今日の1枚(235)

シェルヘンの2枚目は、恰も一夜のコンサートの様な選曲になっています。しかしこのプログラムは如何にもシェルヘンには相応しくないでしょうね。その辺は後で・・・。

①レズニチェック/歌劇「ドンナ・ディアナ」序曲
②ハイドン/交響曲第100番「軍隊」
③ブラームス/交響曲第1番

①と②がステレオ、③のみがモノラル録音で、恐らく全てウェストミンスター音源と思われます。共演しているオーケストラの表記は全て異なっていて、①は Vienna Opera Ball Orchestra との1957年録音、②がウィーン交響楽団との1958年、③はウィーン国立歌劇場管弦楽団で、こちらは1952年と当音源に表記されています。

①は最近ではほとんど演奏されなくなり、新録音もほとんど無い作品。私が子供の頃にはラジオのAMでアメリカ進駐軍向けの放送があって、Far East Network の頭文字「FEN」と呼ばれていました。些か古い話で恐縮ですが、クラシック番組に飢えていた私はこれもチェック、確か夜にクラシック番組があったと記憶します。
この番組のタイトル音楽が、今思い返せばレズニチェックのドンナ・ディアナ序曲でした。当時は曲名が判らずあれこれ探しましたが、結局は「発見」し、小躍りしたことを思い出しました。因みにFENではミトロプーロス指揮のニューヨーク・フィルでエレクトラ全曲などを初めて聴いたものでした。
シェルヘン盤とは関係の無い方向に連想が働いてしまいましたが、オリジナルの音源がどのような形で提供されていたものかについては調べが付きません。

②は別資料によれば、1958年7月にウィーン・コンツェルトハウスのモーツァルトザールで録音されたものの由。シェルヘンには軍隊交響曲の録音が2種類あって、今回配信されているのは後にステレオでリメイクされたものです。
シェルヘンはハイドンを大変重要視しており、ウェストミンスターにはザロモン・セット全曲の他にいくつもの交響曲、管弦楽曲、協奏曲を録音していました。その交響曲ばかりを集めたセット物がドイツ・グラモフォンからCD化されており(軍隊のステレオ録音は入っていません)、そのブックレットには面白い事実が記載されています。
これによると、シェルヘンが1964年11月2日にフィラデルフィア管弦楽団に客演した時にはプログラムの前半にマーラーの第5交響曲が置かれ、後半がハイドンの交響曲第49番だったのだそうな。普通の指揮者には考えられないような拘りでしょう。

ステレオ盤の軍隊は、木管楽器が向かって左側に纏められ、金管が右から聴こえます。また第2楽章のトランペット信号は、右から左に移動して行く様な捉え方で、シェルヘンの独特な解釈を聴くことが出来ます。恐らくこれとカップリングされていたと思われるハイドンの告別交響曲では、最後に楽員一人一人が“Aufwiedersehen”(さようなら)と声を掛けながら去って行く録音演出となっており、コレクターにとってはかなりのレアものでしょう。
この交響曲は反復記号があまり出てきませんが、シェルヘンは第1楽章提示部のみ省略。ということは第3楽章と第4楽章第1主題部の反復は全て実行していることになります。

③は1952年10月、やはりウィーン・コンツェルトハウスのモーツァルトザールでの録音だそうです。WERMの記載では、初出は英ニクサのLPで、WLP 5189 、交響曲1曲のみの盤でした。
演奏は第4楽章の第1主題が提示されるまでは極く普通の演奏。しかし主題が ff で強奏される所からテンポが急速に上がり、その後は速まることはあってもギア・ダウンすることは一切なく、序奏部の再現もインテンポのまま。コーダに入ると更に加速し、ファンファーレもお構いなく最後まで突っ走る、恐らく最も速い第4楽章だと思われます。
シェルヘン・ファンには堪らない解釈でしょうが、一般的には珍盤奇演に類するものでしょうか。

参照楽譜
①フィルハーモニア No.159
②オイレンブルク No.434
③フィルハーモニア No.130

 

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