中国フィルのプロムス・デビュー

ここ2日間ほど当方の回線の不具合か、BBCに不都合でもあったのか、プロムスの中継が繋がりませんでした。今年は30日間試聴できるということですから慌てることも無いでしょう。聴けた時に聴くというスタイルで行きます。
ということで二日目を聴きました。

7月19日 ≪Prom 2≫
エルガー/行進曲「威風堂々」第4番ト長調
チャイコフスキー/幻想序曲「ロメオとジュリエット」
リスト/ピアノ協奏曲第1番
     ~休憩~
チーガン・チェン Qigang Chen /Joie eternelle (永遠の喜び)(イギリス初演)
ムソルグスキー=ラヴェル/組曲「展覧会の絵」
 中国フィルハーモニー管弦楽団 China Philharmonic Orchestra
 指揮/ロン・ユー Long Yu
 ピアノ/ハオチェン・チャン Haochen Zhang
 トランペット/アリソン・ボールサム Alison Balsom

今年のプロムスは三つのテーマがあるようですね。流行の表現を使えば「3本の矢」ということで、その1本目が「East meets West」ということ。単に東洋と西洋の邂逅というよりも、地球儀を俯瞰する音楽ということでしょうか。
その第1弾が、中国フィルのプロムス・デビューです。2000年に創設されたという未だ歴史の浅いオケで、漢字では「中国愛楽楽団」と表記するのだそうな。首席チェロはジャン・ワンで、彼のインタヴューなども放送されます。

指揮するのロン・ユーは「裕龍」と書くそうで、1964年の上海生まれ。1987年にドイツに移り、ケルンやベルリンで活動する指揮者だそうです。プロムスの中継では「中国のゲルギエフ」と紹介していました。
冒頭のエルガーは、威風堂々では有名な第1番の次にポピュラーだと思いますが、1番に比べれば遥かに知名度は劣ります。中国フィルのプロムスへの挨拶という演奏されました。

チャイコフスキーもリストも西洋では聴き飽きるほどの名曲、中国ではどの程度演奏されているのでしょうか。
リストのソロを弾いた张昊辰は、例のクライバーン・コンクールで辻井氏と優勝を分け合ったピアニスト。辻井君は去年のプロムスでデビューしましたから、これで仲良く二人が出揃ったことになります。
アンコールもあって、リストの「ラ・カンパネラ」。凄いテクニックで会場も沸きに沸いていました。かなりクセのある表現ですが、こういう機会にはピッタリでしょう。

休憩の後最初に演奏されたのは、中国を代表する作曲家の一人、チェンのトランペット協奏曲。これをイギリスの若手女流トランペット奏者が演奏するという趣向です。
チェンの生年は二説あるようで紛らわしいのですが、有名なタン・ドゥンより2歳か6歳年上に当たります。先年の北京オリンピックで音楽担当責任者を務めた方で、開会式で例の口パク問題があった時、発言されていたと言えば記憶されている人もいるでしょう。
1951(1955)年の上海生まれ、1984年にフランスに留学してメシアンに学んでいます。表記は「陳其鋼」、ナクソスのNMLでもピアノ作品が聴けますが、メシアンというよりは中国の民謡を用いた判り易い作風と聴きました。

今回の作品はBBCの他に中国フィルや中国の財団などによる共同委嘱作だそうで、既に北京と上海では演奏済み。今回がイギリス初演です。
演奏時間は18分ほど、冒頭にトランペット・ソロに出る4つの音が主要モチーフになっているようで、作品の彼方此方で聴こえてきました。中国民謡をベースにしたと思われる、如何にもチャイナを連想させる一品。

展覧会の絵が終わると、盛大な拍手に応えてロン・ユーが“本当の中国を1曲”と言ってアンコールしたのは、Wonderful Night という恐らく民謡をアレンジしたもの。
これでは客席も収まらず、ユーのBBCプロムスへの感謝のスピーチの後、弦の首席奏者たちが何やら弾き始めます。やがてフル・オケが加わると、英国国歌のアレンジ。かなり凝ったアレンジでしたが、多分今回のための特別仕様でしょう。
中国も中々やるなぁ~、という感じ。オケのレヴェルなどは聴いた皆さんで判断してください。

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