ショッキング・オークス!

オークスの結果が入ってきました。日記のタイトルのように、最低人気の馬がオークス制覇、それでもオブライエン、という見出しでしょうか。

この日のエプサム・ダウンズは好天に恵まれたようで、思い思いの服装に身を包んだ煌びやかな女性たちがクラシックを楽しんだ様子がフォト・アルバムで紹介されていました。馬場は good 、所により good to soft とほぼ理想的な馬場。
G戦は3鞍ありましたが、先ずは最後(第5レース)のオークス Oaks (GⅠ、3歳牝、1マイル4ハロン10ヤード)から行きましょう。既に枠順を紹介したように11頭立て。
もちろん2冠の掛かるレガティッシモ Legatissimo が5対2の1番人気で、G戦実績の無いスタウト厩舎のクリスタル・ズヴェズダ Crystal Zvezda が7対2の2番人気、愛1000ギニー4着のジャック・ネイラー Jack Naylor が13対2の3番人気で続いていました。本命はまだしも、2・3番人気はチョッと意外な感じがします。

大方の予想通り、逃げたのは7番人気(12対1)のスター・オブ・セヴィル Star of Seville で、これを3頭出しで臨むオブライエン厩舎のエース格でジョセフ・オブライエンが選んだトゥギャザー・フォーエヴァー Toghether Forever (9対1、5番人気)が追走し、直線へ。最後の坂、先ず4番人気(7対1)のレディー・オブ・デュバイ Lady of Dubai が先頭に立ったところに、本命レガティッシモが並び掛け、2頭の一騎打ち。
ここでクラシック3勝目を目指すムーア騎乗のレガティッシモが左に刺さりながらも先頭に立ち、スタンドは大歓声。しかし最後の最後、前半は後方4番手に控えていた最低人気(50対1)のクオリファイ Qualify が内から鋭く追い上げ、2頭が並んだ所がゴール。外のレガティッシモが辛うじて振り切ったかに見えましたが、写真判定の結果は短頭差でクオリファイが勝っていました。2馬身半差でレディー・オブ・デュバイが3着。結果にスタンドが一瞬で静まり返ったのが、ショックの大きさを表しているようでした。
以下4着に8番人気(14対1)でオブライエン厩舎の副将格ダイアモンズアンドルビーズ Diamondsandrubies 、9番人気(16対1)のジャッズィ・トップ Jazzy Top が5着にはいり、クリスタル・ズヴェズダは10着、ジャック・ネイラーも6着に敗れました。本命が僅差とは言え勝てなかったこと、2・3番人気も振るわなかったことから、やはりショッキングな結末だったと言えそうです。

勝ったクオリファイは、実はエイダン・オブライエン師が管理する厩舎では最も人気が無かった馬ですが、それも其の筈、今期初戦の英1000ギニーは13頭立て13着、愛1000ギニーも18頭立て10着に敗れていました。何でオークスに出走したのか不可解に思われますが、実はオブライエン厩舎でもクールモアの所有馬ではなく、ジョン・マレル氏という古参のオーナーだったという関係もあるのでしょう。
騎乗したコーム・オダナヒューは、実戦でクオリファイに騎乗するのは今回が初めてで、英国のクラシックは初制覇となります。2歳時、2戦目に未勝利ながらG戦(シルヴァー・フラッシュ・ステークス)に出走して3着しており、3戦目にダンダルクのポリトラック・コースで初勝利。その後デビュタント(GⅡ)5着、モイグレア・スタッド(GⅠ)6着を経てパーク・ステークス(GⅢ)に優勝し、シーズン最後はBCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフに遠征して8着大敗に終わっていました。主に騎乗してきたジョセフ・オブライエンによると、未だ競馬そのものを理解しておらず、扱うのが難しいタイプのようですね。

オブライエン師はこれがオークス5勝目。オーナーのジョン・マレル氏は、1970年代にアベイ・ド・ロンシャン賞を2連覇(一度は同着)したジャンティオンブル Gentilhombre を所有していた方で、暫く競馬の世界から離れていましたが、最近ヒョンな切っ掛けから再び競走馬を持つようになった由。生涯最高の栄誉を得たと言えましょう。
陣営にとっては英国とアイルランドのギニーを使ってからオークス、というのは当初の計画通りだったそうで、師も2000メートルならトップ・クラスの脚を持っていると確信していたとのこと。2400メートルはやって見なければ判らないというスタンスでしたが、克服するに十分なスタミナを持っていたことが証明されました。寧ろ距離が伸びて、クオリファイの才能が開花したとも言えるでしょう。何れプロフィールで血統を紹介しますが、ダービーと凱旋門所に勝ったワークフォース Workforce の近親で、皮肉なことにムーアのオークス制覇を阻むことになりました。(ワークフォースにはムーアが騎乗していた)

一方ムーアを以てしても勝てなかったレガティッシモ、明らかにスタミナが無かったと言うに尽きるでしょう。今後は1マイルか1マイル4分の1に距離を短くしていく旨のコメントがありました。最後のフラ付きについて、ムーアには不注意騎乗の廉で1日、6月21日の騎乗停止が言い渡されています。正に泣きっ面に蜂。

以上でオークス・レポートを終え、残る2鞍のG戦を見ていきましょう。最初は プリンセス・エリザベス・ステークス Princess Elizabeth S (GⅢ、3歳上牝、1マイル114ヤード)。1頭が取り消して9頭立て。去年の2着馬で前走ミドルトン・ステークス(GⅡ)4着のオデリッズ Odeliz が5対2の1番人気。
レースは出走馬中唯一の3歳馬で6番人気(9対1)のアラビアン・クィーン Arabian Queen がスタートからハナを奪い、そのまま後続を寄せ付けず、追走した5番人気(8対1)のクロウリーズ・ロウ Crowley’s Law に4馬身差を付ける圧巻の逃げ切り勝ちです。後方を進んだオデリッズも追い上げましたが、4分の3馬身届かず3着。3歳馬という年齢のハンデ差12ポンド差を活かした積極策が奏功した形でした。

デヴィッド・エルスワース厩舎、シルヴェストル・ド・スーザ騎乗のアラビアン・クィーンは、2歳時の去年、ダッチェス・オブ・ケンブリッジ・ステークス(GⅡ、旧名チェリー・ヒントン・ステークス)に勝っており、出走馬中唯一のGⅡ勝馬でもありました。その後スイート・ソレラ5着、チーヴリー・パーク6着と奮いませんでしたが、冬場の成長で復活、今期デビュー戦の快勝に繋がったようです。

最後は第3レースに組まれていたダイオメド・ステークス Diomed S (GⅢ、3歳上、1マイル114ヤード)。7頭立て。マイルに路線を変更し、前走ロッキンジ・ステークス(GⅠ)で3着しているアロッド Arod が7対4の1番人気。
そのアロッド、ハナを切った2番人気(7対2)のカスタム・カット Custom Cut を途中で交わして先頭に立つと、こちらも鮮やかな逃げ切り勝ちで期待に応えました。2馬身差2着も、2番手を追走したカスタム・カットで人気通りの決着。1馬身4分の1差で5番人気(8対1)のコンプリシット Complicit が3着に入っています。

ピーター・チャップル=ハイアム厩舎、アンドレア・アトゼニ騎乗のアロッドは、去年ダンテ・ステークス2着からダービーでも4着に健闘した馬。その後レスター競馬場の条件戦に勝ちましたが、ヨークのジャドモント・インターナショナル5着でシーズンを終えていました。
今期は1マイル戦線に目標を切り替え、初戦のアール・オブ・セフトン(GⅡ)で2着、前走ロッキンジでもマイル戦に対応できるスピードを証明し、1年振りのエプサム競馬場でG戦初勝利を勝ち取っています。

 

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