重を味方に
昨日はアイルランドとフランスでGⅠ2鞍を含む4鞍のG戦が行われました。
アイルランドはカラー競馬場。馬場は雨のために good to yielding と軟化、夏場の固い馬場を得意とする馬には厳しい結果になったようです。
先ずはアイルランド最初の2歳GⅠとなるフェニックス・ステークス Phoenix S (GⅠ、2歳、6ハロン)。当初9頭の登録がありましたが、馬場が悪化したことにより有力馬が3頭も取り消し、6頭立てで行われました。
人気を分けると思われたアンセム・アレキサンダー Anthem Alexander が取り消したため、英国(リチャード・ハノン厩舎)から遠征してきたクール・カンパニー Kool Kompany が8対11と抜けた1番人気。レイルウェイ・ステークス、ロベール・パパン賞とGⅡに2連勝中の馬ですね。
当初4頭を登録していたオブライエン厩舎も2頭を取り消し、残った2頭の内のペースメーカー役と思われるアイ・アム・ビューティフル I Am Beautiful が逃げ、リチャード・ヒューズ騎乗のクール・カンパニーは3番手追走。最後はクール・カンパニーとこれをマークしていた3番人気(6対1)のディック・ウィッティントン Dick Whittington の激しい叩き合いとなり、最後はディック・ウィッティントンが本命馬を半馬身抑えて優勝。2番手に付けていた4番人気(13対2)カペラ・サンセヴェーロ Capella Sansevero も争いに加わり、短頭差で3着。
最後の叩き合いが審議の対象になりましたが、入線通りで確定。但しヒューズ騎手には「次回はもっと慎重に乗るように」との注意がありました。
勝ったディック・ウィッティントンは、エイダン・オブライエン厩舎。師にとっては何とこのレース13勝目となります。当初はオダナヒューが騎乗する予定でしたが、有力馬のザ・グレイト・ウォー The Great War が取り消したため、こちらに乗る筈だったジョセフ・オブライエンが急遽乗り替わっていました。
同馬は前走アングルジー・ステークス(GⅢ)に勝っており、これでG戦2連勝。オブライエン師によると、デビューから使い詰めで来たので、ここで一旦放牧に出すとのこと。今期はこれで終戦なのか、秋にもう一度使うのかは未定です。
カラー競馬場のもう一鞍はフェニックス・スプリント・ステークス Phoenix Sprint S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。1頭取り消して6頭立て。今期デューク・オブ・ヨーク・ステークス(GⅡ)を制しているマーレク Maarek がイーヴンの1番人気。GⅡ勝のペナルティーを背負っても格上という評価です。
逃げたのは、珍しく他厩舎の馬とのコンビで臨むジョセフ・オブライエンが騎乗するアン・サイジュール An Saighdiur 。マーレクは4番手を進みましたが馬場に苦しんでか伸びは見られず、3番手を進んだブービー人気(20対1)の伏兵スクリーム・ブルー・マーダー Scream Blue Murder が5番人気(10対1)ジャムジー Jamesie に4分の3馬身差を付ける波乱でした。頭差で2番人気(9対2)のハムザ Hamza が3着に入り、マーレクは5着惨敗。
トミー・スタック厩舎のスクリーム・ブルー・マーダーは、去年リステッド戦に1勝、今期はやはり重馬場で行われたコークの一般戦に勝っている4歳牝馬。前2走は何れも固い馬場が合わず共に6着に終わっており、ここは重を味方にしてG戦初勝利を記録しました。彼女とコンビを組んでいるウェイン・ローダンがこの日はドーヴィルに遠征中(後述)で、パット・スマーレンが初騎乗で美味しい勝利を攫っています。
一方フランスのドーヴィル競馬場は、馬場は更に重い Heavy 。先ずは、短距離GⅠとして夏競馬の目標となるモーリス・ド・ギースト賞 Prix Maurice de Gheest (GⅠ、3歳上、1300メートル)。1頭取り消しがあっても14頭と多頭数。英国から4頭、アイルランドからも2頭が参戦する中、地元フランスはヘッド厩舎で、前走同じドーヴィルのリゾランジス賞(GⅢ)に勝ったサワーニー Thawaany が19対5の1番人気に支持されていました。
逃げたのは、アイルランドから挑戦してきた10番人気(186対10)フィエソラーナ Fiesolana 。スタンドから遠い側を先行していた本命サワーニーが抜けましたが、中団を進んでいた6番人気(116対10)のガースウッド Garswood が外から襲い掛かり、サワーニーを半馬身捉えての逆転勝ち。1馬身4分の1差でフィエソラーナが3着に粘っています。
勝ったガースウッドは英国のリチャード・ファヘイ厩舎、ジェラール・モッセ騎乗。去年の2000ギニーに出走(7着)こともある実力馬で、昨シーズンはフォレ賞(GⅠ)でも3着。去年のレノックス・ステークス(GⅡ)に続く二つ目のG戦勝利となります。今期はG戦ばかり4戦して来ましたが、何れも固い馬場に悩まされて結果が出なかったもの。フランスの重馬場を味方に付けた勝利と言えましょう。
ドーヴィルのもう一鞍は、去年からGⅢに格上げされたルー賞 Prix de Reux (GⅢ、3歳上、2500メートル)。やはり重馬場を嫌って1頭が取り消し6頭立て。ファーブル厩舎で前走ナントのリステッド戦に勝っているリオ・ティーグル Rio Tigre が9対5の1番人気。
レースはスワカデリック Swacadelic の逃げで始まりましたが、2番手に付けていた2番人気(19対10)のゲートウッド Gatewood が抜け、本命リオ・ティーグルに2馬身差を付けて優勝。更に1馬身4分の3差で4番人気(47対10)のゴーイング・サムホェア Going Somewhere が3着に入っています。
勝ったゲートウッドは、これまた英国のジョン・ゴスデン厩舎、ウイリアム・ビュイック騎乗。このコンビ、モーリス・ド・ギースト賞はグレゴリアン Gregorian で挑戦し、2番人気ながら重馬場のため結果が出ませんでしたが、ここは逆に馬場を味方につけてのG戦勝利。
同馬は今期、アスコットとグッドウッドのリステッド戦に連勝し、前走ニューマーケットのリステッドでも2着。G戦はオーストラリアでGⅢに1勝していましたが、ヨーロッパでは初となります。6歳になりますが、4歳時にはドーヴィル大賞典(GⅡ)で2着したこともあり、それも稍重(good)の馬場でした。
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