2015クラシック馬のプロフィール(7)

今年のヨーロッパ・クラシック馬、7頭目は英オークスを最低人気で制したクオリファイ Qualify を取り上げます。個人的にはレガティッシモ Legatissiomo のスタミナが何とか保ってくれれば、プロフィール稿は一つ助かったのですが・・・。
さてクオリファイは父ファスネット・ロック Fastnet Rock 、母ペリへリオン Perihelion 、母の父ガリレオ Galileo という血統。父はスプリンター、母の父はステイヤーでしたから、クオリファイの場合は明らかに牝系のスタミナが強く出た配合と断言して良いと思います。

その牝系に入る前に、余り馴染の無い種牡馬ファスネット・ロックについて簡単に触れておきましょう。実はファスネット・ロックという名の種牡馬は、戦後間もない頃に同じ名前のフランス産馬がいて、私はそちらに親しみがありました。もちろんクオリファイの父はフランスの種馬とは全く無関係で、2001年にオーストラリアで産まれたデインヒル Danehill →ダンジグ Danzig →ノーザン・ダンサー Northern Dancer と遡る現役の種牡馬です。
クールモアのシャトル種牡馬で、アイルランドと豪州を往復。初産駒は2006年生まれですから、クオリファイは7年目の産駒ということになります。ここで細かいことに触れるより、レーシング・ポストのホームページから種牡馬プロフィールをご覧ください。↓

http://bloodstock.racingpost.com/stallionbook/stallion.sd?popup=1&horse_id=596550

このページの Race Record をクリックすればその競走成績が、Stud Record をポチンとやれば種牡馬成績が出てきます。
要約すると、競走馬としてはポール・ペリー厩舎、クールモアの勝負服で2シーズン走り、4歳時にオークレー・プレートという1100メートルの短距離GⅠとライトリング・ステークスという1000メートルのGⅠに勝ったスプリンターです。
また産駒は今日現在48頭がG戦に勝っており、GⅠホースは約20頭に及びます。ほぼ全てが豪州各地のギニー馬を中心にダービー馬やオークス馬も出しており、牝系によってはスタミナ・タイプも出す。言い換えれば、自身のDNAより肌馬の良い所を引き出すタイプでしょうか。

父は以上にして、母ペリへリオン(2005年 栗毛)に行きましょう。彼女もクオリファイ同様エイダン・オブライエン師が管理、オブライエン夫人の勝負服で2・3歳の2シーズンに14戦して1勝の成績を残しました。唯一の勝鞍は3歳時、5戦目にベルースタウンというマイナーな競馬場2500メートル戦で挙げたもので、この時は2着以下に9馬身の大差を付けていました。
余勢を駆って愛オークスに挑戦したものの14頭立て11着、秋にはドンカスター競馬場に遠征して牝馬のセントレジャーと呼ばれるパーク・ヒル・ステークス(GⅡ)でアレグレット Allegretto の2着に健闘します。1戦置いてニューマーケットのプライド・ステークス(GⅡ)にも遠征、クリスタル・カペラ Crystal Capella の5着で現役を終えます。レースホース誌の評価は105、2マイルまではステイする筈と評価していました。一言で言えば、ガリレオ産駒のステイヤー。
繁殖に上がってからはクオリファイが3頭目の産駒で、2頭目の勝馬。現時点では以下の4頭が登録されています。
2010年 サルタナ Saltana 鹿毛 牝 父デューク・オブ・マーマレイド Duke of Marmalade ドイツやチェコで走っているようで、記録が判っている限りでは5戦未勝利
2011年 サテライト Satellite 鹿毛 牡 父デインヒル・ダンサー Danehill Dancer ウイリアム・ハッガス師が管理し、10ハロンから12ハロンで7戦1勝。勝鞍はライポン競馬場のデビュー戦で、距離は10ハロン。
2012年 クオリファイ
2013年 ショーグン Shogun 鹿毛 牡 父ファスネット・ロック 未出走

2代母はメディコスマ Medicosma (1986年 栗毛 父ザ・ミンストレル The Minstrel)。ジャドモント・ファームの生産馬でハーリッド・アブダッラー氏が所有、バリー・ヒルズ厩舎で9戦2勝した馬で、勝鞍はライポン競馬場で2500メートルのハンデ戦と、ニューカッスル競馬場で3200メートルのハンデ戦に勝ったもの。典型的なステイヤーですね。残念ながらその産駒はクオリファイの母意外に目立った活躍馬は、現時点では出ていません。

続いて3代母メディア・ルナ Media Luna (1981年 鹿毛 父スター・アピール Star Appeal)。彼女も11戦1勝と勝鞍こそ一つでしたが、オークスで2着というクラシック・ニアミスを経験した馬でした。
2歳時は仕上がらず、3歳のデビュー戦、チェプトウ競馬場の10ハロン戦で挙げた勝鞍が唯一の勝利となります。ところが4戦1勝で迎えたオークス、何の実績も無く66対1という全くの伏兵でしたが、距離が伸びたことで覚醒、勝ったサーカス・プリューム Circus Plume を首差まで追い詰める激走でした。それから31年後、ひまご娘が50対1のオークスを制したのですから競馬は面白い。血統研究の醍醐味と申せましょう。
しかしその後のメディア・ルナは成績不振、フランスやアイルランドのG戦に挑戦し続けましたが、オークスのパフォーマンスを再現することは出来ませんでした。孫娘が2着したパーク・ヒル・ステークスにも出走しましたが、弁解不明の大惨敗に終わっています。パーク・ヒル・ステークスについてはこの後も登場してきますので、頭の片隅に置いて下さい。

そのまま引退したメディア・ルナは、メディコスマの他にGⅠ級勝馬の母となる2頭の娘がありました。1頭はケンタッキー・オークスとアラバマ・ステークスのGⅠ戦に2勝したフリュート Flute の母ルージャー Rougeur (1989年)。そしてもう1頭が、今年のオークス・レポートでもチラっと紹介したダービー馬ワークフォース Workforce に繋がるエヴァ・ルナ Eva Luna (1992年)です。
エヴァ・ルナは、母メディア・ルナが惨敗したパーク・ヒル・ステークスに勝って母の汚名を削いだ馬で、母馬としても大活躍。1999年に産んだムーン・サーチ Moon Search がフランスのGⅡ戦ロワイヤリュー賞を制します。
続いて2000年生まれのブライアン・ボルー Brian Boru も2歳時にレーシング・ポスト・トロフィーに勝ち、3歳でセントレジャーに勝ってクラシック馬の栄誉を獲得。愛ダービーは4着、4歳時には古馬にも開放された愛セントレジャーで2着に入りました。

そして2001年生まれのソヴィエト・ムーン Soviet Moon がワークフォースの母となり、ダービーと凱旋門賞というヨーロッパの2大長距離戦を制してチャンピオンに輝きます。この二つのレースで騎乗したのがライアン・ムーアで、クオリファイがムーア騎乗の本命レガティッシモを破ってショッキング・オークスを演じたのも、また競馬の因縁話に続くわけですな。
エヴァ・ルナの産駒では、更に2008年生まれのシー・ムーン Sea Moon がグレート・ヴォルティジュール・ステークスとハードウィック・ステークスとGⅡに2勝したほか、セントレジャー3着、アメリカのブリーダーズ・カップ・ターフで2着とトップクラスの成績を残しています。

4代母はスニオン Sounion (1961年 鹿毛 父ヴィミー Vimy)。6戦し、ラナーク競馬場で1マイル半の未勝利戦に勝っただけでしたが、繁殖牝馬として成功。娘のスーニ Suni が又してもオークスで3着、この牝系に因縁のオークス史を彩ります。産駒は全てがミドルディスタンス・ホースかステイヤーという長距離血統でした。
5代母のエスカイヤ・ガール Esquire Girl (1952年 鹿毛 父マイ・パブ My Babu)は13戦3勝。娘のルーシーロウ Lucyrowe はコロネーション・ステークス、ナッソー・ステークス、サン・チャリオット・ステークスとGⅠ級(当時パターン・レース・システムは無かった)に3勝しており、愛セントレジャー馬オパール Opale の3代母にもなっています。

そして6代母はチーヴリー・パーク・ステークスに勝った高名なレディー・シビル Lady Sybil で、更に4代遡るとこの牝系の基礎として分岐した伝説の名馬プリティー・ポリー Pretty Polly に行き当たることになります。
余談かも知れませんが、1000ギニー、オークス、セントレジャー、コロネーション・カップ二度、チャンピオン・ステークス、コロネーション・ステークス、ナッソー・ステークス、ミドルパーク・ステークス、チーヴリー・パーク・ステークスと、今日の格付けでGⅠに相当するレースに10勝した変則三冠馬プレティー・ポリーには4頭の重要な娘がありました。
即ち、①モーリー・デスモンド Molly Desmond (1914年) ②ダッチ・マリー Dutch Mary (1915年) ③ポリー・フリンダース Polly Flinders (1918年) ④ベビー・ポリー Baby Polly (1924年)。

今年のオークス馬クオリファイにまで繋がるのは①モーリー・デスモンドから枝葉を広げてきた牝系で、このファミリーだけで1冊の血統史が纏められるほどです。

ファミリー・ナンバーは14-c。上記の様に、9号族からボビンスキーが比較的新しくプリティー・ポリーを独立させた牝系です。

 

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