今日の1枚(214)

「20世紀の偉大な指揮者たち」シリーズの配信、10人目に当たるのがカール・ベームです。ベームについては改めて紹介するまでもないでしょう、晩年にはウィーン・フィルと何度も来日し、演奏後に熱狂したファンが舞台下に詰め掛ける様子はNHKで放送されましたっけ。
個人的な感想を言わせて貰えれば、私がベームに感銘を受けたのはドイツ・オペラと初来日した時で、その時のフィガロやフィデリオは勿論でしたが、特別公演で指揮したベートーヴェンの第9に圧倒されたものです。この演奏で初めて第9が凄いと思い、音楽も良く判ったような気がしたものでした。
しかし年を経るにつれベームの音楽はテンポが遅くなる傾向にあり、正直な所、晩年の巨匠には付いて行けないまだるっこしさを覚えたのも事実。世間の(日本での)評価が高くなるのとは反比例に遠ざかって行った指揮者でもあります。従ってCDを含め録音は余り所有しておらず、細かいことは判りません。

ベームの録音はEMIの他、デッカ、フィリップスにもありましたが。何と言っても晩年はDGに大量の記録を残しました。この大指揮者を2枚に収めるのは無理がありますが、当シリーズでは4曲の録音を収めて敬意を表しています。最初の1枚は、

①モーツァルト/歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」序曲
②ブルックナー/交響曲第8番(1890年稿、ノヴァーク版)

①はフィルハーモニア管弦楽団とEMIに残したオペラ全曲盤から序曲だけを取ったもので、1962年9月、ロンドンのキングスウェイ・ホールでのスタジオ録音。もちろんステレオで、プロデューサーは Walter Legge 、エンジニアが Douglas Larter という黄金コンビ。シュワルツコプフとルードヴィッヒを主役に抜擢し、当時のザルツブルク音楽祭などでは毎年繰り返して演奏された大ヒット・プロダクションでもありました。
この全曲盤は既にNMLでも配信されており、何時でも何処でも聴けるのには時代の流れを感じてしまいますね。LPやCDを回転させることから生じる劣化無く聴ける技術の進歩にも感謝。

この配信だけは何故か録音年月日が明記されており、②は西ドイツ放送交響楽団 West German Radio Symphony Orchestra との演奏で、1974年9月27日、ケルンのビスマルク・ホール Bismarck Hall での収録とあります。これもステレオで、聴衆が入っているようにも感じられますが、拍手などはありません。あるいは放送用の音源でしょうか、一般のCDでは未発売だと思います。
ドイツ放送オーケストラは表記などが度々変わっており同定するのが難しいのですが、所謂ケルン放送交響楽団 WDR Sinfonieorchester Koln のことでしょうか。だとすれば1947年設立、若杉弘も1977年から1983年まで首席指揮者を務めていました。その後はベルティーニ、フォンク、ビチュコフなどがポストに就き、現在はサラステでしょうか。

配信(オリジナルCDの表記)ではノヴァーク版となっていますが、第1楽章のホルン(第101小節)や第4楽章のヴァイオリンのピチカート(579~582小節にかけて)はハース版による演奏。他の指揮者も良く行う変更で、正しくはハース版とノヴァーク版の混合と言うべきでしょう。
この頃のベームは未だ気合十分、前へ前へと進む推進力が聴き手を少しも退屈させません。

参照楽譜
①オイレンブルク No.920
②音楽の友 OGT 208(ノヴァーク版)、ブライトコプフ Nr.3622(ハース版)

 

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