読売日響・第549回定期演奏会

夕方から雨が激しくなった東京・赤坂のサントリーホール、これで梅雨入り宣言かと思いきや、気象庁はジックリ様子見を決め込んだようで、関東地方は未だ雨の季節突入ではないようです。
で、読響きの6月定期はロシアの巨匠、テミルカーノフ登場でマーラーの最長交響曲1曲というプログラムでした。マーラーのシンフォニーはどれも長大ですが、演奏にもよりますが、ほとんどは辛うじてCD1枚に収まるもの。しかし第3番だけはCD1枚には入り切りません。もちろん音量も音楽も・・・。

マーラー/交響曲第3番
指揮/ユーリ・テミルカーノフ
メゾ・ソプラノ/小山由美
女声合唱/新国立劇場合唱団
児童合唱/NHK東京児童合唱団
コンサートマスター/日下紗矢子
フォアシュピーラー/長原幸太

演奏時間100分、休憩無し、残席僅少ということで「チケット求む」の意思表示をしていたファンも見かけた定期。久し振りに読響らしい豪演を楽しみました。
感想はほぼそれだけで十分なもので、特に付け加えることもありません。圧巻の第1楽章にしても、テミルカーノフは寧ろ弱音部の緻密な表現に心を致しているようで、巨大な室内楽を楽しむ趣。

再現部冒頭のシンバル・クラッシュは、マーラーの指定では複数のシンバルを離れた位置でとありましたが、マエストロは3組のシンバルを2か所で鳴らしていました。極めてオーソドックスな処置でしょう。
第3楽章のポスト・ホルンの影吹きも、通常にバック・ステージで吹いていたようです。
その第3楽章が終わった所で、P席に女声合唱と児童合唱が入場し、第4楽章が鳴り出すと同時にメゾ・ソプラノが入場。これで楽章間に拍手が入ることが避けられます。

やはり感動的なのは終楽章。個人的には第3交響曲はこのフィナーレ以外は余り好きになれないのですが、天国的なラングサムは何度聴いても感動してしまいますね。私にとっては前の5楽章は全て序奏の様に聴こえてしまいました。
終了後の拍手喝采も凄いもので、にも拘らずニコリともしないテミルカーノフのクールなこと。

自分のブログをひっくり返してみると、この前に第3を聴いたのはインキネン/日フィル。感想を読み返してみましたが、今回のテミルカーノフ/読響は真に立派な演奏だったものの、インキネンのような深い感動は、残念ながら受けませんでした。
何故か? 聴いた時期が違っていた(前回は震災の記憶が生々しかった)からか。今回のコンビならこの位の演奏は予想できたレヴェルだったからか。私自身のマーラー感によるものか。演奏そのものが巧過ぎるからか。

いずれにしても演奏会での感銘は、様々な要素が絡み合って産まれるもの。それが音楽の力であり、不思議さなのだと思います。

全くの蛇足ですが、ポストホルンのメロディー、その2回目のソロで吹かれる旋律(練習番号16)が最後に弦の pp に受け継がれる所があります(練習番号28)。もちろん主題が変奏されて行く一過程なのですが、何処かで聴いたことのあるメロディーとそっくりに感じて仕方がありませんでした。
長い間それが何だったのか思い当りませんでしたが、昨日の演奏でハタ、と気が付きましたね。それはグリンカのホタ・アラゴネーズという序曲。グリンカとマーラーには何の関連も無いはずで、もちろん偶然の空似でしょう。こんな指摘をした人もいますまい。それがテミルカーノフで思い当ったとは、ロシア人指揮者によるマーラー第3だったからか? まさか、ね。

 

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