カリフォルニア・クロームの復帰戦は?

来週にスーパー・サタデイを控えたアメリカ、今週は比較的地味なG戦が行われましたが、中には注目のレースもあり、目が離せません。

最初はベルモント・パーク競馬場のギャラント・ブルーム・ハンデキャップ Gallant Bloom H (GⅡ、3歳上牝、6.5ハロン)。fast の馬場に6頭が出走し、既にGⅠのバレリーナ・ステークスを制しているアルテミス・アグロテラ Artemis Agrotera が2対5の断然1番人気。
レースは2番人気(5対1)のラ・ヴェルダッド La Verdad が後続を離しての逃げ、2番手以下に4馬身差を付けたまま直線に入り、そのまま逃げ切るかに思われました。しかし前半は後方2番手で待機したアルテミス・アグロテラ、外を回って直線コースの全てを使い切っての追い込み、ゴール寸前でラ・ヴェルダッドを頭差捉えての快勝です。1馬身差の3着に5対1で並んでいたウィレット Willet 。
マイケル・ハッション厩舎、ラジーヴ・マラー騎乗のアルテミス・アグロテラは、これでBCフィリー・アンド・メア・スプリントの筆頭候補になるでしょう。去年はデビューからフリゼット・ステークス(GⅠ)を含めて2連勝し、BCジュヴェナイル・フィリーズでは5着に終わりました。今期はエイコーン(GⅠ)8着で短距離路線に転向、前走サラトガでバレリーナ(GⅠ)を制して短距離牝馬の主役に躍り出ています。2度目の挑戦でBCのタイトルを獲得できるか・・・。

次はチャーチル・ダウンズ競馬場のドッグウッド・ステークス Dogwood S (GⅢ、3歳牝、7ハロン)に行きましょう。これも優先出走権対象ではないものの、BCフィリー・アンド・メア・スプリントに繋がる一戦です。fast の馬場に2頭が取り消して8頭立て。ステークスに3勝しているフィフティーシェイズオブゴールド Fiftyshadeofgold が4対5で1番人気。
大外発走のミッゼン・ミス Mizzen Miss が切れ込むように先頭に立って逃げ、フィフティーシェイズオブゴールドは3番手の位置。直線に向いても本命馬の動きは鈍く、前半5番手に付けていた3番人気(9対2)のサンキュー・メリールー Thank You Marylou が外から追い上げ、7番人気(24対1)のヘニー・ジェニー Henny Jenney に6馬身半の大差を付ける圧勝。半馬身差の3着に2番人気(7対2)のマイラム Milam が入りました。フィフティーシェイズオブゴールドは5着敗退。
マイケル・メイカー厩舎、ミゲル・メナ騎乗のサンキュー・メリールーは、これがG戦初勝利。3月初めにガルフストリームの一般ステークスに勝ちましたが、キーンランドのアシュランド・ステークス(GⅠ)は3着。そのあと入着に届かないレースが続き、前走サラトガのテスト・ステークス(GⅠ)も6着に終わっていました。今回は初めてブリンカーを装着したことが奏功したようで、この圧勝で牝馬短距離路線のトップクラスに名を連ねてきました。彼女もBC牝馬スプリントを目指すことになるでしょう。

三つ目はデラウエア・パーク競馬場からケント・ステークス Kent S (芝GⅢ、3歳、9ハロン)。firm の芝コースに7頭立て。7月にアーリントンでアメリカン・ダービー(芝GⅢ)に勝ったディヴァイン・オース Divine Oath が4対5の1番人気。
レースは4番人気(7対1)のラフォンテーヌ Lafontaine が逃げましたが、1番枠発走を利して終始インコースで節約した本命馬、直線でも内ラチ一杯から抜けると、2番手から外を回った3番人気(5対1)バシャート Bashart に4分の3馬身差を付けて期待に応えました。1馬身差でブービー人気(12対1)のアザー・チーク Other Cheek が3着。
トッド・プレッチャー厩舎、ホセ・カラバロ騎乗のディヴァイン・オースは、3歳の1月18日にデビューして2連勝。4月のレキシントン・ステークス(GⅢ)2着がG戦デビューで、前々走のアメリカン・ダービーでG戦初勝利。前走セクレタリアト・ステークス(芝GⅠ)では荷が重かったか6着に敗れましたが、ここで二つ目のG戦勝を上げています。プレッチャー師もカラバロ騎手もこのレース初勝利。

次に注目レースが続くペンシルヴァニア州に飛びましょう。G戦が3鞍組まれているパークス・レーシング競馬場、最初はギャラント・ボブ・ステークス Gallant Bob S (GⅢ、3歳、6ハロン)から。去年GⅢに格上げされたレースですね。7頭が出走し、前走GⅠのキングズ・ビショップ・ステークスで首差2着惜敗のファスト・アンナ Fast Anna が3対5の1番人気。
そのファスト・アンナがスタートからハナに立ちましたが、直ぐに2番人気(7対2)のフェイヴァリット・テール Favorite Tale が交わして先頭を奪うと、そのまま本命馬に2馬身半差を付ける事実上の逃げ切り勝ち。首差で5番人気(19対1)のバンプ・スタート Bump Start が3着に入りました。
ガダルーペ・ブレシアード厩舎、ジョン・ビソーノ騎乗のフェイヴァリット・テールは、これがG戦初勝利。調教師、騎手共にプエルト・リコ出身で、馬共々アメリカでのG戦初勝利となります。パークス・レーシングでは4戦4勝となるコース・スペシャリスト、5月にはベルモントの一般ステークスにも勝っていました。

続いて今週唯一のGⅠ、コーティリオン・ステークス Cotillion S (GⅠ、3歳牝、8.5ハロン)。レース前は3強対決が話題でしたが、残念ながらアラバマ・ステークスとCCAオークス覇者のストップチャージングマリア Stopchargingmaria が取り消して8頭立て。それでもGⅠ2勝馬同士の対戦が実現し、ケンタッキー・オークスとマザー・グース勝のアンタパブル Untapable が1対2の1番人気、エイコーンとテストを制したスイート・リーズン Sweet Reason が9対2の2番人気で続きます。事実上最強3歳牝馬決定戦。
3番人気(9対1)のジョジョ・ウォリアー Jojo Warrior が逃げ、アンタパブルは3番手、スイート・リーズンが4番手で淡々と進みます。3~4コーナー中間点で仕掛けたアンタパブル、直線では内に切れたり外に立て直したりとブレながらも、追い込むスイート・リーズンに1馬身差で3つ目のGⅠ制覇を達成しました。更に1馬身差で逃げたジョジョ・ウォリアーが3着。
スティーヴン・アスムッセン厩舎、ロージー・ナプラヴニク騎乗のアンタパブルは、前走牡馬相手のハスケル・インヴィテーショナル5着からのリバウンド。その前はGⅠ2勝を含み4連勝していた馬で、チャンピオン3歳牝馬に最も近い存在と言えましょう。残るはBCディスタッフに勝ってチャンピオンを獲得するだけとなりました。

パークス・レーシングの最後は、GⅡながらメンバーはGⅠ級が揃ったペンシルヴァニア・ダービー Pennsylvania Derby (GⅡ、3歳、9ハロン)。8頭が出走し、何と言っても注目は二冠馬カリフォルニア・クローム California Chrome のベルモント・ステークス4着以来の復帰戦。当然ながら4対5の1番人気に支持されていました。
レースは2番人気(7対2)のバイエルン Bayern が予定通りの逃げ。カリフォルニア・クロームは3番手で追い出しのタイミングを計ります。直線、リードを広げるバイエルンに対し、カリフォルニア・クロームは期待された伸び脚は見られません。結局バイエルンが4番人気(6対1)タピチュア Tapiture に5馬身4分の3差を付ける圧勝での逃げ切り勝ち。頭差で3番人気(5対1)のキャンディー・ボーイ Candy Boy が3着に入り、最後は緩めたカリフォルニア・クロームは6着と凡走に終わりました。勝時計1分46秒96はトラック・レコードという流石にトップクラスの内容です。
ボブ・バファート厩舎、マーチン・ガルシア騎乗のバイエルンは、ややムラ駆けながら7月末のハスケル・インヴィテーショナルに続くGⅠ2勝目。そのハスケルではコーティリオンを制したアンタパブルを破っているのが興味深い所でしょう。前走トラヴァースで最下位に敗れてからのリバウンド、3歳牡馬路線のチャンピオンは未だ結論が出ていないようです。ダービー馬陣営も失望感は無く、ここはGⅡ、目標のBCクラシックへは予定通りの行程で参戦するローテーションです。

最後に新しいG戦を紹介しましょう。チャールズ・タウン競馬場のチャールズ・タウン・オークス Charles Town Oaks (GⅢ、3歳牝、7ハロン)。ウエスト・ヴァージニア州のチャールズ・タウン競馬場、これまでここで行われるG戦は春のチャールズ・タウン・クラシック(GⅡ)だけでしたが、今年は新たにオークスが加わりました。新設なのか格上げなのかは不明ですが、この日は第1レースから最終レースまで全てステークスという秋祭り状態で、レースはナイター、結果が入ってきたのは日本時間ではたった今のことです。
2頭が取り消して10頭立て。2歳時にベルモントでメイトロン・ステークス(GⅡ)に勝ったミス・ビヘイヴィアー Miss Behaviour がイーヴンの1番人気。ここ3戦連続してG戦2着という堅実ぶりからも、ここは勝てるという評価でした。
実際にスタートから先頭に立ったミス・ビヘイヴィアー、ここでは格が違うと言わんばかりの圧勝で逃げ切りました。2着は9馬身4分の3差で3番人気(5対1)、チャーチルのドッグウッドと掛け持ちで登録していたキス・トゥー・リメンバー Kiss to Remember が入り、3着は更に1馬身差で5番人気(15対1)のネッソ Nesso 。
フィル・シェーンタル厩舎、ジェヴィアン・トレド騎乗のミス・ビヘイヴィアーは、テスト・ステークス(GⅠ)でのスイート・リーズン Sweet Reason の2着が光る馬。今回の圧勝で、その能力を証明した形です。

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