目標を失ったアメリカの長距離戦
金曜日は2周目に入ったデル・マー競馬場でG戦が一鞍行われました。クーガーⅡ世ハンデキャップ Cougar Ⅱ H (GⅢ、3歳上、12ハロン)。アメリカでは数少ないタペタ、あるいはダート・コースの長距離戦ですが、今年のブリーダーズ・カップ・シリーズでは長距離のマラソンが廃止されたため、この距離を得意にする馬は目標を失くしてしまった印象です。
アメリカの長距離戦は完全な悪循環に陥っていて、出走馬が揃わないからレースが成立しない、出られるレースが無いからステイヤーは育たないということで、将来的にも展望が見えてこないのが実情でしょう。今回のBCからの排除はその傾向に増々拍車を掛けることになりそう。
ということで3頭が取り消して8頭が出走してきましたが、多くはG戦の実績も無い馬、日本なら500万条件といったレヴェルでしょう。そんな中でイーヴンの1番人気に支持されたスター・キングダム Star Kingdom は、サンタ・アニタでトーキョー・シティー・カップ(GⅢ)に勝ち、去年のこのレースで2着した馬。メンバー中1マイル半の距離で勝ったことのある唯一の存在です。
スタートで先手を取ったのは、6番人気(14対1)のアイス・クリーム・トラック Ice Cream Truck 。最初のスタンド前に差し掛かる時には、スタートで直ぐに3番手に上がった4番人気(7対1)のアイリッシュ・サーフ Irish Surf が思い切ってハナを奪い、スター・キングダムは2番手に付けます。向正面に入るとアイリッシュ・サーフの逃げは更に広がり、一時は8馬身もの大差。第4コーナーに差し掛かると流石に後続も差を詰めに掛かりましたが、アイリッシュ・サーフは直線で再び差を広げ、ゴールでは2番手を追走した本命スター・キングダムを8馬身4分の1差ぶっちぎっての逃げ切り勝ち。1馬身4分の3差3着にも3番手を進んだアイス・クリーム・トラックが続き、何ともスリルに欠けた凡戦に終始してしまいました。これでは長距離戦に人気が出るわけはありません。勝時計2分29秒01はトラック・レコードです。
ダン・ヘンドリックス厩舎、エルヴィス・トルヒーヨ騎乗のアイリッシュ・サーフは、前走チャールズ・ウィッティンガム・メモリアル・ステークス(芝GⅡ)で4着したものの8連敗中だった4歳牡馬。今期は4戦目で初勝利となりました。通算では18戦して3勝、ステークスは初勝利となります。血統的には母がサンタ・アニタ・オークスなどGⅠを4勝したサーフサイド Surfside ということもあり、筋金入り。母の産駒では出世頭となります。なおヘンドリックス師はこのレース、2006年のランナウェイ・ダンサー Runaway Dancer に次いで2勝目の由。
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