クラシック前哨戦(3)ケンタッキー編

先週末は所用で東京を離れていたので二日ほどブログを休んでいました。既に結果はご存知だと思いますが、先ずは4月4日土曜日に行われたアメリカ競馬から順次レポートして行きましょう。
と言ってもこの週はケンタッキー・ダービー、オークスの丁度1か月前開催、アメリカ各地でトライアルを含め多くのG戦が施行されましたので、ここでは競馬場毎に区切りながらアップして行くことにしました。

最初はチャーチル・ダウンズと同じキーンランド競馬場から。前回紹介したように、開催初日の金曜日は豪雨により後半4レースがキャンセルされた同コースですが、1日空ければ快晴が戻り、朝から好天の下で競馬が順調に行われたようです。
この日は予定通りG戦は5鞍、最初はいきなりのGⅠ戦でマジソン・ステークス Madison S (GⅠ、4歳上牝、7ハロン)。fast のメイン・コースに6頭が揃いました。去年のCCAオークス馬ストップチャージングマリア Stopchargingmarai が今期デビューを迎えましたが、久々の不安もあって5対2の2番人気。これを抑えて、前走バーバラ・フリッチー・ハンデ(GⅡ)を制してG戦初勝利を4連勝で飾ったレディー・サベリア Lady Sabelia が2対1の1番人気。
そのレディー・サベリアがハナを奪って快調に飛ばしましたが、直線に入って後続に並び掛けられるとズルズル後退。替って前半は後方2番手を進んでいた5番人気(9対2)のプリンセス・ヴァイオレット Princes Violet が内から外に出してレディー・サベリアを外から捉えると、4番手追走から大外を回ったストップチャージングマリアの追撃を半馬身差抑えて優勝。2馬身4分の1差に最後方で待機した最低人気(27対1)のクリアリー・コンフューズド Clearly Confused が入り、レディー・サベリアは最下位での入線と、波乱と言って良いでしょう。
リンダ・ライス厩舎、ジュニア・アルヴァラード騎乗のプリンセス・ヴァイオレットは、前走バーバラ・フリッチーではレディー・サベリアの2着していた馬で、G戦は初勝利。実は前走まではマイク・ハッション師が管理していましたが、師が重い病気に罹ったため、今回からライス厩舎に転じての初戦でもありました。去年3歳時にはマザー・グース・ステークス(GⅠ)でも2着したことがあり、ステークスは去年10月のベルモントでニューヨーク産馬限定のステークス(エンパイア・ディスタッフ・ハンデ)に続く2勝目。これで通算成績は10戦5勝2着4回と堅実なもの。繁殖に上がる前にもう一稼ぎといったタイプでしょうか。

続いても7ハロンの短距離戦、こちらは牡馬によるコモンウェルス・ステークス Commonwealth S (GⅢ、4歳上、7ハロン)で、7頭立て。去年のBCスプリントで勝馬とは僅か2馬身差の4着したバーボン・カレッジ Bourbon Courage が2対1の1番人気。
各馬一斉のスタートから、先ず並んだ2番人気(5対2)の一角コービーズ・バック Kobe’s Back が下げ、残る6頭は5番人気(8対1)ロケット・タイム Rocket Time を逃げ馬にほぼ一団の展開。ロケット・タイムが内ラチ沿いギリギリに逃げ込みを図りましたが、第4コーナーで漸く前の集団に取り付いたコービーズ・バックが大外から急襲し、前半3番手から伸びる同じ2番人気のシー・ズィー C.Zee との叩き合いを4分の3馬身制しての鮮やかな差し切り勝ち。2馬身差でロケット・タイムが3着に粘っていました。バーボン・カレッジは集団の後尾6番手に付けていましたが、そのまま伸びず6着敗退。
ピーター・ユールトン厩舎、ゲーリー・スティーヴンス騎乗のコービーズ・バックは、これで6連敗に終止符。去年のサン・ヴィセンテ・ステークス(GⅡ)以来の勝利となります。去年7月のビング・クロスビー(GⅠ)5着のあと長期休養に入り、今年3月サン・カルロス・ステークス(GⅡ)2着から復帰、今期は何れもスティーヴンス騎手とのコンビが好成績に繋がっているようです。

キーンランド三つ目のG戦は、芝の短距離戦シェイカータウン・ステークス Shakertown S (芝GⅢ、4歳上、5.5ハロン)。前日は大雨でしたが馬場は good まで回復し、3頭が取り消しての10頭立て。オーストラリアから転向し、アメリカでも短距離一般ステークスに勝っているパワー・アラート Power Alert が5対2の1番人気、同じオッズで僅差ながら去年のBCターフ・スプリント(GⅠ)で3着したアンドラフテッド Undrafted が2番人気で続きます。
レースは4番人気(8対1)のサムシング・エクストラ Something Extra がダッシュ良く飛び出し、そのまま逃げ切り勝ち。最後方からブービー人気(44対1)のチャンネル・マーカー Channel Marker が馬群を割って猛烈に追い込みましたが、逃げ馬には半馬身及ばず2着。更に2馬身半差が付いてアンドラフテッドがやはり後方から3着に追い込み、パワー・アラートは3番手追走で4着に終わっています。
勝馬のオーナーの一人でもあるゲイル・コックス師が管理し、シャウン・ブリッジモハーンが騎乗したサムシング・エクストラは、一昨年のこのレースで2着、去年は3着だった7歳せん馬で、三度目の正直。ケンタッキー産馬ながらカナダでステークスに4勝(内3鞍はカナダのG戦)しており、アメリカのG戦は初勝利となりました。前の2回は何れも控える競馬でしたが、今回は作戦変更で臨んだ逃げ作戦が見事奏功した形です。

このあとはクラシックに繋がる二つのトライアル、先ずはオークスに向けて勝馬には100ポイントが加算されるアシュランド・ステークス Ashland S (GⅠ、3歳牝、8.5ハロン)。7頭が出走し、2歳時にGⅠを制した2頭、ピース・アンド・ウォー Peace and War (アルシバイアディーズ・ステークス)とアンジェラ・ルネー Angela Renee (シャンデリア・ステークス)とが5対2で並んだ1番人気。
逃げる最低人気(32対1)のテンパー・ミント・パッティー Temper Mint Patty を2番手でマークするアンジェラ・ルネー、5番手に控えたピース・アンド・ウォー。第3コーナーで逃げ馬を捉えてアンジェラ・ルネーが先頭に立つと、前の2頭をマークして進んだ3番人気(9対5)のラヴリー・マリア Lovely Maria が抜群の手応えで外からアンジェラ・ルネーに並び掛け、最後は3馬身4分の1差を付ける完勝。2馬身4分の3差の3着にはブービー人気(17対1)のシルヴァーポケッツフル Silverpocketsfull が入り、ピース・アンド・ウォーは最下位7着惨敗に終わりました。
ラリー・ジョーンズ厩舎、カーウィン・クラーク騎乗のラヴリー・マリアは、前走レーチェル・アレキサンドラ・ステークス(GⅡ)で2着した馬で、これが3勝目でステークスも初勝利。丁度良いタイミングでオークスへの切符を手にしました。騎乗したクラークは40歳のヴェテランで、これが念願のGⅠ初勝利。通算では2909勝目に当たるのだそうです。

そしてキーンランドの最後は、長年トヨタがスポンサーになっているダービー・トライアルで、勝馬には100ポイント加算のブルー・グラス・ステークス Blus Grass S (GⅠ、3歳、9ハロン)。8頭が出走し、去年のBCジュヴェナイル2着馬で、前走タンパ・ベイ・ダービー(GⅡ)も制して順調なカーペ・ディエム Carpe Diem が2対5の断然1番人気。
先ずは2番人気(5対1)のオチョ・オチョ・オチョ Ocho Ocho Ocho が1番枠スタートを利して先頭に立ちますが、カーペ・ディエムは直ぐに2番手に付けて抜け出すタイミングを計る流れ。第4コーナーで満を持して先頭に立ったカーペ・ディエム、鞍上が後続を確認して追い出すと後は独走、5番手から追い込む5番人気(15対1)のダンジグ・ムーン Danzig Moon に3馬身差を付ける圧勝劇でトライアルを制しました。逃げたオチョ・オチョ・オチョが粘って2馬身半差の3着。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のカーペ・ディエムは、これでダービー・ポイントは164、間違いなく今年のダービーで主役を演ずる1頭でしょう。2歳時にはここキーンランドでブリーダーズ・フューチュリティー(GⅠ)にも勝っており、キーンランドのアイドルでもあります。このレース3勝目のプレッチャー師は、フロリダ・ダービーを制したマテリアリティー Materiality も当然ながらダービー候補、飛車角での追う手詰めも見えてきたようです。

 

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