順当だったデルタ・ダウンズの2歳G戦

アメリカの競馬にはオフ・シーズンがありませんが、それでも1年の締めくくりとしてのシーズンはあります。2014年度のG戦シリーズもそろそろフィナーレが近付きつつあり、来週はGⅠシリーズも最終週と言えるでしょう。
その1週前、昨日は4つの競馬場でGⅢ戦ばかりが6鞍行われました。そのレポート。

先ず冬場こそシーズンに当たる南国フロリダでは、ガルフストリーム・パーク・ウエスト競馬場で2鞍。ここは去年までカルダー競馬場として知られていたコースで、今年から左記の名称に変更されたようです。で、最初はトロピカル・ターフ・ハンデキャップ Tropical Turf H (芝GⅢ、3歳上、9ハロン)。ダートコースに変更された場合のみ出走予定の馬が4頭登録していましたが、雨は降ったものの、やや水が浮くような good と発表の芝コースで行われ、最終的には9頭立て。ここ6戦全てで1・2着している堅実なルバーシュ Lubash が8対5の1番人気。
レースは4番人気(6対1)のレポーティング・スター Reporting Star が一気に飛び出し、後続に6馬身差を付ける思い切った逃げ。ルバーシュは4番手に待機し、馬場状態を確かめながらの競馬。3番手から2番手へと徐々に順位を上げた最低人気(15対1)のグランド・ティート Grand Tito が外から交わすように直線に入りましたが、一旦5番手に下がったルバーシュが外から伸びると、再び内から差し返すレポーティング・スターに半馬身差を付けて期待に応えました。1馬身半差の3着にはグランド・ティート。
クリストフ・クレメント厩舎、ブライス・ブラン騎乗のルバーシュは、これがステークス8勝目という7歳馬。G戦は去年5月にベルモントでフォート・マーシー・ステークス(芝GⅢ)に続く2勝目、ニューヨーク以外の競馬場で勝ったのはこれが初めてのことで、今回の勝利で獲得賞金は目出度く100万ドルを超えてきました。来年は8歳になりますが、元気一杯、クレメント師から未だ現役を続ける旨の発言もありました。

ガルフストリーム・パーク・ウエストのもう一鞍は、牝馬によるマイ・チャーマー・ハンデキャップ My Charmer H (芝GⅢ、3歳上牝、9ハロン)。こちらもダート変更時のみ出走予定の2頭が取り消して10頭立て。去年のマイ・チャーマーで2着した6歳馬アンジェリカ・ザパタ Angelica Zapata が3対1の1番人気。
強力な逃げ馬で4番人気(9対2)のデアリング・キャシー Daring Kathy が予想通り逃げ、アンジェリカ・ザパタはマークするように2番手追走。しかし本命馬は馬場が合わなかったのか追っても伸びず、デアリング・キャシーが堂々の逃げ切り勝ち。後方から追い込んだ2番人気(7対2)のクッション Cushion がゴール寸前で1馬身4分の1差の2着に入り、前半4番手から本命馬に代わって逃げ馬を追いかけた7番人気(15対1)のリルボーン・イライザ Lilbourne Eliza がハナ差交わされて3着。アンジェリカ・ザパタは5着敗退。
デヴィッド・ホークス厩舎、アブディール・ジャン騎乗のデアリング・キャシーは、サラトガのレーク・ジョージ・ステークス(芝GⅡ)で3着したこともある3歳馬で、前走はここガルフストリーム・パーク・ウエストの一般ステークスを逃げ切っての参戦。芝コースでは7戦5勝、通算でも9戦6勝となる成長株で、これがG戦初勝利です。

次にチャーチル・ダウンズ競馬場のカーディナル・ハンデキャップ Cardinal H (芝GⅢ、3歳上牝、9ハロン)に行きましょう。去年は11月9日に行われましたから、2週間ほど後にずれての開催です。good の馬場にフル・ゲート14頭を上回る16頭が登録していましたが、結局2頭が取り消し、補欠の2頭が救われた形での14頭立て。GⅢに2勝し、チャーチル・ダウンズでは4勝しているコース得意のアイム・オールレディー・セクシー I’m Already Sexy が8対5の1番人気。
そのアイム・オールレディー・セクシーが1番枠発走を利して直ぐ先頭、直線入口まで逃げましたが、4番手から徐々に進出した5番人気(12対1)のストライク・チャーマー Strike Charmer が本命馬を捉えると、前半2番手で粘る8番人気(19対1)のパパスキャット Pappascat に2馬身差を付ける逆転劇。1馬身4分の1差3着にも11番人気(55対1)のアントニア・オータム Antonia Autumn が入る波乱で、アイム・オールレディー・セクシーは4着に終わりました。
デヴィッド・キャロル厩舎、クリス・ランデロス騎乗のストライク・チャーマーは、これがステークス初勝利の4歳馬。前走(9月13日)ケンタッキー・ダウンズの一般ステークス(レディース・ターフ・ステークス)ではアイム・オールレディー・セクシーの2着でしたが、着差は3馬身ありました。前回から70日の間隔を空けたことが好走に繋がったようです。キャロル師にとっては2010年以来となる久々のG戦勝利、辛抱の末での復活劇でした。

続いてデルタ・ダウンズ競馬場。この競馬場で行われるG戦は2鞍のみで、この日がそのハレの一日でもあります。最初はデルタ・ダウンズ・プリンセス・ステークス Delta Downs Princess S (GⅢ、2歳牝、8ハロン)。馬場は fast 。予備登録していた2頭が取り消し、フルゲートの10頭立て。何とブリーダーズ・カップ・ジュヴェナイル・フィリーズ(GⅠ)を最低人気(60対1)で制したテイク・チャージ・ブランディ Take Charge Brandi が出走し、ここでは2対1の1番人気に支持されていました。BCがフロックでは無かったことを証明すべく参戦に踏み切ったのでしょうか。
レースは5対1のヴィヴィアン・ダ・ブリング Vivian Da Bling が逃げ、テイク・チャージ・ブランディは2番手追走。第4コーナー手前でスパートした本命馬、3番手を追走していた7対1のスキパリュート Skipalute に1馬身半差を付ける貫録勝ち、BCが決してフロックでは無かったことを見せ付けています。更に1馬身差で5対1のマジェスティック・プレゼンス Majestic Presence が3着に入り、順当。
ウェイン・ルーカス厩舎、今回はパコ・ロペス騎乗(BCではヴィクター・エスピノザ)のテイク・チャージ・ブランディは、これでG戦に2連勝、チャンピオン2歳牝馬に選ばれる条件を整えた形です。

もう一鞍が牡馬のためのデルタ・ダウンズ・ジャックポット・ステークス Delta Downs Jackpot S (GⅢ、2歳、8.5ハロン)。時期は未だ早いもののダービー出走権を掛けたポイント対象で、こちらもフルゲートを超える12頭の登録がありました。結局は予備登録2頭が除外されての10頭立て。こちらにもルーカス厩舎がBCジュヴェナイル5着のミスター・ズィー Mr. Z (3対1)を参戦させてきましたが、それを抑えて5対2の1番人気に支持されたのは、ここまで2戦2勝のオチョ・オチョ・オチョ Ocho Ocho Ocho 、2頭の一騎打ちムードでした。
レースは9対1のコンケスト・ツナミ Conquest Tsunami が逃げ、ミスター・ズィーが2番手の外、オチョ・オチョ・オチョは4番手の内。直線に入ると人気の2頭が抜け出し、内に本命、外に対抗の正に一騎打ち。最後はオチョ・オチョ・オチョがハナ差ミスター・ズィーを抑えて人気通りで決着しました。4馬身差で23対1の伏兵ファー・ライト Far Right が3着。3着馬に乗ったラヌリー騎手から勝馬に対し進路妨害の異議申し立てがありましたが、審議の結果入線通りで確定しています。
ジェームス・キャシディー厩舎、マイク・スミス騎乗のオチョ・オチョ・オチョは、10月11日にサンタ・アニタでデビュー勝ち、BC当日の前座戦ジュヴェナイル・ターフ・スプリント(リステッド・ステークス)にも勝って、ここが試金石でした。1マイルも克服し、無傷の3戦3勝。ここで得たダービーへ10ポイントに更に上積して来年のクラシックを目指します。

最後はカリフォルニアのデル・マー競馬場からレッド・カーペット・ハンデキャップ Red Carpet H (芝GⅢ、3歳上牝、11ハロン)。ハリウッド競馬場時代にビヴァリー・ヒルズ・ハンデ Beverley Hills H (芝GⅢ、10ハロン)として6月に行われていたレースを改名したものだそうです。因みに去年は施行されていません。ここも限度枠を超える登録がありましたが、2頭が発走除外となっての11頭立て。南カリフォルニアには初登場ながら、前走キーンランドのリステッド・ステークスで3着して来たアピーリング・キャット Appealing Cat が5対2の1番人気。
レースは長距離、スタンド前を一度通過し、コーナーを4回廻るとあってペースはスロー、先ずは7番人気(29対1)のルーシャス・ロンナ Luscious Lonna がレースを引っ張ります。向正面では替って4番人気(10対1)のビー・ブレイヴ Bee Brave が先頭を奪いましたが、終始4~5番手を追走していた7番人気(29対1)のスリー・ハーツ Three Hearts が抜け出すと、混戦の2着争いに半馬身差を付けて優勝。首差で6番人気(13対1)のレディー・オブ・ゴールド Lady of Gold が2着に入り、3着の2番人気(7対2)レディー・ピンパーネル Lady Pimpernel もハナ差という大接戦でした。人気のアピーリング・キャットは、中団のまま伸びを欠いて6着敗退。
勝ったスリー・ハーツは、前走までリック・メッティ―厩舎に所属していた4歳馬で、これがネイル・ドライスデール厩舎に転じての初戦、ジョセフ・タラモが騎乗していました。去年3歳時にはヴァージニア・オークス(芝GⅢ)で3着していましたが、その後ほぼ1年間の休養を取り、今年7月に復帰。前走サラトガのアローワンス戦(芝の9ハロン)は4着でしたが、今回はブリンカーを外し、復帰後4戦目でのステークス、G戦共に初勝利となりました。日本産種牡馬ハットトック産駒であることも付け加えておきましょう。

 

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