今日の1枚(191)

先日ブログを引っ越しましたが、気分が改まった所で昔のカテゴリーを二つほど復活させることにしました。その一つが音盤カテゴリーの「今日の一枚」。と言っても以前の様にCDを回すのではなく、主に音楽配信で聴く一枚。

当方も震災以前とは音盤を聴く環境がすっかり変わってしまいました。節電が叫ばれていたことからアンプやプレイヤーの電源を入れなかったため、両器とも完全に故障。そこで頭を切り替えたのがパソコンで音楽を聴こうというスタイルでした。
折からナクソスがNML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)という形の音楽図書館を強化し始め、配信される音源も膨大なものになってきました。
当初はノート・パソコンで貧弱な聴き方をしていましたが、やがてパソコン環境に拘れば遥かに良い音質で聴けることに開眼。更にCDもパソコンにデータを取り込み、そのデータの再生として聴く方が実際にCDを回すより高音質で再生できることに気が付いた次第。詳しい理屈は判りませんが、詳しい知人によるとCDを回転することが音質劣化の一因とのこと。これまでの常識は覆された感があります。

現在の環境は、ヤマハの音響システムを搭載したNECの据置型パソコンと、マランツのアンプ(PM-15S2)をオンキョー製のD/Aコンバータ(DAC-1000)で結び、デンオンのヘッドフォンで聴く日々。これがどの程度のレヴェルかは知りませんが、少なくとも今までCDを回してきた当時より遥かに「良い音」するのは驚きです。

前置きはここまで。復活第1回は、この10月から配信がスタートした旧EMIの名盤。この記事をアップする正にこの日に上程されたアルバム、オットー・クレンペラーとフィルハーモニア管弦楽団によるブラームス交響曲・管弦楽曲全集の1枚目です。収録されているのは、
①ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲
②ブラームス/交響曲第1番

NMLは多くがブックレットを見ることが出来ないため、詳しいデータなどは判りません。①はモノラル録音で、私は初めて聴いたもの。②は以前から何度もリリースされていたステレオ録音で、私も「クレンペラー・レガシー」の1枚を所有しています。
手持ちのCDに付いている解説によると、録音は1956年10月と11月、更に1957年の3月にロンドンのキングスウェイ・ホールで行われた由。プロデューサーは Walter Legge 、エンジニアは Edward Huntley とクレジットされていました。
更に当ブックレットに John Lucas が書いたライナー・ノーツによると、このブラームス交響曲全集はクレンペラーが最も充実していた時期の録音ですが、当時クレンペラーのヨハンナ夫人がミュンヘンで闘病中。全集のセッションは1956年10月29日に開始されましたが、途中で夫人の容体が急変。セッションを中断してクレンペラーはミュンヘンに向かい、11月3日に夫人を看取ったのでした。時に夫人は68歳。

葬儀を済ませたクレンペラーは翌日にはロンドンに戻り、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールで予定されていたブラームス連続演奏会を指揮、続いて録音セッションも完成させたのでした。録音日が1956年秋と翌年3月に跨っているのは、そのため。演奏会の時も、この事実を知っている人はほとんどいなかったのだそうです。
それを知って改めて当録音を聴くと、真に感慨深いものがありましょう。現システムで聴く名録音、多少の古さを感じるのは聴き始めの時だけで、クレンペラーの筋肉質なブラームスを完璧に捉えています。特にトロンボーンの音は如何にもパワフル。

なお当セット、2枚目は交響曲第2番と3番。3枚目には大学祝典序曲、悲劇的序曲、ルートヴィヒのソロでアルト・ラプソディーがあり、最後に第4交響曲という構成。同じアルバムが2種類配信されていますが、どちらも同じと思われます。

参照楽譜
①フィルハーモニア No.134
②フィルハーモニア No.130

 

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