凱旋門ウィークエンド初日+

今週は愈々ロンシャン競馬場で凱旋門賞という段取りですが、このレースはお祭りということもあり、前日の土曜日にもGⅡばかり4鞍が組まれています。
一方、英国でもアスコットとニューマーケットという代表的な二つの競馬場でもG戦が合計4鞍と、一年の中でも最も忙しい週末を迎えました。ヨーロッパだけで8鞍のG戦レポートとなりますので多少遅れましたが、こんな結果が入ってきています。

先にイギリスから行きましょう。アスコットとニューマーケットが同時にG戦開催というのも珍しいケースですが、ここ数年の番組再編で生じたことでしょうか。
アスコットの最初はカンバーランド・ロッジ・ステークス Cumberland Lodge S (GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン)。馬場は秋らしく soft 、5頭が出走し、一昨年のセントレジャー馬エンカ Encke が6対5の1番人気。1年のブランクを経て現役に復帰した今期の3戦目、前走愛セントレジャー3着は復活の兆しでしょうか。

そのエンカが先頭に立って逃げ切りを策す構え。これを2番手で追走した2番人気(9対4)のピサーズ・ムーン Pethers Moon が本命馬を交わして先頭、後方から追い込む4番人気(8対1)パリッシュ・ホール Parish Hall を首差抑えての優勝です。エンカは4分の3馬身差で3着、またしても復帰勝利はお預けとなりました。
リチャード・ハノン厩舎、パット・ダブス騎乗のピサーズ・ムーンは、ここ4戦で3勝と好調。8月のグッドウッドでグローリアス・ステークス(GⅢ)に勝ち、ジェフリー・フリーア・ステークスこそ9着と凡走したものの、前走はトルコに遠征してのGⅡ勝ち。この冬はドバイに舞台を移してシーマ・クラシックを目指すという青写真も描かれています。
続いては短距離のベングー・ステークス Bengough S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。2頭が取り消しても15頭立てという盛況に人気も割れ、去年の勝馬トロピックス Tropics と、2歳時のGⅠ馬(モルニー賞)で前走リステッド戦2着のレックレス・アバンダン Reckless Abandon が5対1で並んでの1番人気に支持されていました。

G戦の常連カスパー・ネッチャー Casper Netscher が逃げましたが、先行から抜けた2頭の叩き合い。3番人気(13対2)の新星ライトニング・ムーン Lightning Moon が、GⅢ勝ち(チップチェーズ・ステークス)のペナルティーを背負ったダンゼーノ Danzeno を頭差抑えての優勝。2馬身4分の1差の3着には4番人気(7対1)でエア・ゴールド・カップに勝ったルイ・ザ・ピウス Louis the Pious が入る波乱となりました。トロピックスはスタートで他馬と接触し、後方から追い上げたものの4着に。またレックレス・アバンドンも先行集団に入っていましたが、力無く13着と大敗に終わっています。
エド・ウォーカー厩舎、ジョージ・ベイカー騎乗のライトニング・ムーンは、これが未だ3戦目で3戦3勝。成長がゆっくりで2歳時は出走せず、今期重馬場のソールズベリー競馬場でデビュー勝ち。そのあと5月にヘイドックのハンデ戦に連勝しましたが、馬場の固い夏場はジッと我慢し、馬場が渋る秋まで待機、陣営の我慢強さが花を開いた形です。2週後のアスコット・スプリント・チャンピオンでトップクラスに挑戦する予定で、12対1とオッズも急上昇しました。
父は仏ダービー馬シャマーダル Shamardal 、母の父も仏ダービーと凱旋門賞のパントル・セレーブル Peintre Celebre とあって血統的には決して短距離馬ではありませんが、スピードは抜群。4歳となる来季は7ハロンまでは克服できるのは間違いなさそうで、来年の短距離界のスターになる素質は充分と言えましょう。
今度はニューマーケットから。こちらは good 、先ずは去年は9月開催に組まれていたオー・ソー・シャープ・ステークス Oh So Sharp S (GⅢ、2歳牝、7ハロン)。3頭の取り消しがあって8頭立て。G戦は初挑戦ながら2連勝と成長著しいローカル・タイム Local Time が7対4の1番人気。

7番人気(14対1)のアストレル Astrelle が逃げ、先行したローカル・タイムが期待通り抜けると、逃げたアストレル、3番人気(5対1)プライズ・イクジビット Prize Exhibit との接戦を制して優勝。首差でアストレル、頭差でプライズ・イクジビットという結果になりました。
勝ったローカル・タイムは当初3頭が登録していたゴドルフィンの1頭(他の2頭は取り消し)で、サイード・ビン・スロール厩舎、ジェームス・ドイル騎乗。リングフィールドのデビュー戦こそ4着でしたが、ケンプトンで7ハロンと8ハロン(条件ステークス)に連勝。これで3連勝となり、1000ギニー候補の1頭にノミネートされてきました。去年このレースを制したミス・フランス Miss France が今年の1000ギニー馬であることはご存知の通り。
そしてそのミス・フランスが再び遠征してきたのが、次のGⅠ戦、サン・チャリオット・ステークス Sun Chariot S (GⅠ、3歳上牝、1マイル)。これも去年は9月開催でしたが、前のレース共々分離されて10月第1周開催に編成替えになったと思われます。1頭の取り消しがありましたが、シーズン末期のマイルGⅠ戦とあって豪華なメンバーが揃いました。凱旋門賞も顔負け。
人気も甲乙付け難く、結局4頭が7対2で1番人気を分け合う珍しいオッズ。その4強とは、アンドレ・ファーブルが送り込んできた3頭、即ちロッシルド賞勝馬エソテリク Esoterique 、G戦2連勝(サンドリンガム賞、アタランタ・ステークス)中のフィントリー Fintry 、そして今年の1000ギニー馬ミス・フランス。これにフォルマス・ステークスを制したインテグラール Integral が加わり、去年の1000ギニー馬スカイ・ランターン Sky Lantern でさえ5番人気(8対1)というレヴェルの高さでした。

確とした先行馬不在の中、ここは策士でもあるライアン・ムーアが騎乗したインテグラールがハナを主張し、ペースを落とします。人気馬・実力馬が牽制しあう中、一介の逃げ馬ではないインテグラールがまんまの逃げ切り勝ち。後続も必死で追いましたが、1馬身差でグィヨン騎乗のミス・フランスが2着、首差でバルザロナのフィントリー3着、更に1馬身半でブードーのエソテリク4着。人気を分け合った4頭が1着から4着までを独占し、ファーブル厩舎は2着から4着という結果になりました。スカイ・ランターンは6着。
サー・マイケル・スタウト師が管理するインテグラール、7月のニューマーケットでフォルマス・ステークスを制した後はロッシルド賞がエソテリクの3着、ここで二つ目のGⅠタイトルを獲得しました。このあとはクィーン・エリザベスⅡ世ステークスしか出走する舞台は無く、来年も5歳馬として留まって更なるGⅠタイトルを目指すことになるそうです。
以上でイギリスを終え、ドーヴァー海峡を渡りましょう。凱旋門前日のロンシャン競馬場は、一日7鞍。いきなり大レースから4レース続けてのGⅡ戦でお祭りを盛り上げます。馬場は丁度走り頃の good 、恵まれた凱旋門ウィークと言えそうですね。本番を翌日に控えているためか、英語系のスポーツ紙は詳しい報道を控えて満を持している様子、詳細レポートは未だ入電していません。

ということで第1レースはショドネー賞 Prix Chaudenay (GⅡ、3歳、3000メートル)。今月末の仏セントレジャーのトライアルでもある一戦で、9頭の若きステイヤーたちが出走してきました。G戦初挑戦ながら、前走ドーヴィルのリステッド戦を含めて3連勝中のバイノ・ホープ Baino Hope が5対2の1番人気。
アガ・カーンのペースメーカー、ドゥーマラン Doumaran が逃げ、バイノ・ホープは中団待機。先行した4番人気(56対10)のオーヴレイ Auvray が抜け、これも前で競馬した6番人気(12対1)のヴァン・ド・フォース Vent de Force に半馬身差を付けて優勝。バイノ・ホープも良く追い上げましたが短頭差の3着に終わり、アガ・カーンの期待馬で2番人気(14対5)だったヴァジラ Vazira はゲートインを嫌って手古摺らせた上に最下位敗退という波乱でした。

エリー・ルルーシュ厩舎、グレゴリー・ブノア騎乗のオーヴレイは、パリ大賞典に挑戦して11頭立ての最下位に終わったものの、前走リュテース賞(GⅢ)に続いてG戦に2連勝。徐々に格を上げて連勝しただけに、次はGⅠの仏レジャーという夢が近付いてきました。
二つ目はダニエル・ウイルデンシュタイン賞 Prix Daniel Wildenstein (GⅡ、3歳上、1600メートル)。14頭が出走し、今期5戦4勝と絶好調の4歳馬ソロウ Solow が9対5の1番人気。

ドイツ出身のリマリオ Limario が逃げ、外を通って先行したソロウが抜けると、アガ・カーンの3歳馬で2番人気(5対1)のヴェーダ Veda に半馬身差を付ける人気通りの結果で収まりました。1馬身半差で5番人気(14対1)ゾンマーアーベント Sommerabend が3着。
フレディー・ヘッド厩舎、オリヴィエ・ペリエ騎乗のソロウは、今期ヴィコンテス・ヴィジエ賞(GⅡ、3100メートル)での6着を除く5戦で全勝、前走カンセー賞(GⅢ)に続いてのG戦2連勝となりました。3歳時には2400メートル戦にも勝っていますが、やはり1600メートル近辺が最も能力を発揮できるタイプなのでしょう。
続いてはロワイヤリュー賞 Prix de Royallieu (GⅡ、3歳上牝、2500メートル)。2頭が出走を取り消して10頭立て。前走ミネルヴァ賞(GⅢ)に勝ったこれもアガ・カーンのザルシャナ Zarshana が2対1の1番人気。

3番人気(58対10)でロヨーモン賞(GⅢ)勝馬のサヴァンヌ Savanne が逃げ、先行したザルシャナも徐々に進出して機を窺いましたが、最後方から一気に追い込んだ6番人気(12対1)のフリーネ Frine の末脚が勝り、2番人気(33対10)のメイヘム Mayhem を短首差捉えていました。更に頭差で本命ザルシャナが3着。
勝ったフリーネは、前走ドーヴィルのポモヌ賞(GⅡ)5着まではスペインのマニュエル・オソリオ師が管理してきた4歳馬。去年のシーズン最後のG戦となったフィーユ・ド・レール賞(GⅢ、トゥールーズ競馬場)も師の管理下で制していました。レース前に現在のクリストフ・ラッフォン=パリアス厩舎に転じ、鞍上もジェラール・モッセに手替りしての初勝利です。
土曜日の最後はドラー賞 Prix Dollar (GⅡ、3歳上、1950メートル)。1頭が取り消して6頭立て。前走コロネーション・カップを制したあと脚部難を発症して休養していたスター馬シリュス・デ・ゼーグル Cirrus des Aigles がターフに戻ってきたとあって9対10の圧倒的1番人気。

その大本命がスタートから強いペースで引っ張り、最後は一杯になって左に寄れながらも何とか頭差で先頭ゴール、2番人気(11対5)のフラクショナル Fractional が2番手で入線し、1馬身4分の1差で最低人気(20対1)のヒッピー Hippy が3着。しかし最後の攻防が審議となり、結局シリュス・デ・ゼーグルは、進路を妨害した4着入線のプラネテール Planetaire のあと、5着へと降格されてしまいました。繰り上がってフラクショナルが優勝。
アンドレ・ファーブル厩舎、ラファエル・マーチェリ騎乗のフラクショナルは、前走クー・ド・メゾン=ラフィット(GⅢ)を含めてこれで4連勝となる5歳せん馬。3歳時にはカンセー賞(GⅢ)を制したこともある実力馬でしたが、去年は故障のためにシーズンを棒に振っていた経緯もあります。
一方のシリュス陣営、もし勝てばドラー賞3連覇で4度目という偉業になるはずでしたが、残念な結果に。バランド=バルブ女史もフランスの採決に対し、“時に甘く、時には厳しい。基準が曖昧なのよネ”とオカンムリ。それでも勝ったことは事実で、2週後のチャンピオン・ステークスに意欲を燃やしていました。オッズは7対2だそうです。

 

 

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