2015クラシック馬のプロフィール(8)

昨日に続き、今日は第236代ダービー馬ゴールデン・ホーン Golden Horn を取り上げます。無敗で戴冠したゴールデン・ホーンは父ケープ・クロス Cape Cross 、母フレーシュ・ドール Fleiche d’Or 、母の父デュバイ・デスティネーション Dubai Destiantion という血統。
結果的には1番人気で勝ちましたが、レース前はスタミナを疑問視する声があったのも事実。その辺りも頭に入れながらゴールデン・ホーンの血統を検討して行きましょう。

先ず父ケープ・クロスについて短く纏めると、現役時代はマイラーだったと断言して良いでしょう。3歳時に2000ギニーのトライアルであるクレイヴァン・ステークス(GⅢ)に勝ちましたが、本格化したのは古馬になってから。4歳でロッキンジ・ステークス(GⅠ)、5歳時にはクイーン・アン・ステークス(当時はGⅡ、現在のGⅠ)などに勝って最強古馬マイラーに選出されました。
ゴドルフィンの所有馬ということで、現役を引退してからは豪州とアイルランドを行き来するシャトル種牡馬として活躍。これまで豪州と欧州で約1ダースほどのGⅠ馬を輩出しています。
ヨーロッパでは何と言っても英愛オークスを制してBCフィリー・アンド・メア・ターフも2勝したウイジャ・ボード Ouija Board と、2000ギニー、ダービーに凱旋門賞のシー・ザ・スターズ Sea The Stars が重要。この2頭が出るまでケープ・クロスはマイラー系種牡馬と思われていましたが、配合によって長距離馬も生まれることを証明しました。ゴールデン・ホーンはケープ・クロスの2頭目のダービー馬となります。

ここから本論の牝系に入りましょう。母フレーシュ・ドール(2006年 鹿毛)は未出走。4歳から繁殖に入り、ゴールデン・ホーンはその2番仔で2頭目の勝馬となります。
2011年生まれの初仔はイースタン・ベル Eastern Belle (鹿毛 牝 父シャンゼリゼ Champs Elysees)と言い、今年のダービー馬と同じジョン・ゴスデン厩舎で2歳から3歳まで走り6戦1勝。勝鞍はニューバリー競馬場のリステッド戦(バリマコール・スタッド・ステークス、10ハロン)で、次走のナッソー・ステークス(GⅠ、10ハロン)では4着でした。
イースタン・ベルは3歳シーズンを最後にアメリカに転じ、ウイリアム・モット師の管理下でこれまで3戦、ダービーの前日にベルモント競馬場で行われたニューヨーク・ステークス(芝GⅡ、10ハロン)で2着したばかり。当ブログでも紹介した直後に、半弟が英国のダービーを制したことになります。イースタン・ベルの次走に注目が集まることは必至、姉弟揃ってGⅠ馬になる可能性も充分ありそうです。

この2頭の下、2013年生まれはゴールデン・レインズ Goden Rigns と命名され、父はイースタン・ベルと同じシャンゼリゼ。恐らくゴスデン厩舎に所属すると思われますが、現時点では未出走です。

続いて2代母ヌルヤーナ Nuryana (1984年 鹿毛 父ヌレエフ Nureyev)に移りましょう。彼女はジェフリー・ラグ厩舎に所属し7戦2勝、勝鞍は何れも3歳時のもので、6月のヨークでレヴェルの高い1マイルの未勝利戦と10月のアスコットでやはり1マイルのリステッド戦を逃げ切ったもの。勝鞍は共に渋った馬場で、レースホース誌は107の評価を与えました。繁殖に入ってからのヌルヤーナ、その成績は一覧表にしておきましょう。
1989年 ミスティック・パーク Mystic Park 栗毛 牡 父レインボウ・クエスト Rainbow Quest 2戦1勝、勝鞍は2歳時の1マイル戦
1990年 ヌルヤンドラ Nuryandra 鹿毛 牝 父リファレンス・ポイント Reference Point 11戦1勝 勝鞍は2歳時の6ハロン戦 豪商で繁殖牝馬
1991年 ミスティック・ヒル Mystic Hill 鹿毛 せん 父シャーリー・ハイツ Shirley Heights 22戦4勝 勝鞍は10ハロンから13ハロンまでのもの
1993年 ミスティック・ナイト Mystic Knight 鹿毛 牡 父カーリアン Caerleon 13戦3勝 リングフィールド・ダービー・トライアル(GⅢ、11ハロン)に勝ち、ダービーは6着
1994年 レベッカ・シャープ Rebecca Sharp 鹿毛 牝 父マキャヴェリアン Machiavellian 9戦2勝 彼女に付いては別記
1996年 マヨ Mayo 鹿毛 牡 父ナシュワン Nashwan 6戦2勝 勝鞍は3歳時の10ハロン戦と10.5ハロン戦 障害レースにも出走
1997年 ロッセ Rosse 栗毛 牝 父クリス Kris 9戦2勝 勝鞍は共に3歳時の7ハロン戦
1998年 カーノーモア Caernomore 鹿毛 せん 父カーリアン 14戦未勝利 障害レースにも出走
2000年 イスラ・アズル Isla Azul 栗毛 牝 父マキャヴェリアン 8戦未勝利
2001年 ヒドゥン・ホープ Hidden Hope 栗毛 牝 父デイラミ Daylami 9戦1勝 勝鞍はチェシャー・オークス(リステッド戦、11ハロン)。ポモヌ賞(GⅡ、2600メートル)2着、ランカシャー・オークス(GⅡ、12ハロン)2着、プリンセス・ロイヤル・ステークス(GⅢ、12ハロン)3着。ガルトレス・ステークス(リステッド、12ハロン)勝馬アワ・オブセッション Our Obsession の母
2003年 二アルヒニ Nyarhini 鹿毛 牝 父ファンタスティック・ライト Fantastic Light 5戦1勝 勝鞍は2歳時の6ハロン戦 リステッド戦で3着2回
2005年 ウェイブリッジ・ライト Weybridge Light 鹿毛 せん 父ファンタスティック・ライト 平場と障害で70戦6勝 平場の勝鞍は12ハロンから14ハロン
2006年 フレーシュ・ドール 彼女がヌルヤーナの最後の産駒になりました。

この内最も活躍したのが、1994年産の牝馬レベッカ・シャープ。彼女も母と同じくジェフリー・ラグ師が管理しましたが、名前はサッカレーの「虚栄の市」に登場するヒロインの名前に因んだもの。貧しい生まれの娘が美貌と才能で世の中を渡り切っていくというストーリーですが、映画化されたこともあります。
馬のレベッカ・シャープは決して貧しい生まれとは言えず、一種の皮肉と取れなくもありませんが、3歳時に7ハロン戦で初勝利。1000ギニーに挑戦して15頭立て13着と大敗しましたが、次走ロイヤル・アスコットのコロネーション・ステークス(GⅠ、1マイル)に優勝。更にフォルマス・ステークス6着、アスタルテ賞2着、ムーラン・ド・ロンシャン賞7着、クィーン・エリザベスⅡ世ステークス2着、チャレンジ・ステークス2着と、トップクラスのマイル戦で健闘し続けた牝馬でした。

3代母ローラレーン Loralane (1977年 鹿毛 父ハビタット Habitat)もジェフリー・ラグ師の父ハリー・ラグ厩舎で9戦1勝した馬で、勝鞍はニューマーケットの7ハロンの未勝利戦、23頭立てのレースでした。
そして4代母ローラ Lora (1972年 鹿毛 父ローレンザッキオ Lorenzaccio)は7戦未勝利でしたが、ローラレーンの2歳下にオン・マ・ハウス On The House を出します。オン・マ・ハウスは1982年の1000ギニーを33対1で制し、クラシック馬として臨んだサセックス・ステークスも14対1で勝つという、何時走るか判らない典型的な穴馬タイプでした。
余談ですが、彼女の名前は「オン・ザ・ハウス」とは読まず、「オン・マ・ハウス」。意味は「(主人の)おごりで」とか「ただで」と言うことだそうで、読み方も含めて同馬のお蔭で雑学的な興味を満足させて貰ったものです。

5代母カウンテッサ Countessa (1955年 鹿毛 父シュープリーム・コート Supreme Court)には、キングズ・スタンド・ステークスを勝った短距離馬ダバーヴィユ D’Urberville があり、ローラの姉クライレッサ Klairessa (1969年)からは、GⅠ級の短距離重賞に6勝した名牝ハビブティ Habibti が出ました。
ハビブティが制したG戦は、ジュライ・カップ、キングズ・スタンド・ステークス、アベイ・ド・ロンシャン賞、ナンソープ・ステークス、ヴァーノンス・スプリント・カップ、モイグレア・スタッド・ステークスなど、現在は全てGⅠに格付けされているスプリントの最高峰。彼女の孫からもイタリア・ダービー馬モーシュディ Morshdi が出ており、配合次第では長距離も克服しています。
またクライレッサの娘エイト・カラット Eight Carat は豪州で繁殖入りし、その産駒にオーストラリア・ダービー(AJCダービー)に勝ったオクタゴナル Octagonal 、孫にも同じくオーストラリア・ダービー馬ドン・エドゥアルド Don Eduardo があります。

そして、この牝系は日本でもお馴染みの6代母テッセ・ジリアン Tessa Gillian (1950年 鹿毛 父ネアルコ Nearco)に遡ります。テッサ・ジリアンの産駒では、テッソ Tesso とテスト・ケース Test Case の半兄弟が種牡馬として日本に輸入され、テッソは天皇賞・有馬記念のコレヒデやコウジョウ、ラファールなど。テスト・ケースも京都大賞典のイシノマサルを出して日本の競馬ファンに親しまれました。
当時はコンピューターなど無く、サラブレッドの5代血統表は種牡馬録や牝系大系などをひっくり返しながら手製したものでした。何度「Tessa Gillian」というスペルを書き写したことか・・・。

テッサ・ジリアンを更に2代遡ると、即ちゴールデン・ホーンの8代母には高名なマムタツ・ビーガム Mumtaz Begum が登場する牝系で、ナスルーラー Nasrullah 、ミゴリ Migoli 、プティット・エトワール Petite Etoile など名馬は枚挙に暇がありません。
ダービー馬にしてもゴールデン・ホーンは5頭目。19世紀の2頭を除いても、1936年のマームード Mahmoud 、1981年のシャーガー Shergar がエプサムの12ハロンを先頭で駆け抜けています。

ファミリー・ナンバーは9-c。生年不詳のクラブ・メア Crab Mare を基礎とする牝系です。

 

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