番狂わせになった真夏のダービー
前日にもGⅠが組まれていたサラトガ競馬場、土曜日もGⅠ3鞍を含む豪華プログラムが待っていました。この日は他に2つの競馬場でもG戦が行われています。サラトガから行きましょう。
最初はボールストン・スパ・ステークス Ballston Spa S (芝GⅡ、3歳上牝、8.5ハロン)。前日の雨の影響で稍重(good)となった芝コース、1頭が取り消して6頭立て。フランスから移籍し、前走サラトガの一般ステークス(ド・ラ・ローズ・ステークス)に勝ったフリンビ Flimbi がG戦初挑戦ながら3対5の1番人気。
レースは芦毛の最低人気(36対1)ナイト・ソング Night Song が逃げ、フリンビは3番手追走。本命馬も仕掛けて直線に入りましたが、最後方で待機していた2番人気(4対1)のアバコ Abaco が大外を通って急襲し、同じく後方2番手から抜けた微差3番人気(4対1)ストラスネイヴァー Strathnaver とのスリリングな叩き合いを首差制して優勝。2馬身差でブービー人気(17対1)のネリー・キャッシュマン Nellie Cashman が3着に食い込み、人気のフリンビは最下位に終わりました。
クロード・マゴーヒー厩舎、ホセ・オルティス騎乗のアバコは、去年11月にチャーチル・ダウンズでカーディナル・ハンデ(芝GⅢ)に勝って以来のG戦2勝目。今期は6戦目にしての初勝利でもあります。
ここからはGⅠ戦3連発となり、先ずは3歳馬の短距離戦キングズ・ビショップ・ステークス King’s Bishop S (GⅠ、3歳、7ハロン)。fast の馬場に8頭が出走し、前走サラトガで前哨戦となるアムステルダム・ステークス(GⅡ)に勝っているクー・ド・グラース Coup de Grace が2対1の1番人気。
名前の通りハナっ速い4番人気(6対1)ファスト・アンナ Fast Anna が飛ばし、直線に入っても後続に2馬身差を付けていましたが、前半3番手から大外に膨れて馬6頭分の外を回った2番人気(5対2)のザ・ビッグ・ビースト The Big Beast が徐々に逃げ馬を追い詰め、ゴール寸前で首差の差し切り勝ち。本命クー・ド・グラースは後方3番手からの競馬になり、窮屈な内を通されながらも何とか間隙を縫って1馬身半差の3着に入りました。
アンソニー・ダトロウ厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のザ・ビッグ・ビーストは、未だこれが5戦目でステークスもG戦も初挑戦。2歳時は出走せず、今年3月末にデビューし、3戦目で初勝利。続いてアローワンス戦に連勝し、今回がいきなりのGⅠ制覇となった新星です。英国の短距離GⅠ馬スレイド・パワー Slade Power の近親でもあり、スプリンター血統の1頭。
GⅠ第2弾は、勝馬にBCフィリー・アンド・メア・スプリントへの優先出走権が与えられるバレリーナ・ステークス Ballerina S (GⅠ、3歳上牝、7ハロン)。1頭が取り消して8頭立て。16か月もの休養から復帰して2戦目のチャンピオン、マイ・ミス・オーレリア My Miss Aurelia が3対1の1番人気。
レースは4番人気(9対2)の逃げ馬ラ・ヴェルダッド La Verdad が飛ばし、3番人気(4対1)のアルテミス・アグロテラ Artemis Agrotera が2番手追走。後続はやや離され、マイ・ミス・オーレリアは5番手の位置。直線、2番手に付けていたアルテミス・アグロテラが逃げ馬を捉えると、後は一人旅。最後はジョッキーが馬を抑える余裕を見せ、2着以下に6馬身半差を付ける圧勝でした。2着には本命のマイ・ミス・オーレリアが抜け出し、更に1馬身4分の1差で2番人気(7対2)のウィレット Wilet が3着。
マイケル・ハッション厩舎、ラジーヴ・マラー騎乗のアルテミス・アグロテラは、ここサラトガでは3戦3勝。去年2歳時に制したフリゼット・ステークスに続く二つ目のGⅠ制覇となりました。去年のBCジュヴェナイル・フィリーズは5着でしたが、前走アローワンス戦に続く大勝で、今年こそBCという思いは強いでしょう。今期は前走の他に6月のエイコーン・ステークス(GⅠ)8着があるのみ。秋はフレッシュな馬体で臨めるはずです。
そして土曜日サラトガ最後のG戦は、真夏のダービーの異名を持つトラヴァース・ステークス Travers S (GⅠ、3歳、10ハロン)。3歳限定戦のためBCの対象ではありませんが、ここから3歳チャンピオンの座に就く馬を多く輩出している伝統のGⅠ戦でもあります。第145回目となる今年は10頭立て。メンバーを見れば、ハスケル・インヴィテーショナルを制したバイエルン Bayern 、ベルモント・ステークス馬トーナリスト Tonalis 、ダービーとベルモントが共に4着でもウッド・メモリアルとジム・ダンディーに勝っているウィッケド・ストロング Wicked Strong の3強対決であることは明らかでしょう。バイエルンが2対1の1番人気、これを追ってトーナリストとウィッケド・ストロングが5対2で並んでいました。
レースはスタートから3強の熾烈な争い。いつものように先手を取ったバイエルンを、トーナリストが2番手、ウィッケド・ストロングが3番手で追走します。4番手以下は向正面で6馬身も離される展開。そのままゴールまで続けば文字通り3強対決で終わったはずですが、直線に入って先ずバイエルンがバテてズルズルと後退。トーナリストを交わしてウィッケド・ストロングが先頭に立ちましたが、ここに追い込んできたのが前半後方4番手に控えていた6番人気(19対1)の伏兵ヴィー・イー・デイ V.E.Day 。ギリギリ粘り込むウィッケド・ストロングをゴール寸前ハナ差捉える番狂わせとなりました。2馬身半差でトーナリストが3着に入り、本命バイエルンは何と10着最下位の大敗です。1・2着は共にジェームス・ジャーキンス師の管理馬で、トラヴァース・ステークスのワン・ツー・フィニッシュは2004年のニック・ジート師以来の快挙の由。
ハヴィエル・カステラノが騎乗したヴィー・イー・デイは、これがG戦初勝利ながら4連勝。前走はサラトガの一般ステークス(カーリン・ステークス)に勝っており、その前はベルモントの芝でアローワンスに勝っていました。通算では6戦4勝2着1回。カステラノはトラヴァース4勝目、この日はキングズ・ビショップのザ・ビッグ・ビーストに続きGⅠダブル達成です。
トラヴァースの波乱の直後、モンマス・パーク競馬場ではヴァイオレット・ステークス Violet S (芝GⅢ、3歳上牝、9ハロン)が行われました。去年は何故か施行されなかった一戦、今年は good の馬場に15頭の登録がありましたが、取り消しや除外が5頭あり、最終的には10頭立て。モンマス・パークは最終オッズが判りませんが、1番人気(8対5)は前走カナダのGⅡに勝っているオーヴァーハード Overheard でした。
レースは8対1のホワイ・キャサリン Why Catherine が逃げましたが、2番手で追走していた13対1のラスティー・スリッパー Rusty Slipper がこれを捉えると、前半後方2番手から直線で大外から急襲した本命オーヴァーハードを1馬身4分の1差抑えて優勝。混戦の入着争いは、首差で17対1のファスナクロイク Fasnacloich の順。
グレアム・モーション厩舎、アレックス・シントロン騎乗のラスティー・スリッパーは、前走モンマスのイートンタウン・ステークス(芝GⅢ)では4着でしたが、これはほぼ1年振りの休み明け。復帰2戦目でのG戦初勝利となり、通算成績は7戦4勝です。トラヴァースで2着惜敗したウィッケド・ストロングの近親に当たり、生産者は大興奮の一日だったようです。
8月23日最後はデル・マー競馬場のデル・マー・ハンデキャップ Del Mar H (芝GⅡ、3歳上、11ハロン)。勝馬にはBCターフへの優先出走権が与えられます。firm の馬場に3頭が取り消して10頭立て。これまで無名ながら3連勝中のビッグ・ジョン・ビー Big John B が8対5の1番人気。
レースは小回りのコースを1周半する長丁場で、最初は元フランスのシー・セイジ Si Sage が先頭でしたが、向正面では替って伏兵(30対1)コジト Cogito の逃げ。最初のスタンド前では最後方を進んだビッグ・ジョン・ビーは、向正面では6番手の流れ。3コーナー手前でアンブライドルド・コマンド Unbridled Command が一気にスパートして攪乱に出ましたが、徐々に順位を上げたビック・ジョン・ビーが直線で楽に抜けると、これも後方を進んだ4番人気(8対1)ベンチ・ライト Bench Light に5馬身4分の1差を付ける圧勝で人気に応えました。首差で2番人気(7対2)のブライト・ソート Bright Thought が3着。
前走からフィリップ・ダマト厩舎に移籍、マイク・スミスが騎乗したビッグ・ジョン・ビーは、これがステークス・デビューの5歳せん馬。前走11ハロンのアローワンス戦を7馬身差で圧勝し、俄かに注目されてきた1頭です。果たしてBCではどの程度評価されるのでしょうか。
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