今日の1枚(230)

20世紀の偉大な指揮者たち、と言っても今回は19世紀末から活躍していたブルーノ・ワルター登場。SP時代からステレオ初期まで録音を残した巨匠で、最初の1枚は①はウィーン・フィル、②はニューヨーク・フィルとの何れもモノラル録音です。

①ベートーヴェン/交響曲第6番
②ブラームス/交響曲第2番

ワルターに付いては特別に記す必要もないでしょうが、若干触れておくと、1875年にベルリンで産まれたドイツの指揮者で、ピアノも巧く、そのレコードも残っています。ワルターは本名じゃなく、シュレジンガーというのが本来の苗字。
ケルン、ハンブルク、リガ、ベルリン、ウィーン、ミュンヘンと歌劇場の指揮者を歴任し、ハンブルクとウィーンではマーラーの助手や同僚で、その大地の歌と第9交響曲を初演したことは余りにも有名でしょう。もちろんオーケストラの指揮者としても重要で、世界中のオケを振っています。
1938年にナチから逃れるためにパリに移住、その後アメリカに渡ってメトロポリタン歌劇場やニューヨーク・フィルを指揮。一旦は引退しましたが、ステレオ録音が開発されたことで乞われて指揮台に復帰、人類の遺産とも言うべき数多くのステレオ盤を残しました。

EMIが2枚組のシリーズに選んだのは全てSP、モノラル時代の録音で、特にSP期にはEMIに多くの作品を残しています。
①はそうしたSP期の代表盤で、戦前のクラシック・ファンにとっては永遠の名演として愛聴されてきた演奏。1936年12月5日にウィーンのムジークフェライン・ザールで収録されたもので、初出は英コロンビアの DB 3051/5 のSP5枚10面でした。
第1楽章の繰り返しを省略し、同楽章は2面に収まっています。尤もLP時代のフィラデルフィア管、ステレオ時代のコロンビア響との録音でも第1楽章の繰り返しは行っていませんでしたから、これはワルターのスタイルなのでしょう。
第3楽章の繰り返しは実行してベートーヴェンの5部形式を実践。また第4楽章では僅かに53小節と54小節にティンパニを加筆しています。そのティンパニ、137小節と139小節では真ん中を膨らませるようにクレッシェンドとディミニュエンドを交替させているのが特徴でしょう。また第5楽章のコーダ、255小節のトロンボーンを1小節前倒しして他の楽器に合せているように聴こえますがどうでしょうか?

②はワルターのアメリカ時代、モノラル後期の録音で新開発のLPによるブラームス全集の一環として収録されたもの。1953年12月28日から30日までの3日間、ニューヨークのカーネギー・ホールで録音されています。
イギリスでの初出は英フィリップスのLPで、ABL 3095 という品番、ハイドンの主題による変奏曲とのカップリングでした。
良く指摘されますが、戦後のワルターはヨーロッパ時代の温厚さからは決別し、かなり激しく感情を露わにする演奏に変わっており、このブラームスもテンポが速く、特に終楽章にはオケを煽る様な傾向が聴き取れます。当時の習慣として第1楽章の繰り返しは省略。

参照楽譜
①フィルハーモニア No.3
②フィルハーモニア No.131

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください