)が登場してきます。彼女は4戦2勝、2歳時にスイート・ソレラ・ステークス(当時はリステッド)に勝ち、3歳時は僅か1戦のみでしたがチェシャー・オークス(リステッド)で3着して繁殖に上がります。
その産駒を全て取り上げる余裕はありませんが、主なものに限っても、
1990年生まれのニードル・ガン Needle Gun (牡 父シュア・ブレイド Sure Blade)はクライヴ・ブリテン厩舎で36戦3勝し、アイルランドのガリニュール・ステークス(GⅡ)に優勝、イタリア・ダービーとセント・ジェームス・パレス・ステークスで共に2着。
1992年生まれのルーソ Luso (牡 父サルセ Salse)もブリテン師が管理して35戦10勝。イタリア・ダービー優勝の他にアラル・ポカル、ドイチュランド・プライス、香港ヴァーズ2回などGⅠに勝ち、プレミオ・エリントン(伊GⅡ)、アール・オブ・セフトン(GⅢ)、チェスター・ヴァーズ(GⅢ)にも優勝。
1995年生まれのクラウド・キャッスル Cloud Castle (牝 父イン・ザ・ウィングス In The Wings)はネル・グィン・ステークス(GⅢ)勝馬で、ヴェルメイユ賞2着、ヨークシャー・オークス3着とGⅠの入着馬 やはりブリテン厩舎
1998年生まれのウォーサン Warrsan (牡 父カーリアン Caerleon)もまた当然ながらブリテン師の管理下で走り、43戦9勝。コロネーション・カップ2回、バーデン大賞典2回とGⅠに4勝、他にジョッキー・クラブ・ステークス(GⅡ)とジョン・ポーター・ステークス(GⅢ)にも勝ったステイヤー。

以上2頭のGⅠ勝馬、2頭のGⅠ入着馬を輩出したルカイヤン・プリンセスを名牝と呼ばなくて何でしょうか。何れもが2400メートルを中心にした距離で実力を発揮しており、アヴニール・セルタン陣営が仏オークスにも自信を深めている根拠が此処にあるのです。
更に7代母リルヤ Lilya にまで遡れば、ダービー馬クリス・キン Kris Kin 、これも仏1000ギニー馬のローズ・ジプシー Rose Gypsy も出ており、その7代母は凱旋門賞馬トピオ Topyo の近親でもあります。

ファミリー・ナンバーは7-a。ヴィシシテュード Vicissitude を基礎に持つ牝系です。

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