愛1000ギニーからダービーへ、オークスへ

昨日の日曜日、ヨーロッパ競馬はアイルランドとフランスで合計4鞍のGⅠ戦が行われるという豪華版。何から取り上げて良いものか迷うところですが、先ずはクラシック・レースから行きましょう。恐らくこれが第一に知りたい情報でしょう。

ということで5月24日、good to yielding のカラー競馬場で行われたG戦3鞍、実際のレース順とは逆に遡って取り上げていきます。最初はアイルランドの牝馬クラシック第一弾、アイルランド1000ギニー Irish 1000 Guineas (GⅠ、3歳牝、1マイル)。枠順を紹介した18頭が全て参戦してきました。
レースに入る前に訂正があります。今回初めてレース実況で確認できましたが、馬名の正式(?)な読み方が判明しました。何れもボルジャー厩舎の馬で、16番枠の Mainicin はマイニチンではなく、「マニキー」、13番枠の Steip Amach もステイプ・アマーチではなく「ステイプ・アマク」に、そしてずっと頭を悩ませてきた15番枠の Pleascach もプリースキャッチではなく、「プレイスコック」と読むようです。アイルランドの実況アナはやや癖があるので聴き取り難いのですが、私にはこのように聴こえましたので、今回の稿で訂正することにしました。

ここからが本題。やはり5対4の1番人気に支持されたのは、色々あったもののオブライエン/ムーア・コンビのファウンド Found 。去年のマルセル・ブーサック賞勝馬、前日の愛2000ギニーと同じ陣営と言うことも人気の要因でしょう。続いては冒頭に紹介したプレイスコック Pleascach の11対2が2番人気、オブライエン厩舎の第二の矢とも言うべきキスド・バイ・エンジェルズ Kissed By Angeles が6対1で3番人気。
レースはボルジャー厩舎の3騎が引っ張る形で、最初はマニキーが、残り3ハロン地点からはステップ・アマクが逃げて強いペースを作ります。明らかにこの2頭は同厩のエース、プレイスコックのペースメーカーで、主役は終始3番手から抜け出すタイミングを図ります。そして残り2ハロン、プレイスコックが先頭に立ち、中団で待機していた本命ファウンドが外から並び掛けて2頭の一騎打ち。ゴール手前でプレイスコックがファウンドの方に寄れて馬体を接したことが審議になりましたが、結局はプレイスコックがファウンドを半馬身抑えての戴冠。更に1馬身半差で7番人気(16対1)のデヴォンシャー Devonshire が3着に入り、以下ジャック・ネイラー Jack Naylor 、ボッカ・バチアータ Bocca Baciata の順。
順当に1・2番人気での決着でしたが、2頭ともに優れた瞬発力があり、2頭の差はほとんど無いと見て良いでしょう。勝負は時の運、という印象。

勝馬を管理するジム・ボルジャー師は、愛1000ギニーは2007年のフィンシール・べオ Finsceal Beo に続いて2勝目。騎乗したケヴィン・マニングも師と同様に2007年以来の勝利となります。プレイスコックはボルジャー師自身が生産した馬で、師の夫人がオーナーというファミリー経営。その父テオフィロ Teofilo も、テオフィロの母 Speirbhean (例によって読み方が判りませんのでそのままにしておきます)もボルジャー師の生産馬。因みにプレイスコックとは、恐らくケルト語と思われますが、「explosive」(爆発力のある)という意味だそうで、正に彼女の瞬発力にピッタリな命名と言えそうですね。
師はレース後、彼女は単なるマイラーではないことを強調。実際に前走10ハロンのブルー・ウインド・ステークス(GⅢ)を圧勝していました。愛1000ギニーはボーナス(行き掛けの駄賃)と明言し、何と次走は牡馬相手の愛ダービーとか。そこで男馬を蹴散らし、愛オークスも連勝という青写真を描いているジム・ボルジャーでした。

一方負けてなお強しの印象を残したファウンドのエイダン・オブライエン師も負けていません。1000ギニーに向けての調整が順調にいかなかったものの、ここでの好勝負、次はエプサムと腹を括ったようです。それもオークスは当然ながら、ダービーに挑戦する気持ちも沸いてきたとか。持ち駒次第では牝馬の英ダービー参戦が見られるかもしれません。

さて愛1000ギニーに先立って行われたのが、もう一つのGⅠ戦たるトトソルズ・ゴールド・カップ Tattersalls Gold Cup (GⅠ、4歳上、1マイル2ハロン110ヤード)。6頭が出走し、去年の仏ダービーとチャンピオン・ステークスを制したザ・グレイ・ギャッツビー The Grey Gatsby と、一昨年の勝馬で去年のチャンピオン・ステークスで2着とライヴァル関係にあるアル・カジーム Al Kazeem の一騎打ち。前者が11対10の1番人気、後者が3対1の2番人気で続きます。
レースは3番人気(3対1)のポストポーンド Postponed が逃げ、ザ・グレイ・ギャッツビーは外から2番手追走。残り2ハロン、3番手を進んでいたアル・カジームは前2頭の間に挟まれる場面もありましたが、僅かの隙間を縫って抜け出すと、4番手から追い込む4番人気(15対2)のファシネイティング・ロック Fascinating Rock を首差退けての優勝。短頭差でポストポーンドが逃げ粘り、ザ・グレイ・ギャッツビーは前3頭から1馬身半差遅れる4着と期待を裏切りました。

英国のロジャー・チャールトン厩舎、ジェームス・ドイル騎乗のアル・カジームは、今年の春は一旦種牡馬の道を歩み始めましたが巧く行かず、現役に復帰しての7歳シーズン。初戦にフランスのダルクール賞(GⅡ)を勝ち、前走ガネー賞(GⅠ)が2着。トトソルズ・ゴールド・カップは2013年に続き2度目の勝利となります。そこでも手綱を取ったドイル騎手は、去年のノーブル・ミッション Noble Mission でも勝っており、3年連続の快挙。
アル・カジームは2013年、カラーに続いてロイヤル・アスコットのプリンス・オブ・ウェールズも制してGⅠに連勝しましたが、今年も同じ道を歩むことになりそう。アスコットのGⅠのオッズは12対1から7対1に上昇しました。敗れたザ・グレイ・ギャッツビーもプリンス・オブ・ウェールズに向かう予定で、こちらはレース前の4対1から7対1に下降して2頭が並びました。日本から遠征するワンアンドオンリーの強敵になるでしょう。

二つのGⅠに先立って行われたのが、ダービーへの最終便になるガリニュール・ステークス Gallinule S (GⅢ、3歳、1マイル2ハロン)。7頭が出走し、未だ1勝馬ながらオブライエン厩舎のダービー秘密兵器と噂されるジョヴァンニ・カナレット Giovanni Canaletto が前評判人気を背負ってイーヴンの1番人気。
英国から遠征した2番人気(11対2)のプリンス・ガガーリン Prince Gagarin が逃げ、ムーア騎乗のジョヴァンニ・カナレットは5番手追走。残り1ハロンで追い上げた本命馬が勝ったかに見えましたが、2番手を進んでいた4番人気(15対2)のカーヴィー Curvy が渋太く粘り、最後は首差先着して勝利を攫いました。1馬身半差で逃げたプリンス・ガガーリンが3着。

デヴィッド・ウォッチマン厩舎、ウェイン・ローダン騎乗のカーヴィーは、ネイヴァン競馬場のハンデ戦を2連勝してきた牝馬。これで3連勝となり、ロイヤル・アスコットのリブルスデール・ステークスに向かう予定。ウォッチマン厩舎には現時点でオークス本命のレガティッシモ Legatissimo がおり、2頭を対戦させることはないでしょう。
一方2着惜敗のジョヴァンニ・カナレット、レース振りを見ると如何にも首が高く、未だ幼さが多分に残る内容。ダービーに勝つには相当な成長力が必要ですが、オッズは16対1となっています。グレンイーグルス Gleneagles の動向を含め、オブライエン厩舎が残り2週間でどの馬に希望を託すのか、目が離せません。

 

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