3歳馬が制したパシフィック・クラシック

日曜日のアメリカもG戦はサラトガとデル・マーでしたが、土曜日とは逆にデル・マーがG戦3鞍の賑いです。

先にサラトガ競馬場で行われたパーソナル・エンサイン・インヴィテーショナル・ハンデキャップ Personal Ensign International H (GⅠ、3歳上牝、9ハロン)から。1995年から去年までは1マイル4分の1の距離で行われてきましたが、今年は1ハロン短くなっての施行です。BCレディーズ・クラシックへの優先出走権が与えられる一戦。
fast の馬場に6頭が出走、去年のBCレディーズ・クラシックの覇者で前走デラウェア・ハンデ(GⅡ)も勝っているロイヤル・デルタ Royal Delta と、一昨日のバレリーナ・ステークスを取りやめてこちらに回ってきたイッツ・トリッキー It’s Tricky の一騎打ちと思われていました。前者が5対4の1番人気、後者が2対1の2番人気。
ところがレースは思わぬ波乱。先ずスタートでイッツ・トリッキー(カストロ騎乗)が大きく躓き鼻面を地面にぶつけるほどのアクシデント、落馬寸前でしたが馬に影響があったのは事実でしょう。続いて第4コーナーではロイヤル・デルタ(スミス騎乗)が大きく外に膨れるアクシデント、直線で立て直しながら追い込みましたが半馬身届かず2着に終わりました。優勝は2番手から3コーナー先頭の4番人気(10対1)ラヴ・アンド・プライド Love and Pride 。1馬身差3着にはイッツ・トリッキーが入り、スムースなレースなら人気2頭で決まっていたと思える結果になりました。
ラヴ・アンド・プライドを管理するトッド・プレッチャー師は、2006年のフリート・インディアン Fleet Indian に続きパーソナル・エンサイン2勝目。騎乗したジョン・ヴェラスケス騎手も2002年、2004年に次いで3勝目となります。

そしてデル・マー競馬場から3鞍。最初はパット・オブライエン・ステークス Pat O’Brien S (GⅡ、3歳上、7ハロン)。去年まではGⅠでしたが、最高格は3年間で、今年は再びGⅡに格下げされています。6頭立て。ポリトラック・コースは fast 、去年のハスケル・インヴィテーショナル(GⅠ)の覇者で、今期久し振りの実戦となったデル・マーのアローワンス戦(7ハロン、7月26日)も楽勝したコイル Coil が3対2の1番人気に支持されていました。
最低人気(24対1)のドン・ティート Don Tito が逃げ、コイルは2番手追走。直線で先頭に立ちましたが、後方2番手を進んだ3番人気(5対2)のキャピタル・アカウント Capital Account が外から鋭く伸びて本命馬を半馬身交わしての優勝。更に1馬身で2番人気(8対5)のキャンプ・ヴィクトリー Camp Victory が3着。
勝馬と2着馬を共に管理するボブ・バファート調教師はワン・ツー・フィニッシュとなり、このレースは2009年からの4連覇達成、更に2000年と2001年の連勝を加えて6勝目の快挙です。この4連覇は全て異なるジョッキーで制しており、今回のデヴィッド・ロメロ・フローレス騎手は初制覇。前走デルマーのビング・クロスビー・ステークス(GⅠ、7月29日)は3着だった馬で、これがG戦初勝利となります。

続いてはデル・マー・マイル Del Mar Mile (芝GⅡ、3歳上、8ハロン)。芝コースは firm 、ここも6頭が出走し、G戦は初挑戦ながら前走8月2日のアローワンス戦を5馬身差で圧勝したアイルランド産馬のオビアスリー Obviously がイーヴンの1番人気。
大外6番枠からスタートしたオビアスリーは、そのまま内に入りながら先頭に立ち、後続を引き離しての逃げ切り体勢。最後方から3番人気(7対2)のミスター・コモンズ Mr. Commons が激しく追い込みましたがハナ差届かず2着。3着は4馬身4分の3差離されて2番人気のジェラニモ Jeranimo が入り順当。勝時計1分32秒10はコース・レコード、スピード決着になりました。
マイク・ミッチェル厩舎のオビアスリーは、去年までアイルランドで走っていた馬。一般ステークスはハリウッドで2着の経験がありますが、G戦は初挑戦での初勝利となります。鞍上ジョー・タラモ騎手は、去年に続いてこのレース2連勝。

日曜日最後は第22回パシフィック・クラシック Pacific Classic (GⅠ、3歳上、10ハロン)。勝馬にはBCクラシックへの優先出走権が与えられるGⅠレースです。10頭が出走、去年のBCクラシック2着馬で7月7日にハリウッド・ゴールド・カップ(GⅠ)を制したゲーム・オン・デュード Game On Dude が6対5の1番人気に支持されていました。
実は今年のパシフィック・クラシック、レース前に一寸したドラマがありました。2009年と2010年にこのレースを連覇したボブ・バファート厩舎のリチャーズ・キッド Richard’s Kid も今年のレースで有力視されていましたが、バファート師の知らない間に直前に馬主が代わるという事件があったのです。バファート師にとっては今回で4度目の制覇を狙う1頭でしたが、急遽レアンドロ・モーラ厩舎に馬が移されてしまいました。両陣営の間で気まずい遣り取りもあったようですが、結局バファート厩舎は本命になるゲーム・オン・デュードに加え、ジェイシート Jaycito を参戦させて2頭出しで臨むことになります。
またゲーム・オン・デュードとコンビを組んで来た女流のシャンタル・サザーランドにとっては、サンタ・アニタ・ハンデ、ハリウッド・ゴールド・カップに加え、パシフィック・クラシックの「南カリフォルニア3冠」が掛かる騎乗ともなります。更にゲーム・オン・デュードは去年アクラメーション Acclamation の4着からの雪辱ともなるだけに、レース前から様々なドラマが話題になっていました。因縁のリチャーズ・キッズはエスピノザ騎乗となり、9対2の2番人気。
レースは最低人気(75対1)のリヴァティング・リーズン Riveting Reason が逃げましたが、ゲーム・オン・デュードが4番手からジワジワ進出して早くも向正面で先頭を奪い、そのまま逃げ込みに入ります。しかし前半は後方2番手に控えていた3番人気(5対1)のデューラハン Dullahan が順位を上げ、最後の直線で本命馬に襲い掛かると、半馬身差を付けて優勝。バファート師とサザーランドの夢を乗せたゲーム・オン・デュードは惜しくも2着。因縁のリチャーズ・キッズも後方から差を詰め、2馬身4分の3差で3着に食い込みました。勝時計1分59秒54はポリトラックのコースレコード、去年アクラメーションが出した記録(2分00秒61)を更新しました。1番人気から3番人気までが上位3着までを占めて結果は順当ですが、様々なドラマを含んだクラシックとなっています。
デューラハンは、今年のケンタッキー・ダービー3着、ベルモント・ステークスは1番人気で7着の3歳馬。このレースを3歳馬が制したのは、1991年ベスト・パル Best Pal 、1999年ジェネラル・チャレンジ General Challenge 、2002年ケイム・ホーム Came Home に続く僅かに4回目の由。前走ハスケル・インヴィテーショナル(GⅠ)は5着でしたが、ポリトラック・コースでは3戦全勝。しかも全てGⅠ戦(2歳時のブリーダーズ・フューチュリティー、今年のブルー・グラス・ステークス、共にキーンランド競馬場)という相性の良さです。
勝馬を管理するデール・ロマンスは、去年まで南カリフォルニアをベースに活躍していた方。現在はニューヨークを本拠にしていますが、今回は出張競馬での栄冠となりました。鞍上はジョエル・ロザリオ、ロマンス師共々パシフィック・クラシックは初制覇となります。

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