ヘイドックにも新たなG戦

5月30日、ヘイドック競馬場で3鞍のG戦が行われました。この内最後に紹介するGⅡ戦は、今年度々紹介しているように、短距離路線の見直しに伴って以前のリステッド戦から格上げされたものです。
しかしその前に、お馴染みになっているG戦から始めましょう。馬場は good 、所により good to soft でした。

最初は古馬牝馬によるピナクル・ステークス Pinnacle S (GⅢ、4歳上牝、1マイル3ハロン200ヤード)。本命馬が中々勝てないレースという以外には余り注目されていない一戦でしたが、1頭が取り消して10頭立て。1番人気は4対1で2頭が分け合い、前走ミドルトン・ステークス(GⅡ)2着のタルマーダ Talmada と、昨シーズンをリステッド戦2連勝で締め括った今期初戦のクイーン・オブ・アイス Queen Of Ice 。
先ず7番人気(10対1)のクライテリア Criteria が先頭に立ちましたが、中程から替ってクイーン・オブ・アイスが交わしての逃げ作戦。しかしクイーン・オブ・アイスは休養明けが原因か早々と脱落し、後方を進んだ4番人気(7対1)ミス・マージュリー Miss Marjurie の鮮やかな差し切り勝ち。短頭差で先行していた6番人気(10対1)のワンダーストラック Wonderstruck が流れ込み、2馬身半差で4番人気(7対1)のレディー・ティアーナ Lady Tiana が3着。
結局クイーン・オブ・アイスは最下位に沈み、タルマーダも4着とチョッとした波乱、今年も人気馬は勝てませんでした。

デニス・コークリー厩舎、ポール・ハナガン騎乗のミス・マージュリーは、これがG戦初挑戦となる5歳馬で、ほとんど下馬評にも上っていませんでした。今期初戦の前走グッドウッドのリステッド戦に続く連勝となりましたが、今回初騎乗のハナガンが彼女の才能を最大限に引き出した結果でしょう。

続いてはジョン・オブ・ゴーント・ステークス John of Gaunt S (GⅢ、4歳上、7ハロン)。ここも13頭立てと頭数が揃い、去年のハンガーフォード・ステークス(GⅡ)勝馬のブレトン・ロック Breton Rock が4対1の1番人気。前走はロッキンジ・ステークス(GⅠ)に挑戦して7着でしたが、前シーズン最後のチャレンジ・ステークス(GⅡ)3着と言う実績も買われていたのかも知れません。
4番人気(7対1)のザット・イズ・ザ・スピリット That Is The Spirit が逃げましたが、最後は先行抜け出しの馬たちの争いとなり、2番人気(5対1)のケーブル・ベイ Cable Bay が、8番人気(14対1)アスクリプション Ascription に半馬身差を付けて優勝。更に半馬身差で7番人気(11対1)のアブソリュートリー・ソー Absolutely So が3着に入り、ブレトン・ロックは7着と、ここも本命馬は勝てませんでした。

チャーリー・ヒルズ厩舎、ジェイミー・スペンサー騎乗のケーブル・ベイは、前走ロッキンジ・ステークスは5着でブレトン・ロックには先着していました。更に去年最後のチャレンジ・ステークスも2着で、ここでもブレトン・ロックを抑えています。人気で遅れていたのが不思議なほど。しかし勝鞍は2歳時レスターの初勝利以来の2勝目で、その間多くのG戦で入着止まりだったのも事実。勝ってロイヤル・アスコット、目出度くクイーン・アンに勝ってGⅠ初制覇と行くかどうか?

ヘイドックの最後は、冒頭で紹介した今年から新たにパターン・レースに加わったサンディー・レーン・ステークス Sandy Lane S (GⅡ、3歳、6ハロン)。レースそのものは1985年に創設されていましたが、今年からいきなりGⅡに上がっています。ロイヤル・アスコットのコモンウェルス・カップ(新設GⅠ)に向かう3歳短距離にとって格好のトライアルとなるだけあって、ここも10頭が揃いました。イーヴンの1番人気に支持されたリマート Limato は、ここまで5戦2勝の無敗馬。2歳時はリステッド戦まででしたが、前走でやはり今年からGⅢに格上げされたアスコットのパヴィリオン・ステークスを制して、コモンウェルス初代勝馬に最も近い位置に立っている存在です。
レースは2番人気(11対2)で前走デューク・オブ・ヨーク・ステークス(GⅡ)2着のマトムー Mattmu が逃げ、リマートはこれを目標に先行抜け出し策。しかしこの日は馬場が重かったためか何時もの瞬発力が不足、最後は後方から一気の脚で追い込んだ3番人気(6対1)アダーイ Adaay に1馬身屈して2着、初黒星を喫してしまいました。頭差で6番人気(14対1)のニュー・プロヴィデンス New providence が3着。

ウイリアム・ハッガス厩舎、この日4勝と大当たりのポール・ハナガンが騎乗したアダーイは、前走ニューバリー競馬場のリステッド戦に続く2連勝。実はその前のパヴィリオン・ステークス、2歳最後のニューバリーのリステッド戦では共にリマートの3着に敗れており、三度目の正直で雪辱を果たしました。去年はコヴェントリー・ステークス(GⅡ)にも参戦(8着)したことがあり、ハナガン騎手は同馬の前走で追い込み策を決めたライアン・ムーアに倣って今回の作戦を練ったのだと、正直に告白していました。
これでアダーイはコモンウェルス・カップのオッズが6対1に急上昇。一方敗れたリマートは、レース前の3対1から7対2と若干下降しました。リマートにとってはやはり固い馬場が望ましい所で、当日の馬場状態が最終オッズにも、結果にも大きく影響することになりそうです。

 

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