今日の1枚(196)

今日もNMLの配信音源を聴きましょう。EMIが参加して真っ先に聴けるようなものの中から気になっていたシリーズもの。「20世紀の偉大な指揮者たち」という個人的には買い損なった2枚組CDの数々です。
ブックレットが無いので何時頃のリリースか判りませんが、銀座の楽器店に並んでいるのを手に取って買うべきか迷っていたことを思い出します。多分ダブルものがあったので断念したのじゃないかな?

それがこうして聴き放題、どれを聴くか迷いますが、リストが並んでいる順にしましょう、と言っても全部聴けるかどうかは神のみぞ知る、ということで・・・。
最初の1点は、「アタウルフォ・アルヘンタ」編。2枚一遍に聴いても良いのですが、「今日の1枚」に拘って1枚づつ行きます。

アタウルフォ・アルヘンタ Ataulfo Argenta は早逝したスペインの指揮者で、残された録音は多くありません。このシリーズはEMIが出したものですが、音源はライヴァル社のものも含め様々な音源から集め、これまでCD化されていなかった珍しい録音が聴けるのがミソです。最初の1枚に含まれているのは、
①リスト/ファウスト交響曲
②ラヴェル/道化師の朝の歌

①はパリ音楽院管弦楽団を指揮したもので、正にライヴァルのデッカに録音したもの。現に1999年に出たデッカの日本盤(POCL-4698)が手元にありますが、同じ音源がダブってしまうので買わなかったのでしょう。
ところが、これは一聴して吃驚。何と正真正銘のステレオ録音なのです。思わず棚から件の旧盤を引っ張り出して確認してしまいましたが、以前に出たものはモノラルでした。
当時はよくあったことですが、ステレオが開発されて間もない頃は再生装置が普及していないので、ステレオ盤を出しても売れません。そこで録音現場ではモノとステレオの2方式で収録し、取り敢えずモノラル盤を出す。しかし売れなかったものはステレオ録音もお蔵入りとなり、CDの時代になっても昔からのモノラル録音のマスターから製盤されてきたということでしょう。

今回初めてステレオ音源を聴きましたが、聴いた印象は全く変わりましたね。全体に演奏のスケール感が増したようだし、何より音場がクリアーに再現される。良く使われるハープが中央左寄りに定位し、作品に独特な色彩感を加えているのが良く判ります。
いやぁ~、これは驚いたなぁ~。ネットにはこのCDに付いての感想も見つかりますが、このことを指摘しているのは一つもありませんでした。何故??

手持ちのCDに付いているブックレットによると、録音日時は1955年6月10~11日、13~14日とあります。ロケーションは、パリの La Maison de la Mutualite 。
プロデューサーは James Walker 、エンジニアは Kenneth Wilkinson 。

リストのファウスト交響曲については詳しくありませんが、アルヘンタの録音は声楽を伴わないヴァージョンで、手元のオイレンブルク版には二通りの終結部が印刷されています。その短い終結部を採用しているのは珍しい録音でしょう。
CDにはケラーマンが校訂した版とありますが、細部のオーケストレーションはオイレンブルク版とは異なった個所もあり、これがケラーマン版故なのかは不明。第2楽章の最後には12小節ほどの短いカットもあります(これもケラーマン校訂?)。

もう1曲付録の様に収録されている②は、Orchestre des Cento Soli を指揮したもので、モノラル録音。これはWERMにも記載が無い音源で、出所は判りません。
聴いてみると、モノラルながら音質は良好で、恐らく①とそう時代は違わないものと思います。アルヘンタはスペイン国立管弦楽団の音楽監督でしたから、この団体もスペインのオーケストラなんでしょう。

参照楽譜
①オイレンブルク No.477
②マックス・エシーク M.E.6818

 

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