今日の1枚(213)

デッカ音源をEMIが「20世紀の偉大な指揮者たち」シリーズに纏めた2枚目を聴きましょう。
アンセルメは晩年に二度来日しました。一度はN響の客演、もう一回はスイス・ロマンド管との来日公演でした。私はどちらもナマでは聴きませんでしたが、テレビで観戦。N響はまだしも、スイス・ロマンドには失望した記憶があります。
ブラームスの第4や幻想交響曲、得意のドビュッシー、ラヴェル、ストラヴィンスキーなどを振りましたが、日本武道館でも公演があったと記憶します。レコードで聴いた華やかな音色の印象が強かったせいか、ロマンド管はお世辞にも一流とは言いかねるオケ。録音によるマジックに騙されたような気持ちを持ったのでした。

それでもデッカの技術陣がジュネーヴで捉えた名録音は色褪せることなく、リマスタリングされた音源は現在でも立派に通用するでしょう。オリジナル・マスターの状態は不明ですが、いつかはハイ・レゾリューションで配信されることに期待しましょう。
ということで、2枚目は、

①バルトーク/管弦楽のための協奏曲
②ラフマニノフ/交響詩「死の島」
③ラヴェル/ラ・ヴァルス
④シャブリエ/歌劇「いやいやながらの王様」~ポーランドの祭

①と④がスイス・ロマンド管弦楽団、②と③はパリ音楽院管弦楽団。③はモノラルですが、他はステレオという構成です。
①は1956年11月11、12、15日にジュネーヴのヴィクトリア・ホールで録音されたもの。この作品では最も早くステレオ抄録されたものの一つでしょう。
演奏は最近のモノに比べればおっとりしていて、スイス・ロマンドには荷が重かったのではと想像されます。最終楽章の終結部、615小節のシンバルが聴き取れませんが、もしかすると本当に鳴らしていないのかも知れません。

②もステレオですが、1954年9月23日から26日まで、パリのサル・ド・ラ・ミュチュアリテで収録されたことになっています。この時点にパリでステレオ録音が行われたこと自体が驚きですが、流石に音質の古さは隠せません。私は今回の配信で初めて聴きました。
しかしWERMによれば初出はモノラルで、デッカのLP LXT 5003 、デュカスのバレエ音楽「ラ・ペリ」とのカップリングでした。

③はアンセルメには2種類の録音があり、何れもスイス・ロマンド管を指揮したもの。ここではモノラルの旧録音が採用されています。11953年6月、②と同じサル・ド・ラ・ミュチュアリテでの録音で、1年後にはステレオ方式が導入されていますから、文字通りモノラル末期の収録となります。
英国で最初に発売されたのはSP盤で、K 1867/8 の2枚組4面。LPが開発されると直ぐに LXT 2896 、ムソルグスキーの「展覧会の絵」組曲とのカップリングで再発売されています。

④は他に比べて遥かに新しく、1964年12月7、8、10日のヴィクトリア・ホールでの録音。この時に同じシャブリエのスペイン、楽しい行進曲、田園組曲も録音され、1枚のLPで発売されたのは記憶に新しい(?)所ですね。
アンセルメは独自の総譜を使うことがあったようで、この曲の場合もそれに当て嵌まりそう。エノック社から出版されているスコアと比べると、練習記号C直前小節の3拍目に置かれているティンパニの一撃、同じくDの12・14・16小節のトライアングル、同じ楽節が反復されるQの5・7・9小節のトライアングルは演奏していません。

参照楽譜
①ブージー&ホークス No.79
②インターナショナル・ミュージック No.619
③デュラン 10.080
④エノック 1835

 

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