真のチャンピオンはこの馬だ

アメリカでも昨日は三つの競馬場でG戦が行われました。最初はモンマス・パーク競馬場のクリフ・ハンガー・ステークス Cliff Hanger S (芝GⅢ、3歳上、9ハロン)。去年は8.5ハロンで行われましたが、今年は約100メートル伸びての芝戦、firm の馬場に7頭立てで行われました。去年GⅠに2勝(ユナイテッド・ネーションズ、ソード・ダンサー・インヴィテーショナル)しているビッグ・ブルー・キッテン Big Blue Kitten が4対5の1番人気。
スタンドの目はほとんどが本命馬に集まる中、2番人気(4対1)のプレインヴュー Plainview が逃げ、ビッグ・ブルー・キッテンはやや離れた最後方を追走。直線、3番手に付けていた4番人気(9対2)のウイニング・コース Winning Cause が逃げ馬を捉えてスパート、徐々に差を詰めたビッグ・ブルー・キッテンも外から末脚を伸ばしましたが、半馬身届きませんでした。1馬身差で粘ったプレインヴューが3着。
トッド・プレッチャー厩舎、エディー・カストロ騎乗のウイニング・コースは、去年4月にキーンランドでレキシントン・ステークス(GⅢ)に勝って以来の勝利。その間11連敗が続いており、前走もサラトガの一般ステークス(ジョンズ・コール・ステークス)で4着でした。

続いてはワシントン州エメラルド・ダウンズ競馬場から。この競馬場では唯一のG戦となるロングエイカーズ・マイル・ハンデキャップ Longacres Mile H (GⅢ、3歳上、8ハロン)。今年は第79回になる由。12頭が出走し、去年のこのレースで2着のストライカー・ピーエイチディー Stryker Phd が6対5の1番人気。
レースはスキャット・ダディーベビー Scat Daddtbaby の逃げで始まり、人気のストライカー・ピーエイチディーは後方2番手。流石にこのコースを本拠地にしている本命馬、直線では大外から一気に進出し、やや左右に寄れながらも4番人気(9対1)ボイェット Boyett に半馬身差で優勝。更に半馬身差で内ラチ沿いに6番人気(24対1)のトゥイストグリップス Twistgrips が追い込んで3着。
去年はマーゴ・ロイド師が管理していたストライカー・ピーエイチディーは、今年はラリー・ロス厩舎に転厩、長期休養明けでここエメラルド・ダウンズの一般ステークスを何れもコース・レコードで2連勝し、今回がG戦初勝利となる5歳せん馬です。ステークスは通算して4勝目ですが、全てエメラルド・ダウンズでのものと、完全に地元密着型の競走馬と言えそうです。

最後はカリフォルニアのデル・マー競馬場で行われた3鞍のG戦。先ずはデル・マー・マイル・ステークス Del Mar Mile S (芝GⅡ、3歳上、8ハロン)から。1頭が取り消して7頭立て。このレースを2連覇し、前走シューメーカー・マイル(芝GⅠ)も制しているオビアスリー Obviously が2対5の断然1番人気、3連覇に期待が掛かります。
そのオビアスリー、スタートを失敗して出遅れ、ややー強引に先頭に立ちます。スローペースに落としたものの精神的な焦りがあったか、4番手を進んでいた2番人気(3対1)のトムズ・トリビュート Tom’s Tribute に競り掛けらると一杯、結局は4着敗退となって3連覇成らず。先頭を奪ったトムズ・トリビュート、5番手から内を衝いて前が開くのに手間取った3番人気(9対1)ロック・ミー・ベビー Rock me Baby を1馬身抑えて優勝。半馬身差で5番人気(30対1)の伏兵ハンサム・マイク Handsome Mike が3着に入りました。
ジェームス・キャシディー厩舎、マイク・スミス騎乗のトムズ・トリビュートは、前走エディー・リード・ステークス(芝GⅠ)に勝ってGⅠホースの仲間入りを果たしたばかり。秋のBCマイルが最大目標となるでしょう。

次は勝馬にBCダート・マイルへの優先出走権が与えられるパット・オブライエン・ステークス Pat O’Brien S (GⅡ、3歳上、7ハロン)。GⅡながら重要なステップレースでもあります。1頭が取り消して7頭立て。去年の勝馬で、前走サン・ディエゴ・ハンデ(GⅡ)も快勝したフェド・ビズ Fed Biz が3対2の1番人気。
スタートでダッシュを決めたのが、2番人気(8対5)で去年のこのレースでフェド・ビズの2着に敗れたゴールデンセンツ Goldencents 。今回ばかりは後続に影も踏ませず、最後は4番手から押し上げてきた本命フェド・ビズに4馬身4分の1差を付ける雪辱劇でした。1馬身半差で4番人気(5対1)のシレンティオ Silentio が3着。勝時計1分20秒99は、レコード・タイム更新でもあります。
ダグ・オネイル厩舎、ラファエル・ベハラノ騎乗のゴールデンセンツは、去年のBCダート・マイル勝馬。3歳時にはサンタ・アニタ・ダービーも制していますが、今年はメトロポリタン・ハンデ、ビング・クロスビー・ステークスとGⅠ戦で何れも2着。少しフラストレーションが溜まっていたところでした。これで優先出走権も手にし、心置きなくBC2連覇に向かうことになるでしょう。

最後はGⅠのパシフィック・クラシック Pacific Classic (GⅠ、3歳上、10ハロン)。こちらもBC対象で、クラシックへの優先出走権が掛かります。1頭が取り消して10頭立て。去年の勝馬でGⅠ8勝の古豪ゲーム・オン・デュード Game On Dude が参戦していながら、6対5の1番人気に支持されたのは5戦全勝の3歳馬シェアド・ビリーフ Shared Belief 。脚部難でクラシックは棒に振ったものの、ここ数戦で復帰の兆しが見えていました。2連覇が掛かったゲーム・オン・デュードは5対2で2番人気。
古馬の意地、スタートから先手を取ったゲーム・オン・デュードが一時は6馬身もの差を付けて第3コーナーに入りましたが、5番手から進出したシェアード・ビリーフが一気に差を詰めて先頭で直線に。同じく3番手を進んだ4番人気(8対1)でUAEダービーの覇者トースト・オブ・ニュー・ヨーク Toast of New York を2馬身4分の3差突き放して人気に応えました。2馬身4分の1差で9番人気(39対1)のインペラティヴ Imperative が3着に入り、ゲーム・オン・デュードは4着。直線入口で外の勝馬と内の本命馬の間に挟まって躊躇せざるを得なかった2着のエスピノザ騎手が異議を申し立てましたが、裁決は却下しています。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、マイク・スミス騎乗のシェアード・ビリーフは、これで6戦無敗と完璧な成績。実は2歳時にキャッシュコール・フューチュリティー(GⅠ)に勝って2歳チャンピオンに選ばれた馬でしたが、上記の様に脚部不安のためにクラシック戦線は回避。今年は5月にゴールデン・ゲートのアローワンス戦で復帰し、前走はカリフォルニアのローカル競馬であるロス・アマトス競馬場のダービー(GⅡ)に優勝。今回は久し振りに表舞台に臨んでの圧勝劇です。ゲーム・オン・デュードとコンビを組んできたスミス騎手が、敢えてコンビを解消してこちらに騎乗してきたことで、如何に同馬に掛ける期待が大きいかが判るでしょう。
恐らく現在のシェアード・ビリーフに太刀打ちできるのは、2冠馬カリフォルニア・クローム California Chrome 位のもの。今年のBCクラシックは、真の3歳チャンピオン、いや全米チャンピオンの座をかける戦いになりそうな予感がします。

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