今日の1枚(241)

バランスを考えて今日は声楽を聴こうかと考えていましたが、今朝の新着ラインナップを見て気が変わりました。ルネ・レイポヴィッツ指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のベートーヴェン交響曲全集を聴きましょう。

レイポヴィッツと言っても若いファンはピンと来ないかもしれませんが、我々のロートル世代には作曲で理論家、教育者としても高名な指揮者で、ピエール・ブーレーズの先生だったということでマニアの間で知られていた人。彼のベートーヴェン全集があることはもちろん知ってしましたが、長い間忘却の彼方にあったものを突然思い出しました。
そこで早速ネットして情報を集めると、当全集はリーダーズ・ダイジェストが制作した所謂出版社系のレコードで、当時一般のレコード屋さんの店頭には並んでいなかったものでしょう。今日配信されたのは、ウラニア・レコーズ Urania Records というレーベルからのもの。

ウラニアと言うと旧ソ連系のLPで知られていましたが、NMLの紹介によるとそれとは全く別で、1999年に創業したイタリアの歴史的録音レーベルだそうです。今日現在では100点ほどが配信されていますが、カタログを見るとRCA、CBS、DECCA、DG、EMIなどの古い録音、版権が切れたものをCD化しているようですね。同じく今日の配信の中にはカラヤンがニューヨーク・フィルを振ったライヴ・シリーズもありますから(これも食欲そそりますねェ~)、放送録音などもリリースしている模様。
私はCDコレクターじゃないので今まで知りませんでしたが、この録音はチェスキー Chesky というレーベルからもCD化されていて、何とそれも既にNMLで配信済みでした。従って同じものが二通りのCDで聴けることになります。

ウラニア配信はCD5枚組という構成で、1枚目は第1と第3、2枚目が第2と第7にエグモント序曲、3枚目は第4と第5にレオノーレ序曲第3、4枚目に第6と第8、最後の5枚目が第9というラインナップ。第9のソリストは順にインゲ・ボルク、ルート・ジーヴェルト、リチャード・ルイス、ルートヴィヒ・ウェーバーで、合唱はビーチャム・コーラル・ソサエティーと表記されています。
交響曲は全て1961年4月から6月の録音で、二つの序曲のみは1962年となっています。HMVのオンライン・ショッピング・サイトの解説では、交響曲はロンドンのウォルサムストウ・タウンホールでの収録。リーダース・ダイジェストはしっかりしたポリシーでLP制作を心掛けたそうで、本録音もプロデューサーはRCAのチャールズ・ゲルハルト、エンジニアはDECCAのケネス・ウィルキンソンが担当した由。この案内文を読んだだけで期待が高まりますね。

ということですが、これを書いているのは最初の2枚を試聴し終えた段階です。5枚のCDを一気に聴くのは小生には無理で、2枚だけでの感想となりました。
驚かされるのは、先ず録音が良いこと。特に最初は第1番で始まりますが、恐らくこれは全集の最後に録音されたものでしょう、最新のデジタル収録に比べても遜色ない印象です。2番も同じ水準で、恐らくオリジナルのLPは1番と2番の組み合わせだったと思われます。
これに比べると第3と第7はやや新鮮味が落ち、印象としては若干古さも感じさせますが、それでも録音年代を考えれば優秀録音盤と評価して良いでしょうね。ただしエグモント序曲は音質も荒く、キチンとエンジニアリングされていない印象。恐らくこれは全集とは無関係の収録で、ゲルハルト/ウィルキンソンのコンビではないのかも知れません。

ティンパニを中央に金管はホルンが左、トランペットは右に位置し、ときおり強奏するのが独特で、この辺りがレイポヴィッツの現代的解釈と言えそう。ただしトランペットの加筆(第3)などは当時の伝統的スタイルで、現在の原典版嗜好とは一線を画すもの。
繰り返しもほぼ当時の巨匠たちの伝統的スタイルで、何が何でも譜面通りという杓子定規なモノでもありません。
それでもこの演奏(2枚聴いただけですが)には独特の新しさが感じられるのが魅力。録音も多少のバラつきはありますが、指揮者の気配が強く感じられるもので、エロイカの第2楽章後半などはレイポヴィッツの唸り声も収録されています。恐らくLPの印象より遥かに高音質で配信されているのでしょう。

NML配信の新着アルバムは原則として土日はお休み。全集の残りはゆっくり週末に楽しむとして、このカテゴーリーの次回は週明けになる予定です。

 

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