デットーリ、久し振りのGⅠダブル

ヨーロッパでは昨日の日曜日も、前日に続いてG戦大売出し。英愛仏3か国で合計8鞍ものG戦が行われました。

最初は、日曜日にG戦が行われるのは珍しい英国から。グッドウッド競馬場のシュープリーム・ステークス Supreme S (GⅢ、3歳上、7ハロン)は、good 、所により good to firm の馬場に4頭が取り消して6頭立て。
前走グローリアス開催のグッドウッドでオーク・トゥリー・ステークス(GⅢ)2着、5戦目にして初めて敗戦を喫した3歳馬ムテーラ Muteela が2対1の1番人気。

インディグナント Indignant が逃げ、これを射程に入れて先行していた6番人気(14対1)のアンスガー Ansgar が残り2ハロンで先頭に立つと、本命ムテーラに1馬身4分の3差で優勝。更に1馬身差で3番人気(9対2)のプロフェッサー Professor が3着。
勝ったアンスガーは、アイランドから遠征してきた6歳戦馬で、女性調教師ミス・サブリナ・ハーティーの管理馬、ジェームス・ドイルが騎乗していました。前々走カラーでミンストレル・ステークス(GⅢ)でG戦初勝利を挙げていましたが、前走レパーズタウンのデスモンド・ステークス(GⅢ)ではペナルティーもあって7着に敗退していました。今回もGⅢ勝のペナルティー4ポンドを背負っていたため人気にはなりませんでしたが、ハンデを克服しての二つ目のG戦勝利です。
ハーティー女史によれば、アイルランドには7ハロンのトップクラス戦が少ないので、今回も不利を承知でアイリッシュ・シーを渡ったとのこと。7ハロンのスペシャリストとしてこれからも注目すべき1頭でしょう。

続いては日曜日がメインのアイルランド。good to firm のカラー競馬場はG戦が4鞍。レース順に取り上げていきましょう。
先ずは去年GⅢに格下げされたロイヤル・ホイップ・ステークス Royal Whip S (GⅢ、3歳上、1マイル2ハロン)。1頭が取り消して僅かに4頭立て。オブライエンの2頭対ボルジャー厩舎のパリッシュ・ホール Parish Hall という構図で、3年前のデューハースト(GⅠ)馬で前走メルド・ステークス(GⅢ)に勝っているパリッシュ・ホールが11対8の1番人気に支持されていました。

レースはオブライエン厩舎の副将格でペースメーカーとも見られる最低人気(13対2)のホール・オブ・ミラーズ Hall of Mirrors が逃げ、パリッシュ・ホールは最後方4番手。2番手に付けていた2番人気(9対4)でオブライエン厩舎の主役キングスバーンズ Kingsbarns が抜けようとしましたが、ホール・オブ・ミラーズは未だ余力充分。結局はそのままキングズバーンズを半馬身抜かせずに逃げ切り勝ち。パリッシュ・ホールも伸びはしましたが1馬身半差で3着に終わっています。何のことは無い、オブライエン厩舎のワン・ツー・フィニッシュ。
エイダン・オブライエン師も予期していなかったホール・オブ・ミラーズは、シーマス・ヘファーナン騎乗。2着にはもちろんジョセフが乗っていました。勝馬は今回がG戦初勝利、トトソルズ・ゴールド・カップでも、ロイヤル・アスコットのハンデ戦でもペースメーカーとして出走していた4歳馬。こういうこともある、という珍しいケースかもしれません。

続いてはデビュタント・ステークス Debutante S (GⅡ、2歳牝、7ハロン)。9頭が出走し、1番人気(3対1)には2頭が並ぶ難解なレース。人気になったのは、ネース競馬場で新馬勝ちしたばかりでボルジャー厩舎のルシーダ Lucida と、デビューから2連勝で臨んだフェニックス・ステークス(GⅠ)で4着のビーチ・ベル Beach Belle 。

先ず3番人気(5対1)のクオリファイ Qualify が逃げ、一旦は2番手に下げます。ここから伸びたのは人気の2頭ではなく、後方8番手に待機していた6番人気(11対1)のレイダーラ Raydara 。4番手に付けていた人気の一角ルシーダを半馬身捉えていました。1馬身4分の3差で6番人気(11対1)のトゥーグッドトゥービートゥルー Toogoodtobetrue が3着。ビーチ・ベルは6着敗退し、2歳牝馬戦線は未だ勢力地図が安定しない印象です。
ミック・ハルフォード厩舎、シェーン・フォレイ騎乗のレイダーラは、アガ・カーンの所有馬。2戦目にレパーズタウンで未勝利を脱し、前走はデビュタントの前哨戦に当たるシルヴァー・フラッシュ・ステークス(GⅢ)では4着でした。2歳牝馬路線はこのあとGⅠのモイグレア・スタッドとなりますが、レイダーラ陣営はこれで今期は終戦とし、3歳になるのを待って本格的にクラシックに向かいたい意向です。

この日三つ目のG戦は、2歳牡馬によるフューチュリティー・ステークス Futurity S (GⅡ、2歳、7ハロン)。1頭が取り消して5頭立て。前走の前哨戦でもあるタイロス・ステークス(GⅢ)を制したグレンイーグルス Gleneagles が8対13の1番人気。但し前走は3頭立てのレースでしたから、これほどの人気になるのは不安と言えるでしょう。

しかし結果は人気通り。2番人気(4対1)コンヴァージェンス Convergence (タイロスの3着、即ち最下位馬)の逃げを3番手で追走したグレンイーグルス、そのまま前を捉えると後はジョッキーが馬を抑える楽勝。最後方から4番人気(8対1)のヴァート・ド・グレース Vert de Grace が勝馬に4分の3差まで詰め寄りましたが、これは後の祭り。更に3馬身半差で3番人気(7対1)のホール・オブ・フェイム Hall of Fame が3着。
これでG戦2連勝、通算でも3戦2勝としたグレンイーグルスは、エイダン・オブライエン厩舎、ジョセフ・オブライエン騎乗。この後はGⅠのナショナル・ステークスというのが常識的なローテーションですが、オブライエン師のことですから何処を目指すかは未定です。この勝ち方でも2000ギニーのオッズには影響なく、レース前と同じ25対1のままでした。

カラーの最後はアイリッシュ・セントレジャー・トライアル・ステークス irish St Leger Trial S (GⅢ、3歳上、1マイル6ハロン)。ここも1頭が取り消して5頭立て。GⅠ勝馬のペナルティーを含めて10ストーンと近年ではかなり重い負担重量を背負っているにもかかわらず、去年のセントレジャー馬リーディング・ライト Leading Light が2対5の圧倒的1番人気。今期も前走アスコット・ゴールド・カップを含めて2戦2勝、一旦夏休みを取っての再始動です。

最低人気(33対1)シュー・ルイス Shu Lewis の逃げを3番手で待機したリーディング・ライト、最後は堂々の貫録相撲で去年の勝馬で2番人気(5対1)ロイヤル・ダイヤモンド Royal Daimond に1馬身4分の1差を付けていました。シュー・ルイスが粘って短頭差の3着。
リーディング・ライトはもちろんエイダン・オブライエン厩舎、ジョセフ・オブライエン騎乗。通算成績は10戦8勝となり、負けたのはデビュー戦(4着)と去年の凱旋門賞(12着)だけ。このあと何処に向かうかは例によって未定ですが、最終目標は来年のゴールド・カップ2連覇にありそう。去年のこともあるので、次走は凱旋門賞よりはレースの目的でもある愛セントレジャーというのが現実的でしょう。
一方2着のロイヤル・ダイヤモンドは、今は完全に調教師に転身したジョニー・ムルタの管理馬。去年制した愛セントレジャー2連覇が大目標です。

さて最後はフランスのドーヴィル競馬場。相変わらず very soft の馬場でG戦3鞍が行われました。
最初は2歳のGⅠ戦、モルニー賞 Prix Morny (GⅠ、2歳牡牝、1200メートル)。9頭が出走し、アメリカの快速馬ホーテナニー Hootenanny が11対5の1番人気。去年は同じアメリカのウェスリー・ウォード師が送り込んだノー・ネイ・ネヴァー No Nay Never が制していることも人気の要因でしょう。前走ロイヤル・アスコットのリステッド戦に勝って、既にヨーロッパでの実績を作っている馬です。

レースは地元の意地とばかりにヘッド厩舎のライド・ライク・ザ・ウインド Ride Like the Wind が逃げ、これをピタリとホーテナニーがマークする展開。しかし中団に付けていた3番人気(13対5)のザ・ワウ・シグナル The Wow Signal が鋭く伸び、ホーテナニーを半馬身捉えて優勝。1馬身差で2番人気(5対2)、地元フランスで無敗のエルヴェディア Ervedya が最後方から追い込んで3着に入りました。
ザ・ワウ・シグナルは英国のジョン・クィン厩舎、フランキー・デットーリ騎乗。クィン師は障害と平場を掛け持つ方で、平場のGⅠはこれが初となります。前走はロイヤル・アスコットのコヴェントリー・ステークス(GⅡ)に勝っており、9馬身差で圧勝したデビュー戦から無傷の3連勝で2歳の頂点に立ちました。

続いてもGⅠのジャン・ロマネ賞 Prix Jean Romanet (GⅠ、4歳上牝、2000メートル)。11頭が出走し、アガ・カーン所有の地元馬で、前走ナッソー・ステークス(GⅠ)に遠征して2着したナルニーン Narniyn が11対10の1番人気。

レースはユーフラシア Euphrasia が逃げ、ナルニーンは中団待機。2番手を追走していた去年のオークス2着馬で2番人気(43対10)のシークレット・ジェスチャー Secret Gesture が先頭に立ちましたが、最後方に控えた9番人気(245対10)のリボンズ Ribbons が末脚を爆発させ、これまた人気薄(39対1、11番人気)のプリンセス・ルールー Princess Loulou に2馬身差を付けて優勝、大波乱となりました。更に1馬身半差でシークレット・ジェスチャーが3着、ナルニーンはその後、4着での入線です。
大穴を開けたリボンズは、これまた英国のジェームス・ファンショウ厩舎、騎乗したのはモルニーのザ・ワウ・シグナルに続いてフランキー・デットーリ。名手デットーリは第一線からやや後退した印象がありましたが、ここドーヴィルで久し振りのGⅠダブルを達成し、スポーツ紙のトップを飾りました。2着はロジャー・ヴァリアン厩舎、3着もレイフ・ベケット師ということで、このGⅠは1着から3着までをイギリス勢が独占しています。
リボンズは今期、ケンプトンのリステッド戦、アスコットのハンデ戦と2着続き。リステッドで2度入着があるだけの4歳馬ですが、G戦初挑戦での快挙となりました。そもそもデビューから4連勝した実績もあり、フランスの不良馬場で才能が開花したのでしょうか。それとも今回が初騎乗だったデットーリの魔力か。

日曜日最後のレポートは、長距離のケルゴレー賞 Prix Kergorlay (GⅡ、3歳上、3000メートル)。重の長距離戦ということで、最初から4頭立て。ドイツからアンドレアス・ヴォーラー厩舎が送りこんだ2頭の内、ドイツのGⅡに勝っているプロテクショニスト Protectionist が6対5の1番人気。

本命馬のペースメーカーを務めるアルターノ Altano が逃げ、3番手に付けたプロテクショニストが予定通りの抜け出し勝ち。1馬身半差で地元リボー厩舎のフライ・ウィズ・ミー Fly With Me が2着、同じく1馬身半でアルターノが3着。結局はドイツ馬が制する所となり、この日のフランス勢は顔色無しの結果に終わりました。
プロテクショニストはメルボルン・カップを目指している4歳馬、フランスは絶好の足慣らしの場でしょう。

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