英愛平場G戦が同時にフィナーレ

昨日の土曜日、イギリス、アイルランド共に今シーズン最後のG戦が行われました。未だ両国とも平場競走は行われますが、G戦は昨日で終了、従って当ブログの競馬日記、今年のヨーロッパはフランスを残すだけとなります。

イギリスは二つの競馬場で計3鞍のG戦、先ずはドンカスター競馬場のレーシング・ポスト・トロフィー Racing Post Trophy (GⅠ、2歳、1マイル)から行きましょう。馬場は soft 、1マイルの直線コースに8頭が出走してきました。前走ロイヤル・ロッジ・ステークスで既にGⅡを制しているエルム・パーク Elm Park が13対8の1番人気。
そのエルム・パーク、馬場が重いこともあって最初から行く構え、後続を引き連れての逃げ作戦。残り2ハロン、鞍上アンドレア・アトゼニのゴーサインに素早く反応してスパートすると、ここで勝負あった。最後方から追い込む5番人気(10対1)アロフト Aloft に2馬身4分の3差を付けて見事期待に応えました。半馬身差で2番手を追走していた3番人気(6対1)のセレスティアル・パス Celestial Path が3着。

9月28日の日記で詳しく紹介したように、エルム・パークはアンドリュー・ボールディング師の管理馬で、前走の直前に所有権の半分をカタール・レーシングが取得した馬。来シーズンからカタール・レーシングの主戦騎手に決まったアトゼニ騎手に付いても紹介しました。ボールディング師はこの日、豪州に出張中。管理馬アデライデ Adelaide がライアン・ムーア騎乗でコックス・プレートに優勝したというニュースが飛び込んできたばかりでした。
カタールのボス、シェイク・ファハド氏は結果を直ぐに豪州に報告、北・南半球での同時GⅠ制覇を祝福しあっていました。ということで今回は師の父で往年の名調教師として活躍したイアン・ボールディング氏(1938年生まれ)が勝馬の轡を取っています。イアン・ボールディングと言えば、1971年ダービーをミル・リーフ Mill Reef で制した方。同じバークシャー州キングスクレアの生産馬だけに、70年代の栄光の再現も現実的になってきました。
ロイヤル・ロッジを制した時点で33対1だった同馬のダービー・オッズ、レーシング・ポスト前には25対1に上がっていましたが、この快勝で14対1と急上昇。英国にとって待望のダービー馬誕生となるでしょうか。

 

続いてはボールディング厩舎の地元でもあるニューバリー競馬場から。馬場はこちらも soft 、ホリス・ヒル・ステークス Horris Hill S (GⅢ、2歳、7ハロン)は6頭立て。リチャード・ハノン厩舎が半分の3頭を参戦させ、前々走ソラリオ・ステークス(GⅢ)で3着したレキシントン・タイムス Lexington Times が2対1の1番人気。
同じハノン厩舎の6番人気(12対1)キング・オブ・ノルマンディー King of Normandy が逃げましたが、抜け出したのは本命馬ではなく、同じハノン厩舎でも5番人気(7対1)のスマイー Smaih (読み方の難しいスペルで、一応こうしておきます)の方。4番人気(11対2)フォックス・トロッター Fox Trotter に1馬身差を付けていました。1馬身4分の1差の3着には逃げたキング・オブ・ノルマンディーが粘り、レキシントン・タイムスは4着敗退。

2番手を追走し、残り1ハロンで抜けたスマイーは、フランキー・デットーリ騎乗。前々走遠征したドーヴィルで勝った時に重適性があることを証明し、今回も得意の馬場を見方に付けてのG戦初制覇。前走ヘイドックのリステッド戦では3着だった馬です。
父はハノン厩舎のスターだったパコ・ボーイ Paco Boy 、2000ギニーまでのスタミナはありそうで、来期は同じニューバリーのグリーナム・ステークスから始動する計画です。

英シーズン最後のG戦は、セント・サイモン・ステークス St Simon S (GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン5ヤード)。8頭が出走し、前走エアのドゥーンサイド・カップ(リステッド戦)に勝ったスカイ・ハンター Sky Hunter が7対2の1番人気。
4番人気(11対2)バタリオン Battalion の逃げを4番手で待機したスカイ・ハンター、残り1ハロンで先頭に立つと、何と最低人気(25対1)アイランド・リミード Island Remede に9馬身の大差を付けての圧勝。逃げたバタリオンが半馬身差で3着。

サイード・ビン・スロール厩舎、ジェームス・ドイルが騎乗したゴドルフィンのスカイ・ハンターは、去年までフランスのアンドレ・ファーブル師が管理していた馬で、彼の地で4勝、去年は仏ダービーでインテロ Intello の3着した実力馬。今年からゴドルフィンの英国傘下に入り、前走が3戦目での英国初勝利でした。

 

そしてアイルランド、今年最後のG戦は、レパーズタウン競馬場のキラヴュラン・ステークス Killavullan S (GⅢ、2歳、7ハロン)。yielding to soft の馬場に1頭が取り消して僅か4頭立て。内2頭を出走させているエイダン・オブライエン厩舎のロイヤル・ネイヴィー・シップ Royal Navy Ship が1対6という信じ難いほどの1番人気に支持されていました。2週前にカラーの新馬戦を勝ったばかりで、この馬が強いというよりも、他に勝てそうな馬がいないという本命馬でしょう。
そのロイヤル・ネイヴァー・シップが先手を取って逃げ切り策を図りましたが、最後方に待機した最低人気(12対1)の牝馬ステイプ・アマー Steip Amach が最後の100ヤードで本命馬を競り落とし、4分の3馬身差で勝つサプライズ。2馬身半差で本命と同じオブライエン厩舎のコクーン Cocoon が3着でした。

勝ったステイプ・アマーは何と呼んで良いか判らない馬で、ジム・ボルジャー厩舎に多い恐らくケルト語の馬名でしょう。ケヴィン・マニング騎乗、これが初勝利で、前走は僅か3日前にネイヴァンの未勝利戦で1番人気になりながら3着に終わっていた存在。尤も前走は馬場が重過ぎたのが敗因で、今回は比べればマシな状態ということで使ってきたそうです。その前、2戦目カラーのリステッド戦では4着で、今回破ったコクーン(2着)から2馬身半負けており、明らかに今回の逆転は予想外だったと言えそうです。
ボルジャー師のコメントでは、彼女の父ヴォーカライズド Vocalised はヨーロッパで繋養されている唯一のボールド・ルーラー Bold Ruler 系種牡馬とのこと。一応は来年のクラシックを目指したい考えの様でした。それまでには正式な読み方が判明することにも期待しましょう。

 

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