今日の1枚(216)

NMLの「20世紀の偉大な指揮者たち」シリーズの配信では、指揮者のファースト・ネームをカタカナ順に並べているようで、「カール」ベームの次はサー・トーマス・ビーチャム。「サー」も含めて並べているところにチョッと可笑しみも感じてしまいました。
そのビーチャムも大変に録音の多い人で、2枚に集約するのは若干無理があるでしょう。父の莫大な資金援助によって31歳の時に自身のオーケストラを設立したのを皮切りに、ロンドン・フィル、ロイヤル・フィルなどを創設したことでも有名。また「知られざる佳曲」を発見する名人で、ビーチャムによって世に知られるようになった今日的名曲は枚挙に暇がありません。

ということでビーチャムの1枚目は次のラインナップ。

①ロッシーニ/歌劇「ウイリアム・テル」序曲
②ドヴォルザーク/伝説曲~第2曲
③ワーグナー/楽劇「ラインの黄金」~神々のワルハラへの入城
④モーツァルト/ディヴェルティメント第15番K287~第2、3楽章
⑤ディーリアス/アパラチア
⑥ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲

全てビーチャムが創設したオーケストラとの共演で、①②⑤⑥がロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、③と④はロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団との録音です。録音日付などの詳しいデータは判りません。
全てがモノラル録音で、一部ライヴ音源も含まれます。中には録音が古いために正規のスタジオ録音なのかライヴなのか、聴いただけでは不明なものもありました。

①は恐らく英コロンビアから LX 339/40 のSP2枚4面で出ていたSP盤の復刻でしょう。この録音は様々なカタログで再発されていて、戦前の人気録音であったことが窺えます。

ドヴォルザークの伝説曲は10曲の小品から成る組曲ですが、この音源は不明。WERMには第3曲ト短調のみがビーチャム盤として掲載されていますが、この配信は第2曲。聴いてみると間違いなく第2曲ト長調が演奏されています。
第2曲がWERM掲載のSP盤とは全く別の音源なのか、単純にWERMの記載が間違っているのかは不明。

③はオイレンブルク版スコアの684ページ、ドンナーの雷が落ちて音楽が4分の3拍子に変わるところから最後までがノーカットで演奏されています。当然歌のパートも全て歌われており、配役は、
Edith Furmedge (ソプラノ)、マーガレット・フィールド=ハイド(ソプラノ)、シルヴィア・パトリス(コントラルト)、Gwladys Garside (メゾ・ソプラノ)、ジョージ・チッティ(テノール)、ウォルター・ウィドップ(テノール)、テオ・ヘルマン(バリトン)とのみ表記。英国の歌手らしく、誰がどの配役かまでは判りません。
WERMにも記載が無いこと、音が古くて良く聴き取れませんが、どうやらライヴの様でもあり、極めて珍しい音源と言えそうです。3人のラインの乙女は遠方で歌っていることが判ります。

④も注釈が必要で、NMLというかEMIの表記では「ディヴェルティメント第10番へ長調K247の抜粋」とありますが、実際には上記の様にK287の第2楽章と第3楽章が収録されています。
WERMには同じロイヤル・フィルとの第3楽章メヌエットのみというSP盤が掲載されていますが、第2楽章は別の音源でしょうか。若干音質が異なるようで、どうやら別の録音を一つに集約したもののようです。
第2楽章「主題と変奏」は主題部のみ繰り返しを行い、変奏部は全て省略。しかも第2変奏の第1ヴァイオリン・パートはテュッティではなくソロに変更し、第5変奏をカットしています。またメヌエットでも、所々バスのパートをピチカートに代えているのが如何にもビーチャム風。この楽章は通常に繰り返しを実行しています。

⑤はライヴ録音の様に聴こえますが、恐らくイギリスのディーリアス・ソサエティーから発売された協会盤第3集に含まれていたもの。SP時代には出しても売れないようなレパートリー、高価で採算が取り難いレパートリーについては協会方式で発売するケースがありました。ディーリアス協会、ヴォルフ協会の他にもベートーヴェン・ソナタ協会(シュナーベルによる全集)等と言うのもありましたっけ。
曲の最後に混声合唱が「アパラチア」を歌いますが、合唱はコヴェント・ガーデン王立歌劇場合唱団。また合唱の中で歌うバリトン・ソロは Cuthbert Matthews とクレジットされています。

⑥は最後に拍手も入っている紛れもないライヴ録音。聴いてビックリの痛快な演奏で、ビーチャムがこんなに燃える指揮者だったことは初めて知りました。ビーチャム・ファンでなくとも是非聴いて貰いたい名演奏。

参照楽譜
①オイレンブルク No.616
②ヘフリッヒ No.357
③オイレンブルク No.907(楽劇全曲版)
④オイレンブルク No.73
⑤ブージー&ホークス No.41
⑥オイレンブルク No.915(歌劇全曲版)

 

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