2014クラシック馬のプロフィール(11)
ヨーロッパ競馬、今年のクラシック馬の血統紹介も愈々最終回です。ドンカスターのセントレジャーを本命で制したキングストン・ヒル Kingston Hill 。
レースのレポートでも紹介した通り、キングストン・ヒルは父マスタークラフツマン Mastercraftsman の初年度産駒で、セントレジャーの翌日に愛チャンピオンに勝ったザ・グレイ・ギャッツビー The Grey Gatsby と共に父の名声を一気に高めたことも話題になりました。
マスタークラフツマンについてはプロフィール(7)、ザ・グレイ・ギャッツビーの項で詳しく書きましたから、ここでは省略します。ただ英仏のクラシック馬の他に、今年のイタリア1000ギニー(レジーナ・エレナ賞)に勝ったヴォーグ・ヌーヴェル Vaugue Nouvelle という牝馬もマスタークラフツマン産駒であることを追加しておきましょう。
ライヴァルのシー・ザ・スターズ Sea the Stars がオークス馬タグルーダ Taghrooda と、ドイツ・ダービー馬シー・ザー・ムーン Sea the Moon を初年度から輩出したのと良い勝負。これからも2頭のライヴァル関係が続いてくことに期待しましょう。
という前置きでキングストン・ヒルの血統です。父マスタークラフツマン、母オーダシューズ Audacieuse 、母の父レインボウ・クェスト Rainbow Quest 。例によって牝系を遡っていきます。
母オーダシューズ(1997年 鹿毛)は、フランスでエリー・ルルーシュ師が管理した馬。2歳時は3戦して3戦未勝利でしたが、3歳時は8戦3勝。5月にサン=クルーの未勝利戦(1600メートル)で勝つと、6月にはサンドリンガム賞(GⅢ、シャンティーの1600メートル)5着、クロエ賞(GⅢ、シャンティーの1800メートル)6着とG戦に挑戦するも入着は果たせず。
夏を越して9月のロンシャンでリステッド戦(牝馬限定のリナクール賞、2000メートル)で2勝目を挙げると、GⅠのオペラ賞(2000メートル)で13頭立ての6着。そして遂に10月24日にサン=クルーのフロール賞(GⅢ、2100メートル)に勝ってG戦勝馬となります。クラシック路線には乗れませんでしたが、シーズン末の2000メートル戦ではG級の能力を持ち、中距離から長距離の可能性も持っていたと思われます。
これで現役を退いたオーダシューズ、繁殖牝馬として判明している記録を列記すると、
2004年 イル・デゼール Ile Desert 鹿毛 牝 父グリーン・デザート Green Desert 未出走?
2005年 ラモナ・チェース Ramona Chase 鹿毛 せん 父ハイ・シャパラル High Chaparral 英国で平場と障害に少なくとも72戦4勝。2歳の未勝利戦(8ハロン)の他は全てハンデ戦の勝鞍で、10ハロンから12ハロンでのもの。6歳と7歳で挑戦した伝統のシティー・アンド・サバーバン・ハンデ(エプサムの10ハロン)では夫々2・5着に入っています。
2007年 ウォラムラ Wolumla 鹿毛 牝 父ロイヤル・アプローズ Royal Applause 1戦未勝利
2008年 ミレヴィーニ Millevini 鹿毛 牝 父ホーク・ウィング Hawk Wing ノルウェーで1戦未勝利?
記録されたこのあとの産駒がキングストン・ヒルということになり、今年のレジャー馬が母の仔では出世頭ということになりましょう。
2代母セーラ・ジョルジーナ Sarah Georgina (1987年 鹿毛 父パーシャン・ボールド Persian Bold)は英国で2歳時のみ走って4戦1勝。2戦目にウインザーの14頭立て6ハロン戦を3馬身差で勝ち、アスコットのプリンセス・マーガレット・ステークスに出走して4着でした。7ハロンまでの経験しかありませんでしたが、タイムフォーム誌は1マイルまではこなせる、とコメントしています。
彼女の産駒では少なくとも6頭が勝馬になりましたが、最も勝鞍が多かったのは2年目の産駒ロード・ジム Lord Jim (1992年 鹿毛 せん 父カヤーシ Khayasi)でしょう。英愛仏独の4か国で走り、平場と障害で7勝。アイルランドのチャレンジ・ステークスに勝ったほか、ドイツではGⅢ(オレアンダー・レンネン)で3着したこともあります。勝鞍は1マイル半から1マイル4分の3、ステイヤーと評して良いでしょうか。
続いてはキングストン・ヒルの母オーダシューズが続き、活躍馬としては恐らくウエイターズ・ドリーム Waiter’s Dream (2008年 鹿毛 せん 父オアシス・ドリーム Oasis Dream)が最後となります。
この馬は英国でブライアン・ミーハム師が管理、2歳時にはヨーク競馬場でアコーム・ステークス(GⅢ)に勝ち、ドンカスターのシャンペン・ステークス(GⅡ)でも2着しましたが、3歳時は香港に転売され、去勢された上にニュー・グリーンフィールド New Greenfield と改名。現地のG戦に出走することもあったようですが、恐らく未勝利で現役を終えたと思われます。
3代母はダンス・バイ・ナイト Dance By Night (1982年 栗毛 父ノースフィールズ Northfields)。彼女も愛国で調教され、ブライトンとエプサムで7ハロンのナーザリー戦に勝ちましたが、故障のため走ったのは1シーズンのみで繁殖に上がります。
彼女は産駒に恵まれ、特に牝馬には優れたものが出ました。中でもセーラ・ジョルジーナの一つ下の半妹に当たるダンスーズ・デュ・ソワール Danseuse du Soir (1988年 鹿毛 父ザッチング Thatching)は、フランスでこれもエリー・ルルーシュが管理し、仏1000ギニーとフォレ賞とGⅠに2勝したクラシック馬となりました。
4代母エルヴィーナ Elvina (1975年 芦毛 父ダンサーズ・イメージ Dancer’s Image)はアイルランドで走り、3歳時に6ハロンと10ハロンで勝った馬。
また5代母レリシア Relicia (1967年 栗毛 父レルコ Relko)もアイルランドでジム・ボルジャー師が管理した馬。3歳シーズンの後半で10ハロンに勝ち、母馬としては恵まれない状況下でもスチュワーズ・カップに勝ったラザフォード・グレイズ Rotherfield Greys などを出しました。
更にこの牝系を遡って7代母のデアリング・ミス Daring Miss に至ると、1000ギニー、サセックス・ステークスなどに勝ったクラシック牝馬ハンブル・デューティー Humble Duty 、豪州でヴィクトリア・ダービーを制したスター・オブ・ザ・レルム Star of the Realm 、コロネーション・ステークスのジャシンス Jacinth などが出るファミリーと繋がります。
ファミリー・ナンバーは21-a。ワグテイル Wagtail を基礎牝馬とする牝系です。
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