読売日響・第504回名曲シリーズ

昨日はやや鬱陶しい空模様、気持もあまり晴れ晴れとはしない中、読響の名曲シリーズを聴いてきました。

《リムスキー=コルサコフ没後100年》
リムスキー=コルサコフ/スペイン奇想曲作品34
モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第4番二長調K218
~休憩~
リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」作品35
指揮/小林研一郎
ヴァイオリン/アリーナ・ポゴストキーナ
コンサートマスター/デヴィッド・ノーラン
フォアシュピーラー/鈴木理恵子

リムスキー=コルサコフ没後100年と銘打たれていますが、この2曲なら何も記念の年だからと言って特別に演奏する作品でもないでしょう。リムスキー=コルサコフを見直すのであれば、もう少し選曲に工夫が欲しいもの。特にプログラムに独自な視点を持つ読響なら尚更のことではないか、などと最初から少し拗ねた態度で聴いてしまいました。
記念年ということもあって、今年シェエラザードのナマ演奏に接するのは3度目です。意識しなくとも、比較して聴いてしまうのは止むを得ません。

コバケンさんを日本フィル以外で聴くのは久し振り、というか初めてかもしれません。そこにも多少の興味はありました。
ステージを駆けずり回るように登場するのは同じ。最初のスペイン奇想曲が賑々しく始まります。
ですが、どうにもかったるい。テンポが遅いのです。噛み締めるように、丁寧に音楽を進めていることは判るのですが、私にはどうも鈍い音楽に聴こえてしまいます。オーケストラは名人揃いだし、第4部の各種ソロには聴き惚れてしまうのですが、もっと浮き立つような興奮が欲しい。
特に第2曲の変奏曲。これだけ引っ張られると、マエストロには申し訳ないけれど、気持がイライラしてくるのでした。
それでも客席には大受け、最初から盛大なブラヴォが飛び交っていました。

続いてモーツァルト。でも何故モーツァルトなんでしょうか。
ここでは弦の編成をグッと落とします。多分8-6-4-3-1という編成。プルト数じゃなくて人数ですよ。指揮台も片付けてしまって、指揮者とヴァイオリニストが同じ位置で演奏します。コバケンさん、さすがにこの曲ではスコアを見て指揮していました。
モーツァルトの協奏曲は、サントリーの大ホールでは難しいですね。ポゴストキーナ嬢は1983年サンクトペテルブルク生まれだそうですから、まだ、というか、もう25歳。シベリウス国際ヴァイオリン・コンクールの覇者ですから、実力はあります。でも、モーツァルトだけでこの人をどうこう言うことは、私には出来ません。
美人であることは確かで、それは保証します。美人が出れば必ず最前列を占拠している例の怪人、この日は姿を見せなかったのが不思議です。よほどのアンチ・コバケンなんでしょうか。

で、後半。
シェエラザードは、それなりに面白く聴けました。スペイン奇想曲と同じようなことが言えるのですが、最初の曲で耳が慣れてしまった所為でしょう、テンポの遅さはあまり気にならなくなりました。
ただし、いわゆるコバケン節。シェエラザードではこれが全開で、好き嫌いが思いっ切り分かれてしまうでしょうね。
顕著な個所として、第3楽章を挙げましょう。5月に聴いた広上/東響では、この楽章の冒頭のアーティキュレーションを実に細やかに、立体的に描くことで作品の交響的性格を見事に浮き上がらせていました。
一方の小林研一郎も、このメロディーを独特な節回しで歌い上げることによって、独自な世界を現出して行きます。ただ、その節回しはあくまでもメロディーそのものに向けられ、平面的な感情表現に止まってしまう。
アウフタクトの冒頭の音を書かれた音符より長く引っ張るんですからね。
ここが指揮者の違いでしょう。一方はシェエラザードが「交響曲」として構築されるのに対し、こちらは「演歌」として歌い上げられる。
そう、演歌。それこそが小林研一郎の本質でしょう。私は何も演歌がいけない、と言っているのではありませんからね、念のため。私はこれが苦手、ただそれだけです。
演歌が好きな人は、当然ながらたくさんいて、小林研一郎に酔った聴衆からは大声援が贈られていました。
日本フィルでは儀式にすらなっている楽員総褒め上げと、客席に向かってのスピーチ、読響でもやっていました。“ワタクシは、指揮をするというより、読響の素晴らしい響きに酔っていました”。

ということで告げられたアンコール、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」は、演歌そのもの。
コバケン・パフォーマンス、初めて接した読響会員はさぞビックリしたことでしょう。そして大感激・大感動した聴衆も極めて多かった。それだけは間違いないでしょう。
今日、名人芸を披露したトップ奏者達は、
フルート 倉田優
オーボエ 辻功
イングリッシュホルン 浦丈彦
クラリネット 四戸世紀
ファゴット 吉田将
ホルン 山岸博
第2トロンボーン すいません、名前が判りません
チェロ・ソロ 毛利伯郎
ハープ すいません、この方も名前が判りません
あと、ティンパニはかつての首席・菅原淳が担当していました。

 

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