GⅠ4鞍の豪華版
一昨年の土曜日に行われたイヴェントをやっとアップし終わりました。今日の日記更新の最後は昨日の日曜日にヨーロッパで行われたG戦のレポートです。アイルランドとフランスで行われたGⅠ4鞍を含む豪華版、先ずは愛クラシック第2弾が行われたカラー競馬場から。
今回もレース順に紹介して行きます。この日は3鞍のパターン・レースが組まれ、最初は英愛ダービーのトライアルとなるガリニュール・ステークス Gallinule S (GⅢ、3歳、1マイル2ハロン)。馬場は何れも yielding とやや回復傾向。
それでも2頭が取り消して5頭立て。去年は後のセントレジャー馬リーディング・ライト Leading Light が制した一戦とあり、今年もエイダン・オブライエン厩舎のアデライデ Adelaide が4対6の断然1番人気に支持されていました。
レースは3番人気(7対1)のメコン・リヴァー Mekong River が後続を離しての大逃げ。これを3番手で控えていたアデライデが期待通り捉えると、逃げ馬を3馬身突き放して優勝、見事期待に応えました。半馬身差で2番手に付けていた最低人気(25対1)のボカ Boqa が3着。
このレースは最近11年間で7勝目となるオブライエン厩舎、鞍上はもちろん主戦のジョセフ・オブライエンでした。2歳時には新馬戦でデビュー勝ちしたのみ。今期初戦はフランスに遠征してオカール賞2着で注目されたガリレオ産駒。
これが未だ3戦目で、英ダービーにも登録があります。ダービーのオッズは25対1が出されましたが、陣営はアスコットのエドワード7世ステークス、又は仏ダービーを視野に入れている様子。但しフランス遠征はレース間隔が詰まるので、アスコットの方が現実的と言えそうです。
続いてはGⅠ第一弾のトトソルズ・ゴールド・カップTattersalls Gold Cup (GⅠ、4歳上、1マイル2ハロン110ヤード)。馬場が相変わらず重く、3頭が回避しての5頭立て。イーヴンの1番人気には2頭が並び、フランケル Frankel の全弟で漸くここに来てGⅠ狙えるまでに成長してきたノーブル・ミッション Noble Mission と、前走GⅢに勝ったBCターフ馬のマジシャン Magicien 。
このGⅠ戦は毎年小頭数になる傾向にあり、いづれはGⅠから降格されるのではという噂もあるレース。オブライエン陣営としてはそれを避けるためにもマジシャンを出走させてきたという苦渋の選択もあったやに聞きます。
レースはノーブル・ミッションの独壇場。スタートからゴールまで他馬に先頭を譲らない逃げ切り勝ちでGⅠ初タイトルを獲得しました。マジシャンも3番手から前を捉えようとしましたが、この展開では如何ともし難く1馬身4分の1差の2着がやっと。頭差で最低人気(50対1)のユーフラシア Euphrasia が3着。日本の報道ではレヴェルの高いGⅠ戦のように扱われていたようですが、実態は何とかGⅠの面目を保った程度のものでしょう。
ニューマーケットから遠征した勝馬のレディー・セシルにとっては待望のGⅠ初制覇。故サー・ヘンリーの遺産を受け継いだセシル厩舎ではGⅠ制覇の際には旗を掲げて祝福する伝統がありますが、昨日は久し振りに旗が掲揚されました。もちろん故ヘンリーへの敬意という意味も含まれるでしょう。
ノーブル・ミッションは漸く兄フランケルの呪縛から脱したか、これでG戦3連勝で兄に一歩近付きました。次はエクリプス・ステークス辺りでしょうが、強敵は新しい3歳世代になりそう。
最後にアイルランド1000ギニー Irish 1000 Guineas (GⅠ、3歳牝、1マイル)。枠順紹介から1頭が取り消して11頭立て。ニューマーケットではミス・フランス Miss France の2着だったライトニング・サンダー Lightning Thunder が10対3の1番人気に支持されていました。
逃げたのは3頭出しオブライエン厩舎のペースメーカーを担うワンダフリー Wonderflly 。もちろん単なるペースメーカーではなく、他の2頭は余り差の無い1頭です。ワンダフリーが役目を終えると最初に先頭に立ったのは、人気のライトニング・サンダー。英国の着順を一つ上回るべく懸命に粘りましたが、後方に待機していた7番人気(10対1)の1頭でやはりオブライエン厩舎のマーヴェラス Marvellous が目の覚めるような脚色で本命に並び掛けると、一瞬のうちに3馬身突き放しての圧勝劇。
更に4馬身4分の1差が付いて2番人気(4対1)のヴォート・オフン Vote Often が3着に入り、3番手を進んだアヴェニュー・ガブリエル Avenue Gabriel が4着。チーム・オブライエンでジョセフが選択したパレス Palace は5着に終わりましたが、主戦騎手の選択は真に難問だったと想像されます。実際父が薦めたのは勝ったマーヴェラスだったとも。
そのマーヴェラスはライアン・ムーアが騎乗、ムーアにとっては愛1000ギニー初制覇となります。エイダン・オブライエンにとっては、これが6勝目の愛1000ギニー。
ガリニュールに勝ったアデライデと良く似た経歴で、2歳時はネイヴァンでの新馬勝ちのみ。今期初戦のレパーズタウン1000ギニー・トライアル(GⅢ)では6着と期待を裏切りましたが、僅か3戦目でのクラシック制覇。未だ未だ成長して行くガリレオの娘ということになりましょう。
エイダン師は英オークスの可能性も捨てておらず、8対1のオッズが出されました。
アイルランドは以上、後半はフランスのロンシャン競馬場で行われたG戦3鞍に行きましょう。馬場はやはり soft と力の要るコース。
先ずは仏オークスのトライアルとなるサン・タラリ賞(GⅠ、3歳牝、2000メートル)。8頭が出走し、2頭の無敗馬(共に2戦2勝)に注目が集まります。前走ヴァントー賞(GⅢ)に勝ったアガ・カーンのヴァジラ Vazira が6対4の1番人気。
逃げたのはレディー・ペンコ Lady Penko でしたが、ヴァジラはスタートで出遅れて苦しい展開。結果これが原因か、優勝は2番人気(17対10)でもう1頭の無敗馬ウィー・アー We Are の方。ゲートインを嫌っていたものの、レースは順調でした。ヴァジラも出遅れを挽回したものの3馬身の決定的な差を付けられて2着。更に3馬身差でべレンジ・カ Berenzi Ka が3着という結果です。
ウィー・アーは、フレディー・ヘッド厩舎、ティエリー・ジャルネ騎乗。今年デビューの新星で、ロンシャンの1600メートル新馬戦、サン=クルーの2200メートル条件戦と連勝。無傷のままGⅠ馬のタイトルを獲得し、真の試金石は仏オークスでしょう。
GⅠのもう一鞍は、古馬によるイスパハン賞 Prix d’Ispahan (GⅠ、4歳上、1850メートル)。こちらもサン=タラリ同様2頭の対決ムード。共に複数のGⅠを制している古豪で、方や前走ガネー賞でトレーヴ Treve に土を付けたシリュス・デ・ゼーグル Cirrus des Aigles 、此方マイルGⅠに2勝、前走もロッキンジを制しているオリンピック・グローリー Olympic Glory 。地元ということもあってシリュスが3対5の1番人気、英国ハノン厩舎のオリンピック・グローリーは19対10で2番人気。
3番人気(119対10)のアノディン Anodin が行くと思われましたが、先頭を主張したのは本命のシリュス・デ・ゼーグル。そのままアノディンに1馬身半差を付ける逃げ切り勝ちでした。更に1馬身4分の1差でポリアーナ Pollyana が3着に入り、オリンピック・グローリーは見せ場無く4着敗退。ロッキンジからレース間隔が詰まっていたこと、距離が若干長かったことが敗因でしょうか。今後は本来のマイル戦線に戻ることが予想されます。
バランド=バルブ夫人が管理するシリュス・デ・ゼーグルについては改めて紹介することも無いでしょう。鞍上クリストフ・スミオンもガッツ・ポーズ。せん馬のため凱旋門賞には出走できませんが、8歳の現在もなお健在を主張する存在。
ロンシャンの最後は長距離のヴィコンテッス・ヴィジエ賞 Prix Vicomtesse Vigier (GⅡ、4歳上、3100メートル)。かつてはジャン=プラ賞(同名の3歳戦とは別)として知られた伝統のマラソンですね。8頭が出走してきましたが、何と6頭は前走バルべヴィユ賞(GⅢ)で戦った馬たち。特に1着から4着までがそのまま参戦し、実力の確認の感があります。
1番人気に支持されたのは勝馬のモンクレール Montclair ではなく、2着だったテルービ Terrubi で23対10。モンクレールは16対5の2番人気で続きます。
しかし結果はスクランブル。勝ったのはバルべヴィユ3着で、今回は4番人気(49対10)だったフライ・ウィズ・ミー Fly With Me 。ハナ差でバルべヴィユ4着、人気の無かった(269対10、最低人気)ゴールドタラ Goldtara が2着に入り、1馬身4分の1差でテルービは3着。モンクレールはそのあと、4着に終わりました。順当と言うべきか波乱と言うべきか、いずれにしてもこの馬たちのライヴァル関係は1年を通して続くことになりそうです。
フライ・ウィズ・ミーはエリック・リボー厩舎、マクシム・グィヨン騎乗の4歳馬で、G戦は初勝利、前走のバルべヴィユ賞がG戦デビューでもありました。
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