ダービーは無縁? サンダウンのトライアル

昨日は英国サンダウン競馬場でG戦が3鞍行われています。ダービーのトライアルとして知られるクラシック・トライアルに注目が集まりますが、夏のエクリプス・ステークスに向けてのトライアルも見逃せません。
馬場はやや重い good 。

最初は第2レースのゴードン・リチャーズ・ステークス Gordon Richards S (GⅢ、4歳上、1マイル2ハロン7ヤード)。5頭が出走し、去年のセントレジャー・トライアルとなるグレート・ヴォルティジュール・ステークスに勝って以来の休み明けとなるポストポーンド Postponed が15対8の1番人気。
そのポストポーンドが先頭から主導権を奪って粘りましたが、2番手に付けていた3番人気(7対2)のウエスタン・ヒム Western Hymn が残り2ハロンから並び掛け、先頭に立った後はやや寄れながらも本命馬の差し返しを4分の3馬身抑えて優勝。3~4番手から前を追走した2番人気(2対1)のキャノック・チェイズ Cannock Chase が2馬身4分の1差で3着。

勝ったウエスタン・ヒムはジョン・ゴスデン厩舎の4歳馬で、騎乗したフランキー・デットーリは第1レースのエッシャー・カップに続いていきなりのダブル達成。去年3歳時にはここサンダウンで同じカードに組まれているクラシック・トライアルを制した馬で、フランスでもユージェーヌ・アダム賞(GⅡ)を制している強豪。ダービーは6着、去年の終戦チャンピオン・ステークスは4着でしたが、この冬にせん馬になっていました。
先頭に立ってやや気を抜く所があったとは言え、この馬場での好走。得意なコース、同じ距離で行われるエクリプス・ステークスに向けて視界良好といった所でしょう。

続いては好メンバーが揃ったサンダウン・マイル bet365 Mile (GⅡ、4歳上、1マイル14ヤード)、2頭が取り消して6頭立て。GⅡ勝馬がズラリ揃ったレヴェルの高いGⅡ戦で、15対8の1番人気に支持されたシフティング・パワー Shifting Power は、ここ10年でこのレースを6勝しているハノン厩舎の4歳馬。2000ギニー4着、愛2000ギニー2着、ジャン・プラ賞も2着とGⅠ戦にもう少しで手が届く存在です。4対1の2番人気には3頭が並ぶ接戦。
スロー・スタートから先頭に立った2番人気の1頭ボウ・クリーク Bow Creek が逃げ、シフティング・パワーもこれを目標に先行策。しかし残り2ハロンで先頭に躍り出たのは2番手を追走していたやはり2番人気のカスタム・カット Custom Cut で、最後方から追い込むこれも2番人気のヒア・カムズ・ウェン Here Comes When に1馬身半差を付けての快勝です。シフティング・パワーも残り2ハロンでスパートしたものの1馬身4分の3差離されての3着に終わりました。

勝ったカスタム・カットはデヴィッド・オメーラ厩舎、ダニエル・タドホープ騎乗の古豪6歳馬で、去年はデスモンド・ステークス(GⅢ)、ストレンソール・ステークス(GⅢ)、ジョエル・ステークス(GⅡ)を含めて5連勝。シーズン最後はクィーン・エリザベスⅡ世ステークス(GⅠ)で8着大敗に終わりましたが、敗因は不利な枠順と苦手な馬場とハッキリしており、この成績は除外して考えても良さそうです。
恐らく5月16日に行われるGⅠ戦のロッキンジ・ステークスに向かうことになるでしょう。

最後はクラシック・トライアル Classic Trial (GⅢ、3歳、1マイル2ハロン7ヤード)。フランスから登録していた1頭が取り消して僅か4頭立て。去年秋にニューマーケットでオータム・ステークス(GⅢ)に勝ち、アメリカに遠征してBCジュヴェナイルに挑戦して7着だったコメモレイティヴ Commemorative が4対6の1番人気。
ここでは格下と見做されていた最低人気(12対1)のマスター・アプレンティス Master Apprentice が逃げ、コメモレイティヴは3番手。しかし本命馬には馬場が重いのか意外にも伸びず、そのままマスター・アプレンティスが逃げ切ってしまいます。前半最後方に待機していた2番人気(3対1)のケイプ・クリアー・アイランド Cape Clear Island が半馬身差の2着に入り、3番人気(6対1)のスノアノ Snoano が3着。人気のコメモレイティヴは3着馬から更に28馬身も離され、失望に終わりました。

評価を覆してトライアルを制したマスター・アプレンティスは、アンドリュー・ボールディング厩舎、デヴィッド・プロバート騎乗。去年8月のサンダウンでデビューして3着、続くサンダウンの未勝利戦も2着で、3戦目のウインザーで初勝利を挙げた馬。4戦目にフランスのクリテリウム・インターナショナル(GⅠ)を選んで渡仏しましたが9着と凡走し、シーズンを終えていました。
未勝利戦に勝っただけでGⅠに挑戦したということは、それだけ陣営の評価が高かったということ。いざダービー、と日本では思う所ですが、ボールディング師はダービーよりアスコットに向いているタイプと判断して、ダービーには向かいませんし、そもそもクラシックの登録がありません。この辺りが分相応に拘る英国競馬の真髄かもしれませんね。
一方大敗のコメモレイティヴを管理するチャールズ・ヒル師も敗因を馬場(この馬には重過ぎる)と断定し、このレースに勝った場合にはダービーに追加登録すると言明していました。従って勝った馬も本命に推された馬もレース名とは裏腹にダービーには無縁となりそう。イギリスにはこんな競馬もあるのです。

 

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