バイエルンが圧勝のハスケル
7月27日の日曜日、サラトガとデル・マーは引き続き夏競馬のG戦が組まれていましたが、賑ったのは1日G戦5鞍を並べたモンマス・パーク競馬場。今日のレポートはここから始めることに致しましょう。
ということで、G戦5連発の第一弾は、この日の第7レースとして行われたモーリー・ピッチャー・ステークス Molly Pitcher S (GⅡ、3歳上牝、8.5ハロン)。fast の馬場に2頭が取り消して7頭立て。前々走でモンマスの一般ステークス(5月25日のモンマス・ビーチ・ステークス)に勝ち、続く前走ベルモントのアローワンスにも連勝したナタリー・ヴィクトリア Natalie Victoria が3対2の1番人気。
そのナタリー・ヴィクトリアが先頭に立って逃げ切りを図りましたが、2番手を追走した4番人気(9対2)のマジェスティック・リヴァー Majestic River が常に競り掛ける厳しい展開。第3コーナーでマジェスティック・リヴァーが本命馬を交わして先頭に立つと、直線では後続を突き放す独走、3番手を進んだ2番人気(3対1)モンタナ・ネイティヴ Montana Native に2馬身半差を付けていました。4分の3馬身差でラッキー・ラグ・ドール Lucky Rag Doll が3着に入り、ナタリー・ヴィクトリアは離されたシンガリに大敗。
トッド・プレッチャー厩舎、ロージー・ナプラヴニク騎乗のマジェスティック・リヴァーはモンマス競馬場を得意にしており、ここでは3戦3勝。5月にアローワンス戦、先月は一般ステークス(ライトハウス・ステークス)にも勝ち、3連勝でG戦初勝利を飾りました。通算成績は8戦5勝2着1回、ステークスはモンマスでの2勝となります。
一般ステークスを挟んだ第9レースが、かつてはGⅠに格付けされたこともあるマッチメーカー・ステークス Matchmaker S (芝GⅢ、3歳上牝、9ハロン)。GⅡ時代の1981年に勝ったメア―ジー・ドーツ Mairzy Doates が、その年に創設されたジャパン・カップの第1回勝馬になったことでも知られるレースですね。firm の芝コースに1頭が取り消して10頭立て。前走ギャロレット・ハンデ(GⅢ)で2着惜敗したワッツダチャンシズ Watsdachances が9対5の1番人気。
レースはナシュリーズ・ヴォウ Nashly’s Vow が逃げましたが、スタート直後は4番手に付け、向正面では6番手に控えていた3番人気(5対1)のスターストラック Starstruck が内を衝き、馬群を割るように突き抜けると、4番手を進んだ2番人気(7対2)アイリッシュ・ミッション Irish Mission に1馬身4分の1差を付けて優勝。ワッツダチャンシズも前走同様後方から鋭く追い込みましたが、更に1馬身4分の1差届かず3着と、またも惜敗に終わりました。
ラリー・ジョーンズ厩舎、カーウィン・クラーク騎乗のスターストラックは、去年に続きマッチメーカー2連覇。このレースが創設された1967年と翌年のレースを制したポライトリー Politely 以来の連覇達成となります。アイルランドから去年アメリカに移籍してマッチメーカー制覇、しかしその後は前走ロバート・ディック・メモリアル(芝GⅢ)8着を含めて6連敗が続いていました。モンマス・パークの水が合うのでしょうか、これまでの不振を一掃する快走でした。
続く第10レースのモンマス・カップ・ステークス Monmouth Cup S (GⅡ、3歳上、8.5ハロン)も、かつてメドウランズ・カップのレース名でGⅠとして行われてきたこともある一戦。1頭取り消して9頭立て。最終オッズが判りませんが、1番人気に支持されたのはゴドルフィンのロング・リヴァー Long River 。前走スティーヴン・フォスター・ハンデ(GⅠ)は7着敗退でしたが、今期は3連勝でアケダクトの一般ステークスを制し、3月のエクセルシオ・ハンデ(GⅢ)でも2着惜敗の1頭です。
レースは前走サルヴァトーレ・マイル(GⅢ)でも逃げたブラデスター Bradester が逃げ、4対1のヴァリッド Valid が2番手追走。第4コーナー手間で逃げ馬に並び掛けたヴァリッド、直線ではブラデスターとの激しい叩き合いを半馬身制して競り勝ちました。去年の覇者でジャパン・カップ・ダート(ドン尻負け)以来となるパンツ・オン・ファイアー Pants On Fire は3番手を進み、そのまま4馬身4分の3馬身差で3着に粘り込みましたが、連覇は成らず。
マーカス・ヴィターリ厩舎、オルランド・ボカチカ騎乗のヴァリッドは、これがG戦初勝利となる4歳せん馬。今期はガルフストリームでアローワンス戦に2連勝したあと、ピムリコ・スペシャル(GⅢ)で5着、一般ステークス(マウンテンヴュー・ハンデ)2着に続いて出走したサルヴァトーレ・マイルではブラデスターに続く3着と惜しい競馬が続いていました。
第11レースがオーシャンポート・ステークス Oceanport S (芝GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。10頭が出走し、今回がアメリカ・デビューとなる元フランス馬のムシャウィッシュ Msahwish が2対1の1番人気に支持されていました。去年の仏ダービーとセント・ジェームス・パレス・ステークスで4着、この冬はドバイでGⅡに勝った馬です。
レースは6対1のフレデリックスバーグ Fredericksburg が逃げ、直線でも渋太い粘り。これを中団に付けていた2番人気(9対2)のガイズ・リワード Guys Reward が馬3頭分の外を通って追い詰め、ゴールではフレデリックスバーグに1馬身差を付けて差し切っていました。4分の3馬身差でブラジル産馬アンタ―・コントロール Under Control が3着、ムシャウィッシュも後方から差し脚を使いましたが、最後まで続かず6着敗退。
デール・ロマンス厩舎、パコ・ロペス騎乗のガイズ・リワードは、これが何と46戦目となる7歳馬で、通算では9勝目。G戦は一昨年のファイアクラッカー・ステークス(芝GⅡ)、今年2月1日のタンパ・ベイ・ステークス(芝GⅢ)に続く3勝目。タンパ・ベイのあとは前走ファイアクラッカー3着を含めて4連敗していましたが、ここで復活。未だ未だ元気な所を見せてくれました。
そして最後、第12レースとして行われたのがメインのハスケル・インヴィテーショナル Haskell Invitational (GⅠ、3歳、9ハロン)。勝馬にはBCクラシックへの優先出走権が与えられる注目の一戦です。9頭が出走しましたが、7対5の1番人気に支持されたのは、牝馬ながらケンタッキー・オークスを制した女傑アンタパブル Untapable 。前日のキングジョージを3歳のオークス馬が制したこともあり、ここでも男勝りの走りに期待が掛かりました。
しかしアンタパブルはスタートで横の馬とぶつかるアクシデントもあり、後手後手の競馬。4番手に付け、最終コーナーでは馬4頭分の外を回りましたがそこまで。最後は5着と人気には答えられませんでした。一方圧巻だったのが2番人気(9対2)のバイエルン Bayern 。スタートからダッシュ良く先頭を奪うと、あとは2着以下に影も踏ませぬ逃げ切りの圧勝劇でした。漸く7馬身4分の1差でアルバーノ Albano が2着に入り、2番手を追走していたワイルドキャット・レッド Wildcat Red が1馬身差で3着。
ボブ・バファート厩舎、マーチン・ガルシア騎乗のバイエルンは、何とかクラシックに間に合わせたもののプリークネスは9着と惨敗。前走6月7日にウッディー・スティーヴンズ・ステークスを7馬身半差で圧勝して復活を宣言し、今回も大差での圧勝。短距離で良し、中距離でも圧巻のパフォーマンスは、いよいよバイエルン本格化の証明でしょう。バファート師は何とハスケル国際は7勝目、ガルシアも3勝目と縁の深さを見せ付けました。バイエルンの牝系は、今年の日本ダービー馬ワンアンドオンリーも出しており、その意味でも近親馬のGⅠ勝利に注目しましょう。
以上でニュー・ジャージー州に別れを告げ、お隣のニュー・ヨークのサラトガ競馬場に行きましょう。シュヴィー・ハンデキャップ Shuvee H (GⅢ、3歳上牝、9ハロン)。雨による泥んこ馬場(muddy)に7頭立て。去年のこのレース2着馬で、2週前の前走デラウエア・ハンデ(GⅠ)で3着したフラッシー・アメリカン Flashy American が僅差2対1で1番人気。
しかしフラッシー・アメリカンはスタートで隣の馬とぶつかり、それが全てでレースにならず5着敗退。スタート良く先頭に立った2番人気(これも2対1)のアンティパシー Antipathy が、向正面で一旦スウィンガーズ・パーティー Swinger’s Party に先頭を譲ったものの、第3コーナーで再びハナを奪い返すとそのまま逃げ切り勝ち。2馬身差2着には後方2番手から3番人気(7対2)のスタンウィック Stanwick が追い込み、更に1馬身4分の1差でホット・ストーンズ Hot Stones が3着。
キアラン・マクローリン厩舎、イラッド・オルティス騎乗のアンティパシーは、これがステークス初勝利となるゴドルフィンの4歳馬。勝星は今年初戦のガルフストリームでのアローワンス戦以来ですが、6月7日にステークス・デビューとなったオグデン・フィップス・ステークス(GⅠ)で3着。そのあとアローワンス戦で2度2着して今回のG戦初勝利に繋がりました。
最後はデル・マー競馬場のビング・クロスビー・ステークス Bing Crosby S (GⅠ、3歳上、6ハロン)。勝馬には何故かスプリントではなく、BCターフ・スプリントへの優先出走権が付与されます。1頭が取り消して7頭立て。サンタ・アニタ・ダービー、BCダート・マイルと既にGⅠに2勝しているゴールデンセンツ Goldencents が短距離戦でも3対5の1番人気。
スプリントとあってハナ争いは熾烈、最低人気(28対1)のインデクシカル Indexical と、5番人気(10対1)のパブロ・デル・モンテ Pablo Del Monte が入れ替わり立ち代わり先頭。これを3番手でマークしていた4番人気(9対1)のビッグ・マカー Big Macher が捉えると、5番手を追走し、直線では前が開かずに大外に持ち出したゴールデンセンツの急襲を何とか半馬身差凌いでの逆転劇。1馬身半差で3番人気(6対1)のシーキング・ザ・シェリフ Seeking the Sherif が3着。
リチャード・バルタス厩舎、タイラー・ベイズ騎乗のビッグ・マカーは、4月にサンタ・アニタでポトリロ・グランデ・ステークス(GⅡ)に勝ってG戦初勝利を挙げましたが、その後脚部を故障し、ここまで休養していました。BCターフ・スプリントの出走権は得ましたが、未だ芝コースの経験は無く、果たして出走権を有効に活用できるのでしょうか。
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