ヤマハホールのコンサート・シリーズ

季節も漸く9月、夏の間は蓼科以外はジッと蟄居していた小生も秋の演奏会通いをスタートさせました。
最初に選んだのがこれ。

モーツァルト/クラリネット五重奏曲イ長調 K581
ハイドン/弦楽四重奏曲第39番ハ長調作品33-3「鳥」
     ~休憩~
ブラームス/クラリネット五重奏曲ロ短調作品115
 クラリネット/クロード・フォーコンプレ Claude Faucomprez
 クァルテット・エクセルシオ

会場は御存知、ヤマハ銀座店の上階に設置されているヤマハホールです。ヤマハ銀座店が現在の姿に変貌してからこのホールを訪れるのは初めてです。
学生時代ヤマハ銀座店は私にとって聖地の様なもので、地下1階にあった楽譜売り場には週に一度は通ったもの。わけもわからずスコア漁りに明け暮れていたものでした。そこで高名なプロの音楽家に遭遇したことも何度もありましたっけ。
当時の楽譜係の責任者は高橋淳(たかはし・あつし)氏で、どんな疑問にもサクッと答えてくれたものです。著作も多かった氏の「楽譜の正しい選び方」は、未だに私のバイブルですよ。

当時も上階にあったホールにも何度か出掛けましたが、余りにも昔のことでほとんど覚えていません。ただ、ザルツブルク音楽祭でライヴ収録した「バラの騎士」の映画が上映され、そこで動くカラヤンやシュヴァルツコプフを初めて見て感激したことだけは良く覚えています。
その後ビル自体の改修が決まり、それを記念して階段スペースなどで思い出の写真展などが開催され、今では垂涎ものの大演奏家のサインなども展示されていたものです。あれはどうなったんでしょうね~。

などと昔を思い出しながら今回初めて足を踏み入れたホールは、やはり何となく昔の面影を残していました。シューボックス型の小振りな空間は一応2階まで。私は舞台に近い席を選びましたが、音響も木質の暖かさを活かしたもので、残響も極めて適切な快適空間と聴きました。
ただ敷地そのものが地価の高い銀座という立地のため狭く、ホールとホワイエは階段の上り下り。トイレがホール階に設置できなかったこともあり、バリアフリーという点では問題がありそうですね。

このコンサートはクァルテット・エクセルシオを追いかけている関係から知ったもので、6月に銀座でチケットを選んだ時はガラガラ状態でした。ところが当日はほとんど空席が無いほど埋まっており、客席には我が国の管楽器界の重鎮がズラリ。フォーコンプレ人気の高さが窺われます。
恥ずかしながら私は初めて聴く方で、フランスを代表する名手の一人とのこと。フランスのクラリネットと言えば、私はジャック・ランスロのソロ、フルネ指揮N響でモーツァルトを聴いた世代ですから、あの暖かくも多彩な音色が耳に残っていました。
エク・メンバーの最後に付いて登場したフォーコンプレ氏、事前に見ていたチラシの写真とはかなり印象が異なります。フランス人には時々見かけるように背は小柄、想像していた若手ではなく、かなり年配に見受けられました。

詐欺じゃないか、と一瞬思いましたが、出てくるクラリネットの響きはあのランスロを髣髴とさせるもの。やはりフランスには管楽器の伝統がシッカリ継承されているのですね。彼も様々なコンクールで優勝・入賞した後、フランス共和国親衛隊音楽隊に入団していた経歴もあります。
クラシック音楽聴き始めのころ、初来日だったギャルド・レピュブリケーヌの管楽器のみとは思えない多彩なアンサンブルに舌を巻いたものです。あれが現在のブラスバンド・ブームの原点でしょうね。クラリネットはもちろんファースト・ヴァイオリンの役割。

今回はクラリネット五重奏曲と言えばこの2曲、という王道プログラム。間にエクでは初めて聴く「鳥」と、真に贅沢な2時間を堪能しました。曲に付いてもエクに付いても追加することはありません。フォーコンプレに付いても既に書いた通り。

アンコールも準備されていて、聴いた当座は誰の何だろう? と思っていましたが、ホワイエの張り紙でウェーバーのクラリネット五重奏曲作品34の第3楽章であることを知りました。
帰宅してから早速NMLで確認しましたが、フォーコンプレ自身がラロ四重奏団と録音したものを聴くことが出来ます。フランスの独立レーベルであるソリストのウェーバー作品集。第3楽章メヌエットはカプリッチョ・プレストとあるように、楽しく軽快な一品。NMLのお蔭で全曲も含めお気に入りの一曲になりそうです。

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