タグルーダ、無敗でオークス戴冠

愈々今年もエプサム競馬場にオークス、ダービーがやってきました。今回は昨日行われたオークスから。
この日はG戦3鞍ですが、先ずはオークス Oaks (GⅠ、3歳牝、1マイル4ハロン10ヤード)から行きましょう。馬場は good 、既に枠順で紹介した17頭立て。実力の比較が難しいメンバー、1番人気でも4対1と倍率が高く、愛1000ギニーを圧勝したマーヴェラス Marvellous が1番人気に推されていました。
以下、9対2でウェルド厩舎のタファーシャ Tarfasha が2番人気、無敗の良血馬タグルーダ Taghrooda が3番人気(5対1)で続きます。

一斉のスタートから右手にカーヴして丘を登り、そこから左に曲がって隊列が安定すると、先頭に立ったのは5番人気(9対1)の一角ヴォリューム Volume 。前で競馬するタイプで、鞍上リチャード・ヒューズはあくまでも逃げて結果を残そうとする作戦です。人気のマーヴェラスは中団の内で待機、タファーシャ、タグルーダは好位からの競馬。
ヴォリューム先頭のままタテナム・コーナーを回って直線に入ると、ヴォリュームは顔を横に向けながらも渋太い粘り。前半6番手辺りに付けていたタグルーダがスパートして前を捉えると、一気の瞬発力で2着以下に3馬身4分の3差を付ける圧勝。勝馬と同時に仕掛けたタファーシャも外から伸び、内で粘るヴォリュームをハナ差交わしての2着。惜しかったのは道中の不利から後方に下がっていた伏兵(40対1)インチラ Inchila で、首差4着と大善戦。5着にはゴドルフィンのイーティマル Ihtimal が入り、マーヴェラスは前走の瞬発力が見られず6着に終わりました。

結果はシェイク・ハムダン・アル・マクトゥーム氏のワン・ツー・フィニッシュ。勝馬はこれがオークス初制覇となるジョン・ゴスデンの管理馬で、英国クラシック初制覇となるポール・ハナガン騎乗。2着はアイルランドのウェルド厩舎、パット・スマーレンが騎乗していました。やはりウェルド厩舎は抜け目無いという印象です。
陣営が先ず発したのは、先の日曜日(6月1日)に53歳の若さで亡くなったジョン・ヒルズ調教師のこと。ヒルズ師は競馬ファミリーの中核になる人物で、ゴスデン調教師ともほとんど家族の様にチームを組んできた間柄。双子のリチャード、マイケルの兄でもあり、チームから慕われていた方。我がディープインパクトの母ウインド・イン・ハー・ヘア Wind in Her Hair を調教した人と言えば思い出す方もおられるでしょう。ゴスデン師は“ヒルズが天から見ていて、最後は馬を押してくれた”と感謝。ハナガン騎手もこの勝利をジョンに捧げる、と語っています。
タグルーダは2歳の9月にニューマーケットで新馬勝ち(1マイル)。冬を過ごして前走同じニューマーケットで伝統あるトライアル戦のプリティー・ポリー・ステークス(リステッド戦)を2着以下に6馬身差で圧勝。G戦はいきなりクラシックに初挑戦ながら3番人気に支持され、3戦目での戴冠です。ハナガンが乗ったのは前走から。
いずれ血統プロフィールで詳しく取り上げますが、タグルーダは名馬シー・ザ・スターズ Sea the Stars の初産駒であり、初のクラシック馬。これも大きな話題でしょう。

一方敗れたマーヴェラス、ジョセフ・オブライエンは愛1000ギニーからの間隔が詰まっていたことを敗因に挙げました。いずれにしてもレヴェルの高いオークスだったと言えそうです。少なくとも1着から4着までの馬は、7月19日に行われるアイルランド・オークス参戦を表明、よりテスティングな馬場で行われる再対決が見物ですね。

オークスは以上、続いてはこの日の第1レースとして行われたプリンセス・エリザベス・ステークス Princess Elizabeth S (GⅢ、3歳上牝、1マイル114ヤード)。10頭立が出走し、去年の愛1000ギニー馬ジャスト・ザ・ジャッジ Just the Judge が10対3の1番人気。今期は前走アール・オブ・セフトン・ステークス(GⅢ)を一叩き(5着)されての変わり身に期待が集まりました。

マサーラー Masarah とアミュレット Amulet が逃げましたが、中団で待機した2番人気(7対2)のシスル・バード Thistle Bird が抜け、外から追い縋る4番人気(5対1)のオデリッズ Odeliz に1馬身差を付けて優勝。ジャスト・ザ・ジャッジも内から伸びましたが、前が中々開かずに首差の3着。スムースな競馬ならもっと際どい勝負だったのではと思われます。
ロジャー・チャールトン厩舎、ジェームス・ドイル騎乗のシスル・バードは、去年に続きこのレース2連覇(同じくドイル騎乗)。今期はヨークのミドルトン・ステークス(GⅡ)6着でシーズンをスタートし、これが2戦目。去年はナッソー2着、オペラ賞3着とGⅠでも善戦した6歳馬、今期こそGⅠという意気込みでしょう。

最後は第3レース、オークスの二つ前のダイオメド・ステークス Diomed S (GⅢ、3歳上、1マイル114ヤード)。7頭立ての1番人気(9対4)は、今期初戦でドンカスター・マイルに勝っているグラフィック Graphic 。前走アスコットのリステッド戦でも2着と好調を維持しています。去年のこのレースの勝馬グレゴリアン Gregorian が11対4で2番人気。

ハイランド・ナイト Highland Knight が逃げ、先行したグラフィックが交わして先頭に立ちましたが、前半は最後方に待機していた4番人気(13対2)のフレンチ・ネイヴィー French Navy が直線ではインコースから一気に前を捉え、本命馬に2馬身4分の1差を付ける逆転劇。1馬身差で3番人気(3対1)のウインドヘック Windhoek が3着に入り、去年の覇者グレゴリアンは5着で連覇成らず。
勝ったフレンチ・ネイヴィーと3着のウインドヘックは共にゴドルフィンの馬。勝馬はチャールズ・アップルビー厩舎、アダム・カービー騎乗で、3着馬はスロール厩舎、ファロン騎乗でした。
フレンチ・ネイヴィーは当初ザローニ厩舎でしたが、ザローニ師が薬物の不正使用で長期に亘り免許停止となり、アップルビー師が引き継いだ6歳馬。3歳秋にザローニ厩舎でセレクト・ステークス(GⅢ)に勝って以来のG戦勝利となります。その間、リステッド戦には3勝していました。

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