今日の1枚(29)

今日は暖かくなりそうです。昨夜からお湿りもあって、散歩も気持ち良く楽しめました。名前の判らない変わった鳥を見かけたけれど、あれはなんだろう。

さてベイヌムは一休み。そろそろ読響聴きどころの準備に入らなければなりません。ふう~。
そこで今日の1枚はこれです。

ドヴォルザーク/交響曲第4番二短調。イシュトヴァン・ケルテス指揮ロンドン交響楽団。
デッカが作曲家別ジャンル別に旧カタログを集大成したボックス・シリーズの1枚。セットの品番は 430 046-2 、当盤は 430 049-2 ということになっています。セットの3枚目で、なるべく枚数を減らすためか第5交響曲の第1楽章から第3楽章までがカップリングされていますが、取り上げるのは第4だけにします。

録音年月日は1966年としか表記されていません。録音場所はロンドンのキングスウェイ・ホール。
プロデューサーは Ray Minshull 、エンジニアが Kenneth Wilkinson 。
キングスウェイ・ホールはデッカとEMIにとっては録音のメッカというべき録音会場で、この盤にも素晴らしいアクースティックが記録されています。
残念ながらこのホール、政争の具になり、1980年代半ばに取り壊されてしまったのだそうです。英国は、日本と並んでクラシック音楽が政治的に冷遇されている大国でしょう。

ケルテスとロンドン響のドヴォルザーク交響曲全集は全てこのホールで録音されたもの。普段は客席のある平土間にオーケストラを並べ、ホールの残響を適度に取り入れて絶妙なパースペクティヴを創り上げています。
オーケストラは通常のアメリカ式配置。第2・3楽章に登場するハープは右から、特にクローズアップせず、耳をそばだてれば鳴っていることが確認できるレヴェルですが、実際のコンサートで聴けばこの通りでしょう。
金管は左にホルン、中央から右にトランペット、トロンボーンが並んでいる様が手に取るよう。特に第4楽章の第510小節から出る3番(バス・トロンボーン)の底光りする響きには痺れますね。

ケルテスのドヴォルザーク演奏も定評のあるもので、唯一の繰り返しである第1楽章提示部も実行しています。ここは繰り返さなければ演奏されないパッセージが含まれているので、これは全体のバランスから見ても好材料です。
この第1楽章、コーダに入って直ぐのトロンボーン主題(第388小節と390小節)の3拍目をスコアの8分音符二つでなく3連音符に変更しているのが目に留まります。異稿でもあるのでしょうか。
更に不思議なのは、やはり第1楽章のコーダ。第407小節から410小節までの僅か4小節がカットされていること。このカットが特に意味があるものとは思えず、恐らくは編集ミスでしょう。

編集ミスなら、これは「お宝CD」と言えなくもない。先のカラヤン/レスピーギでも話題にしましたが、こういうことを指摘するのがレコード評論家の役目じゃないでしょうか。メーカーのミスを指摘して消費者の注意を喚起する。難しい表現で演奏家の好き嫌いを書き殴るより先にすべき仕事があるでしょう。
ということで、演奏良し録音良しの名盤ですが、僅かながら瑕があります。

参照楽譜
オイレンブルク No.593

 

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