2014クラシック馬のプロフィール(7)

英愛仏クラシック勝馬の血統を検討するコーナー、愈々今年もダービー・オークスの部に入ってきました。その第一弾は、例年と異なってイギリスより先に行われたフランス・ダービー勝馬ザ・グレイ・ギャッツビー The Grey Gatsby
ザ・グレイ・ギャッツビーは、父マスタークラフツマン Mastercraftsman 、母マリー・ヴァイソン Marie Vison 、母の父アントレプルヌール Entrepreneur という血統。
その名の通り、芦毛馬。177回の仏ダービー史、毛色の判明しない馬も何頭かいましたが、調べた限りでは芦毛馬が勝ったのはザ・グレイ・ギャッツビーが8頭目と思われます。最も近いのは2011年のリライアブル・マン Reliable Man で、その父ダラカニ Dalakhani も2003年の仏ダービー馬でした。

牝系に入る前に父マスタークラフツマンについて簡単に触れておきましょう。クールモアを代表するこの種牡馬に付いては、当ブログでも既にプロフィールを紹介しています。2006年生まれ、愛2000ギニー勝馬ですから、2009年の5月にプロフィール(5)として取り上げました。そちらも参考にしてください。
2009年といえば、何と言ってもシー・ザ・スターズ Sea the Stars が圧倒的に強かった世代で、マスタークラフツマンはシー・ザ・スターズと三度対決し、三度とも敗れていました。即ち、2000ギニー(1着対5着)、ジャドモント・インターナショナル(1着対2着)、アイリッシュ・チャンピオン(1着対3着)と。

2頭のライヴァルは何れも3歳で現役を引退、2010年から種牡馬として供用されましたから、今年のクラシック世代が初年度産駒ということになります。ダービー、凱旋門賞を制したシー・ザ・スターズに対し、マスタークラフツマンは愛2000ギニーの他にセント・ジェームス・パレス・ステークス、ダンダルクのダイアモンド・ステークス(約10ハロン)に勝っており、1マイルから10ハロンを得意とした馬でした。
ザ・グレイ・ギャッツビーは10ハロンと100メートルの仏ダービーを制したのですから、正にマスタークラフツマンの距離適性を鮮やかに受け継いでいるとも言えそう。凱旋門賞挑戦の可能性もあるとのことですから、距離適性に注目が集まるのは当然でしょう。
なお、仏ダービーで2着に破ったシャムキール Shamkir はシー・ザ・スターズの初年度産駒。現役時代はどうしても勝てなかった相手でしたが、種牡馬としては一歩先んじてクラシック産駒を出し、しかもライヴァル産駒を破ったのですから、競走馬時代の雪辱を果たしたことにもなるでしょう。しかしライヴァル関係は未だこれから、2頭の戦いを見守っていきましょう。

前置きが長くなりましたが、ザ・グレイ・ギャッツビーの牝系です。
母マリー・ヴァイソン(2001年 栗毛)はフランスで走った馬で、ザ・グレイ・ギャッツビーの生産者でもあるマルコム・パリッシュ氏がオーナー。デヴィッド・スマガ厩舎に所属し、2歳から3歳にかけてフランスとアイルランドで走り、10戦1勝。勝鞍は3歳時にドーヴィルのポリトラック・コース(1300メートル)で挙げたもの。リステッド戦のソリチュード賞(1600メートル)で2着という実績もあります。2005年に繁殖に上がり、これまでの成績は以下の通り。

2006年 ドリーム・ランド Dream Land 鹿毛 牡 父オアシス・ドリーム Oasis Dream 20戦2勝(ドーヴィルの8ハロン、エクス・レ・バンの6ハロン) ハンデキャップ・タイプ
2009年 カーネル Kanel 栗毛 牝 父ザミンダー Zamindar フランスで10戦未勝利
2010年 アランド Aland  牡 父アヌーマ Hannouma 未出走?
2011年 ザ・グレイ・ギャッツビー

ザ・グレイ・ギャッツビーは母の2頭目の勝馬で、現時点での出世頭。2012年生まれはファスネット・ロック Fastnet Rock 産駒の牝馬マリー・ロック Marie Rock と命名されたようです。

2代母メティッス Metisse (1995年 栗毛 父キングマンボ Kingmambo)もフランスで走り、6戦2勝。特に注目される様な戦績はありません。
その産駒の主なものは、2004年生まれのステディー・アズ・ア・ロック Steady as a Rock (栗毛 牡 父ロック・オブ・ジブラルタール Rock of Gibraltar)は英国でマーク・ジョンストン師が調教したあとハンガリーに転売され、中央・東ヨーロッパでスプリンター/マイラーとして活躍するも、脚部故障で安楽死した馬。
2006年生まれのカフェ・レイサー Cafe Racer (鹿毛 せん 父ロイヤル・アプローズ Royal Applause)もフランス(アンドレ・ファーブル厩舎とロワイヤー=デュプレ厩舎)からドバイへと転々としたスプリンター。
2010年生まれのサン・トーマス Saint Thomas (鹿毛 牡 父ダンジリ Dansili)は、やはりフランスでパスカル・ベイリー師が管理し5戦2勝。ダフニス賞(GⅢ)3着の実績。

ダービー血統と言うよりB級のスプリンター/マイラーを多く輩出する牝系の様にも見えます。

しかし3代母マクシモヴァ Maximova (1980年 鹿毛 父グリーン・ダンサー Green Dancer)まで遡ると様相は一転、A級の馬名が続々と出てきます。
マクシモヴァ自身はフランスでクリティック・ヘッド女史が調教し、14戦7勝。2歳時には、現在は廃止されているサラマンドル賞(GⅠ)に勝ち、3歳時に仏1000ギニーで3着、愛1000ギニーでも2着したクラシック・タイプ。母としても大成功。主な産駒を列記すると、
1987年生まれのセプティエーム・シエル Septieme Ciel はラ・フォレ賞(GⅠ)の他、クリテリウム・ド・メゾン=ラフィット(GⅡ)、トーマス・ブライアン賞(GⅢ)、メッシドール賞(GⅢ)に優勝。
1988年生まれのマクシグルーム Maxigroom はアメリカで活躍し、フォート・マーシー・ハンデ(GⅢ)、オーシャンポート・ステークス(GⅢ)など9勝。
1992年生まれのマクーンバ Macoumba はマルセル・ブーサック賞(GⅠ)に優勝し、ケンタッキー・ダービー馬オーブ Orb を出した種牡馬マリブー・ムーン Malibu Moon の母となった馬。

4代母バラカラ Barakara (1972年 栗毛 父スワップス Swaps)は2勝馬。その娘ヴィリカイア Vikikaia はポルト・マイヨー賞(GⅢ)勝馬で、1000ギニー4着、愛1000ギニー2着、アベイ・ド・ロンシャン賞も2着で、3歳牝馬の短距離チャンピオンに選ばれた馬。その2代仔にBCターフ・スプリントに勝ったリーガリー・レディー Reagally Ready を出したスピード系。
更にバラカラの産駒ナヴラチロヴナ Navratilovna はアスタルテ賞(GⅡ)に勝ちましたが、このレースは現在ジャン・ロマネ賞と改名されてGⅠに格上げされた一戦。

5代母セクシミー Seximee は、2000ギニー馬でジャック・ル・マロワ賞とモルニー賞にも勝ったGⅠ馬ノノアルコ Nonoalco の母でもあります。

ファミリー・ナンバーは2-s。オーヴィル・メア Orville Mare を基礎とする牝系です。

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