謎を秘めたシンフォニー二つ

今日のプロムス・レポートは、一昨日行われたヨーロッパの青年オケによる交響曲二つ。

8月5日 ≪Prom 26≫
ベリオ/シンフォニア
     ~休憩~
ショスタコーヴィチ/交響曲第4番
 ヨーロッパ・ユニオン・ユース管弦楽団 European Union Youth Orchestra
 指揮/ヴァシーリー・ペトレンコ Vasily Petrenko
 声/ロンドン・ヴォイシズ London Voices

この演奏会は本来セミョーン・ビチュコフが指揮することになっていましたが、直前にキャンセル(理由は不明)。替ってペトレンコがピンチヒッターを引き受けることになりました。
プレゼンターを務めるトム・サーヴィスというレポーターは実に良く喋る解説で、英語が完全に理解できる人には興味深いのでしょうが、片言の私にはチョッと煩わしくもあり、内容も完全には理解できませんでした。
ペトレンコはこれまでベリオのシンフォニアを指揮したことは無く、事前に数日間ビチュコフから教示を受けて猛勉強した、というエピソードも紹介されていました。

そのベリオ、ニューヨーク・フィルの委嘱で1968年に同オケによって初演された作品ですが、私もこれまでスコアを買う機会がありませんでした。全5楽章のうち、第2楽章はマーチン・ルーサー・キング牧師のために書いた「おおキング」を転用したもの。
また第3楽章には古今の「西洋」音楽からの引用が数多く出現することで有名。誰でも聴き取れるのはマーラー第2交響曲のスケルツォで(春の祭典、ラ・ヴァルス、バラの騎士も)、作品の影にマーラーがチラついているのは明らか。他にも出てくるという現代作品(ブーレーズやシュトックハウゼン、ビートルズもある由)からの引用はオリジナルも知らないものがあり、その意図も良く判りません。
いずれはスコアをチェックしてみたいとは思いますが、何時のことになるやら。今回も聴き流しになってしまいました。

後半のショスタコーヴィチは、ペトレンコがロイヤル・リヴァプール・フィルとレコーディング(ナクソス盤)している作品で、完全にレパートリーに定着しているもの。これまた謎に満ちた大作で、作曲してから25年も机の引き出しに仕舞われていた曰く付の交響曲。3楽章で書かれていますが、第3楽章には「魔笛」や「カルメン」の引用が出てきます。
この引用も何を意味するのかは不明で、ベリオと共通する点もある選曲。更にショスタコーヴィチはこの作品を作曲する間、いつもマーラーの第7交響曲を見ていたということで、ここにもマーラーの影が見え隠れします。

ということで、大きなクエスチョン・マークが付く謎の2曲、というのがこの回のコンセプトか。

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