英国競馬1965(6)

1965年のクラシックは全て紹介しましたが、このシリーズの最後にその他の大きなレース、重要な馬たちを落穂拾い的に見ていきましょう。

古馬のクラシック距離では、先ずエプサムのコロネーション・カップ。前年のセントレジャー馬インディアナ Indiana が出走してきましたが、去年の出来には無く6着に敗退。その後日本で種牡馬になったことは去年の回顧で紹介した通りです。
コロネーション・カップはオンシディウム Oncidium がソデリニ Soderini を1馬身半破って優勝しましたが、この2頭はキング・ジョージではダービー2着の3歳馬メドウ・コート Meadow Court の敵ではありませんでした。

メドウ・コートのダービー、セントレジャーについては既に詳しく紹介しました。アイルランドでパトリック・ブレンダーガスト師が調教した同馬は、二つのクラシックの間に愛ダービーとキングジョージに連勝。またセントレジャーの後は凱旋門賞に挑戦して9着に終わりました。何れも英国の至宝レスター・ピゴットとのコンビです。
メドウ・コートは最初の名前をハーウェル・フール Harwell Fool と言いましたが、後に改名。またオーナーのグループに有名なビング・クロスビーが加わったことでも知られています。彼とキング・エドワード7世ステークスに勝ったコンヴァモア Convamore の活躍で父のコート・ハーウェル Court Harwell がこの年のリーディング・サイヤーに輝きましたが、父は初産駒がデビューする前にアルゼンチンに輸出された後、生産者が歯ぎしりして悔しがったのは勿論のことです。

7月初めにサンダウン競馬場で行われたエクリプス・ステークスは、エリザベス女王の馬ケーニス・ベイ Canis Bay が20対1の大穴で制して競馬ファンを驚かせます。エクリプスに王室の馬が勝ったのは1900年のダイアモンド・ジュビリー Diamond Jubilee 以来のこと。このダイヤモンド・ジュビリーは三冠馬ですが、気性が極めて悪かったことでも有名。
英語では Evil-Tempered と表現されますが、走るか走らないかは馬の気分次第。先週日本でもゴールドシップがあり得ないような凡走をして話題になりましたが、彼もまた Evil-Tempered (邪悪な)の1頭と言えそうですね。
この年女王はアプレンティス Apprentice でグッドウッド・カップも勝っており、オーナー・ランキングも6位。王室にとっては良いシーズンだったと言えそうです。

牝馬では、クラシックに出走しなかったオーント・エディス Aunt Edith にも触れておかなければなりません。2歳時は2戦して未勝利、3歳時にも走ったのは僅か3戦でしたが、ミュジドラ・ステークスで2着(これは紹介しました)し、ナッソー・ステークスで初勝利を挙げます。そして秋、フランスでヴェルメイユ賞に勝つという快挙を成し遂げます。このレースは英オークス馬ロング・ルックなど4頭のオークス馬が揃っていたのですが、それらを全て蹴散らしての勝利でした。
オーント・エディスは4歳になってキングジョージにも勝ち、このレースを制した最初の牝馬となります。彼女の父はプリメラ Primera 、この馬も産駒が活躍した時には既に日本に売られていて、その意味ではコート・ハーウェルと良く似た事情でしょう。

マイル部門は、半世紀前は現在ほど重要視されてはいませんでしたが、サセックス・ステークスはアイルランドのプレンダーガスト厩舎のカールモン Carlemont が優勝。秋のクィーン・エリザベスⅡ世ステークスもカールモンが有力と見做されていましたが、1965年に猛威を振るったインフルエンザの犠牲となり、デリング=ドゥー Derring-Do が勝ちます。

また短距離部門のキングズ・スタンド・ステークスは英国北部で調教されているゴールドヒル Goldhill が優勝。この馬は引退してからは障害馬の父として名前を残すことになります。

最後に日本のことにも少し触れておきましょう。
1965年は英国と同じく馬のインフルエンザが流行ったり、八百長事件が社会面の話題になるなど、余り明るいニュースはありませんでした。
そんな中で前年の三冠馬シンザンが秋に天皇賞と有馬記念に勝ち、日本史上初の5冠馬誕生という話題に沸きます。当時は天皇賞は一度勝つとその後の出走権が無く、シンザンの優勝で初めて「5冠馬」という呼称が生まれたと思います。

クラシックではキーストンとダイコーターがライヴァルとして覇を競い、ソロナウェー Solonaway がハツユキ、ベロナ、キーストンと別の馬でクラシック3冠を奪取したのもこの年でした。

 

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