今年最初の1日G戦9鞍
2月に入ると、早くもアメリカは競馬シーズンが本格的にスタートしたような感じにさせられます。昨日は3つの競馬場でG戦9鞍、GⅠレースも二鞍組まれ、カリフォルニアでは2強対決でファン心理を煽っていました。
9鞍もあると流石に追い立てられるような気がして来ます。早速先日の大雪が残るニューヨーク州アケダクト競馬場から始めましょう。ニューヨークのG戦は1月初め以来ほぼ1か月ぶりです。
先ずは短距離戦のトボガン・ステークス Toboggan S (GⅢ、4歳上、6ハロン)。去年は3歳上という条件でしたが、この時期に3歳馬が古馬と対戦するわけもなく、常識的に4歳上と改められました。コースの雪は片付けられましたが、馬場は却って走り易い fast 、1頭が取り消して5頭が出走してきました。既にGⅢを2勝しているサリュートス・アミーゴス Salutos Amigos が3対5の断然ム1番人気。
レースは相手と目される2番人気(9対5)のダッズ・キャップス Dads Caps が好スタートから後続を離しての逃げ切り策。大きなリードを保ったまま直線に入りましたが、第4コーナーでも未だ4番手だったサリュートス・アミーゴスが直線で外から一気に差を詰めると、ゴールではダッズ・キャップスを1馬身4分の3差捉えて人気に応えました。7馬身半差の3着争いには残り3頭がほぼ一戦で流れ込み、頭差で最低人気(42対1)のクラフティー・ドリーマー Crafty Dreamer が先着しました。
勝馬のオーナーの一人でもあるデヴィッド・ジャコブソン厩舎、イラッド・オルティス騎乗のサリュートス・アミーゴスは、これでステークス3連勝。最近5戦でも4勝と言う堅実ぶりです。10月25日にはベルモントのボールド・ルーラー・ハンデ(GⅢ)に勝ち、続くBCスプリント(GⅠ)こそ7着に終わりましたが、11月27日にはアケダクトでフォール・ハイウエイト・ハンデ(GⅢ)、12月26日にも同じアケダクトでグレーヴセンド・ハンデ(かつてGⅢだったこともある一般ステークス)と連勝してきた5歳せん馬です。
アケダクトのもう一鞍はウィザーズ・ステークス Withers S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)。1月のジェローム・ステークス(GⅢ)に続くウッド・メモリアル(GⅠ)へ向けての3冠第2弾で(第3弾は3月初めのガッサム・ステークス)、やがてはケンタッキー・ダービーにまで繋がる一戦、ダービーヘの10ポイント対象でもあります。1頭が取り消して6頭立て。第1弾のジェローム・ステークスの勝馬で、現時点で21ポイントを獲得してトップに立っているエル・カビア El Kabeir が1対2の圧倒的な1番人気。
レースはスタートで3番人気(6対1)のファー・フロム・オーヴァー Far From Over が躓いて大きく出遅れるハプニング。1番枠から出た2番人気(7対2)のクラッシー・クラス Classy Class と大外7番枠発走の本命エル・カビアがハナを争う展開。内のクラッシー・クラスが僅かにリードし、外のエル・カビアと並んだまま直線。2頭の叩き合いが続く中、前半大きく遅れていたファー・フロム・オーヴァーが内ラチ沿いに一気に脚を延ばし、2頭の外に持ち出すと遂に前を捉え、競り合いを制したエル・カビアに1馬身4分の3差を付ける正に逆転劇。1馬身差でクラッシー・クラスが3着に粘りました。
トッド・プレッチャー厩舎、マヌエル・フランコ騎乗のファー・フロム・オーヴァーは、去年12月12日にアケダクトでハナ差ながら新馬勝ちしたばかりの馬。これで2戦2勝、もちろんG戦は初勝利で、ダービーへの10ポイントを獲得しました。本命で敗れたエル・カビアは4ポイントを加算、それでも合計25ポイントは現在のトップであることに変わりはありません。
一方の南国フロリダ州のガルフストリーム・パーク競馬場は、3月末のフロリダ・ダービーに向けて今がシーズン真っ只中。この日はGⅠ2鞍を含めてステークス6連発、内4鞍がG戦という盛り上がりでした。残念ながら去年まではGⅢにランクされていたガルフストリーム・パーク・スプリント・チャンピオンシップ・ステークスはノン・グレードに降格されています。
G戦のトップバッターは、古馬牝馬の芝戦スワニー・リヴァー・ステークス Suwanee River S (芝GⅢ、4歳上牝、9ハロン)。firm の馬場に3頭が取り消して11頭立て。前走同じガルフストリームで一般ステークス(トロピカル・パーク・オークス)に勝ったアイルランド産馬サンディーヴァ Sandiva が2対1の1番人気。
レースは8番人気(15対1)のスカイランダー・ガール Skylander Girl が逃げ、サンディーヴァは5番手追走。第3コーナー手前から外を回って徐々に脚を伸ばしたサンディーヴァ、2番手で直線に向くと一気にスパート、7番手から追い込む3番人気(6対1)のロザリンド Rosalind に1馬身差を付けて優勝。4分の3馬身差で6番人気(12対1)のスキャンぺリング Scampering が3着に入りました。
アケダクトでもウィザーズ・ステークスを制したばかりのトッド・プレッチャー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のサンディーヴァは、去年英国でネル・グィン・ステークス(GⅢ)、フランスではカルヴァドス賞(GⅢ)にも勝っていた馬で、ロイヤル・アスコットのコロネーション・ステークス(GⅠ)では5着でした。アメリカに転じて4戦目で上記トロピカル・オークスを制してアメリカ初勝利。ステークスに2連勝、アメリカでもG戦初勝利を記録したことになります。
続いてはフレッド・W・フーパー・ハンデキャップ Fred W. Hooper H (GⅢ、4歳上、8ハロン)。近年はカルダー競馬場で12月に行われていた一戦で、去年は開催されませんでした。2年振り、競馬場が替っての施行です。fast の馬場に1頭が取り消して11頭立て。4歳馬ながら未だ5戦3勝2着1回3着1回と掲示板を外していないレース・デイ Race Day がステークス初挑戦ながら8対5の1番人気。
先ず好スタートから4番人気(5対1)のモスラー Mosler が飛び出しましたが、直ぐに8番人気(25対1)のグランド・ショアズ Grande Shores と3番人気(4対1)のヴァリッド Valid が競り掛け、バテたモスラーを振り切って2頭の激しい先行争い。これがゴール前まで続いた所に漸く本命のレース・デイが4~5番手から追い込んだ所がゴール。写真判定の結果、ヴァリッドがグランド・ショアズを首差抑えて優勝。同じく首差でレース・デイは3着でした。
マーカス・ヴィターリ厩舎、パコ・ロペス騎乗のヴァリッドは、去年の夏にモンマス・カップ(GⅡ)に勝って以来二つ目のG戦制覇。やはり去年のガルフ・ストリーム・ウエストで一般ステークス(エイト・マイルズ・ウェスト・ステークス)にも勝っており、通算23戦8勝となる5歳せん馬です。
そして愈々今年最初の芝コースGⅠのガルフストリーム・パーク・ターフ・ハンデキャップ Gulfstream Park Turf H (芝GⅠ、4歳上、9ハロン)。9頭が出走し、前走フォート・ラウダーデール・ステークス(芝GⅡ)を含めステークス2連勝のムシャウィシュ Msahwish が7対5の1番人気。前年の勝馬ロクティー Lochte も参戦していましたが、10対1の5番人気と評価を下げていました。
大外9番枠発走の最低人気(60対1)ゴールデン・ライフル Golden Rifle が逃げ、1番枠スタートのムシャウィシュはやや掛かり気味に内の3番手で待機。直線、そのままインコースで我慢したムシャウィシュは、前を行く逃げ馬と2番手追走のグランド・ティト Grand Tito に塞がれて前が開かないピンチを迎えましたが、僅かな間隙をこじ開けるようにして弾けると、後方3番手から急襲する6番人気(11対1)のスランバー Slumber をハナ差抑えてスリリングなゴールを制しました。1馬身差で3番人気(5対1)のウォー・コレスポンダント War Correspondent が3着、ロクティーは7着に終わって連覇ならず。
トッド・プレッチャー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎手はスワニー・リヴァーに続いてガルフストリームのG戦ダブル達成。ムシャウィシュもフランス、ドバイ、香港と転戦してアメリカに移ってきた5歳馬で、これがアメリカでの6戦目、前々走エル・プラード・ステークス(一般ステークス)から数えて3連勝となります。
ガルフストリームの最後はドン・ハンデキャップ Donn H (GⅠ、4歳上、9ハロン)。1頭が取り消して9頭立て、前年の覇者リー Lea が6対5の1番人気に支持されていました。
1番枠からダッシュ良く飛び出したのは2番人気(5対2)のコンスティテューション Constitution 、これを同じ厩舎の3番人気(5対1)コミッショナー Commissioner が追走し、リーは3番手待機。第4コーナーも軽快に飛ばしたコンスティテューションが先頭で入り、内を通ったリーもコーナーを利して2番手に上がりましたが、最後までその差は縮まらず、コンスティテューションが4分の3馬身を保ったまま鮮やかな逃げ切り勝ち。4馬身4分の1差が付いて5番人気(17対1)のエルナーウィ Elnaawi が3着。
勝馬を管理するトッド・プレッチャー師、騎乗したハヴィエル・カステラノも共にこの日のGⅠダブル、ガルフストリームのG戦ハットトリック完成です。コンスティテューションは去年のフロリダ・ダービー(GⅠ)を3戦無敗で制した馬で、その後左前管骨を骨折して長期休養していた馬。去年10月にベルモントのアローワンス戦で復帰して4着、続くクラーク・ハンデ(GⅠ)は3着していました。今年初戦でGⅠ2勝目を上げ、今期の更なる躍進が期待できそうです。
最後は小雨のパラつくサンタ・アニタ競馬場から注目のG戦3鞍。先ずロバート・B・ルイス・ステークス Robert B. Lewis S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)は、去年はGⅡだったレースですが、今年からGⅢに降格。それでも勝馬にはケンタッキー・ダービーへの10ポイントが加算され、サンタ・アニタ・ダービーへの重要なステップとなります。fast の馬場に1頭が取り消して5頭立て。他馬より5ポンド重い負担重量ながら、前年のロス・アラミトス・フューチュリティー(GⅠ)に勝って3戦無敗のドルトムント Dortmund が3対5の1番人気。
最低人気(29対1)ティズカノ Tizcano の逃げを2番手でマークしたドルトムント、向正面半ばで早くも先頭に立つと、3番手を追走していたライヴァルで2番人気(9対5)のファイアリング・ライン Firing Line も連れて並び掛け、直線は後続を引き離してのマッチ・レース。一旦は外のファイアリング・ラインが1馬身ほど抜け出して勝負あったかに見えましたが、再びインコースからドルトムントが差し返し、ゴールでは頭差先着して無敗記録を「4」に伸ばしました。2馬身半差で3番人気(6対1)のロック・シャンディー Rock Shandy が3着に入って人気通り。
このレース6勝目となるボブ・バファート厩舎、マーチン・ガルシア騎乗のドルトムントは、これでダービー・ポイントが20となって現時点での3位、このあとは4月4日のサンタ・アニタ・ダービーに直行する予定だそうです。ロス・アラミトス・フューチュリティーに続いてドルトムントに頭差2着のファイアリング・ライン、今回は5ポンド差があっただけに、勝馬との差は更に広がったと見ても良さそう。西のダービー筆頭候補ドルトムントとの差を何処まで詰められるかが同馬の課題でしょう。
続いてサン・マルコス・ステークス San Marcos S (芝GⅡ、4歳上、10ハロン)。firm の芝コースに1頭が取り消して8頭立て。何故かカナダ馬で昨秋レッド・スミス・ハンデ(芝GⅢ)に勝ったダイナミック・スカイ Dynamic Sky が8対5の1番人気。
レースは最低人気(46対1)のダイアモンド・バチェラー Diamond Bachelor が思い切っての逃げ、最初のスタンド前では後続を5馬身引き離して先頭を走ります。直線、ダイアモンド・バチェラーが渋太く粘りましたが、前半最後方に待機した2番人気(9対5)のフィネガンス・ウェイク Finnegans Wake が外から鋭く追い込み、逃げ馬を1馬身捉えて優勝。首差で6番人気(12対1)のパワー・ぺド Power Ped が3番手、更に半馬身差で7番人気(17対1)のパワー・フット Power Foot が4番手で入線する波乱となりましたが、ゴール直前でダイアモンド・バチェラーが大きく外に膨れ、パワー・フットのドライスデール騎手が立ち上がるアクシデント。当然ながら審議となり、2着入線のダイアモンド・バチェラーは4着に降着、パワー・ぺドとパワー・フットが夫々2・3着と繰り上がる結果も波乱となりました。人気のダイナミック・スカイは4番手追走も4頭に遅れて5着敗退。
ピーター・ミラー厩舎、ヴィクター・エスピノザ騎乗のフィネガンス・ウェイクはアクシデントとは無関係の快勝。昨年秋デル・マーのハリウッド・ターフ・カップ・ハンデ、今年初めのサン・ガブリエル・ステークスと芝GⅡ戦に3連勝、去年夏のアーリントン・ハンデ(芝GⅢ)も加えて4つ目のG戦勝となりました。去年のBCターフは10着でしたが、今年こそGⅠを獲りたいところでしょう。
2月7日の最後を飾ったのが、2強対決に沸くサン・アントニオ・ステークス San Antonio S (GⅡ、4歳上、9ハロン)。9頭が出走してきましたが、主催者が煽り立てたのは専ら2強対決。去年の2冠馬で年度代表馬にも選出されたカリフォルニア・クローム California Chrome と、9戦8勝で唯一度の敗戦がスタートで大きく不利があったBCクラシックでライヴァルの4着に敗れたシェアード・ビリーフ Shared Belief 。2頭の対戦はこのBC一度だけでしたが、二度目の対決に世界の競馬ファンの目は釘付け(日本では全く話題になってませんが)。結局シェアード・ビリーフがイーヴンの1番人気に支持され、カリフォルニア・クロームは7対5の2番人気でした。2頭は共に123ポンドでハンデ無しのガチンコ対決。
先ず先手を奪ったのは、4番人気(と言っても19対1!)のアルファ・バード Alfa Bird 。これをカリフォルニア・クロームが2番手でマークし、今回は不利も無くスタートを切ったシェアード・ビリーフが3番手にピタリ。第3コーナーの手前でカリフォルニア・クロームが逃げ馬を捉えると、スタンドからは早くも大歓声。これを見てシェアード・ビリーフもスパートしてカリフォルニア・クロームとの一騎打ちに持ち込むと、更に観客はヒートアップ。大歓声の中、一旦はカリフォルニア・クロームが年度代表馬の意地でリードを広げたから見えましたが、ジワリと本命馬が差を詰め、ゴールではシェアード・ビリーフがカリフォルニア・クロームを1馬身半突き放して2強対決に雪辱を果たしました。3着は6馬身半の大差が付いて3番人気(5対1)のホッパチュニティー Hoppertunity と人気通りの結末です。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、マイク・スミス騎乗のシェアード・ビリーフは、これで10戦9勝。既にGⅠは3勝しており、3月7日のサンタ・アニタ・ハンデでの事実上の頂上決戦が楽しみになってきました。今回は回避したバイエルン Bayern も参戦が予定されており、3強対決が実現する可能性もあります。但しカリフォルニア・クロームにはドバイ遠征(ワールド・カップ)の計画もあり、そうなれば日本馬との対戦も注目の的になるでしょう。
聞く所によれば、近々日本でも海外レースの馬券が買えることになるとか、事前の馬情報は是非クラシカル・ウォッチも参考に、と言いたいところですね。
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