ゴスデン/デットーリの英仏クラシック2冠
今日は先ず仏オークスから行きましょう。日曜日のシャンティー競馬場はG戦が3鞍組まれていましたが、最初に行われたG戦がフランス・オークス、正式にはディアーヌ賞 Prix de Diane (GⅠ、3歳牝、2100メートル)でした。仏ダービーが2005年に2400メートルから2100メートルに短縮されたのとは異なり、こちらは最初から2100メートルが正式な距離です。
馬場は good 、枠順紹介した17頭がそのまま出走してきました。17対10の1番人気は、大外枠を引いた3戦無敗のクィーンズ・ジェウェル Queen’s Jewel 。最も信頼できるトライアルのサン=タラリ賞(GⅠ)を圧勝した馬で、これを恐れてかサン=タラリ組は全て回避してしまったほどです。
続く2番人気(47対10)には同じく3戦無敗で馬名の読み方が難しいモホ・リシン Mojo Risin 。これも2戦無敗のフィジオクラート Physiocrate が3番人気(83対10)で続き、馬券場は無敗の3強対決と言うムードでした。
ラビットの役割でハナを奪ったのは下から3番目、15番人気(54対1)のクラーミナ Clarmina で、2番枠を活かして先ず逃げます。これを6番人気(171対10)のスター・オブ・セヴィル Star of Seville が追走、17番の外枠ながら積極的に前で競馬する作戦でしょう。残りはほぼ一団で固まり、クィーンズ・ジェウェルは中団で待機します。
逃げたクラーミナが役目を終えるとスター・オブ・セヴィルが先頭に立ち、思い切って内ラチ沿いに進路を取ります。本命クィーンズ・ジェウェルは残り2ハロンで勝ち負けの位置取りでしたが、そこから意外に伸びず、結果的には11着敗退。替って好位置を進んでいたフィジオクラートが抜けましたが、スター・オブ・セヴィルが前に切れ込んだため止む無く外に出して追い上げたものの、ゴールでは1馬身届かず無念の2着。同じく馬群の中にいた5番人気(13対1)のリトル・ナイチンゲール Little Nightingale が4分の3馬身差で3着に食い込みました。
以下、当日になって急激に人気が上がって4番人気(17対2)に支持されたデジレー・クラリー Desiree Clary が4着、7番人気(20対1)で仏1000ギニー9着馬サント・アマランテ Sainte Amarante が5着。
15番という外枠を克服、積極策が奏功したスター・オブ・セヴィルは、英国のジョン・ゴスデン厩舎、フランキー・デットーリの騎乗。と言えば、8日前にゴールデン・ホーン Golden Horn で英ダービーを制したのと同じコンビです。英ダービーと仏オークスのダブルという快挙は、デットーリにとっては何と2度目のこと。2007年にダービーをオーソライズド Authorized で、仏オークスをウエスト・ウインド West Wind で制して以来のこととなります。そもそもダービーも仏オークスもデットーリにとってはこの2勝づつがあるのみですから、改めて運命の偶然に驚き入ってしまいました。
また英国調教馬が仏オークスを制したのは、2006年にコンフィデンシャル・レディー Confidential Lady で勝ったサー・マーク・プレスコット師以来のこととなります。プレスコット師と言えば、以前に三浦皇成騎手が英国武者修行に出掛けた時にその身柄を引き受けてくれた伯楽としてご存知の方もあるでしょう。
ダービー馬はオッペンハイマー氏の所有馬ですが、こちらは有機農業で高名なレディー・バムフォードさん。その美貌はこちらをご覧ください。
https://en.wikipedia.org/wiki/Carole_Bamford
話を馬に戻すと、スター・オブ・セヴィルは9日前にエプサムのオークスにも出走していました。その時は道中の不利もあって9着に敗れていましたが、その翌週には海を渡ってのクラシック制覇、日本では考えられないようなローテーションですね。ヨーロッパでも強行軍では、と受け取られていたようで、デットーリも友人から訝しがられたとコメントしています。
オークスの前にはヨークでミュジドラ・ステークス(GⅢ)に勝っており、G戦は2勝目。その血統に付いては後日改めましょう。
仏オークスのレポートはこの位にして、次はリス賞 Prix du Lys (GⅢ、3歳、2400メートル)。ダービーが2100メートルに短縮されたことに伴い、パリ大賞典の距離は2400メートルに変更されました。リス賞はそのトライアルと言える位置付け、ダービーは間に合わなかった馬、より長い距離に適性のある馬のグランプリ・トライアルと言えそうです。
7頭が出走し、人気は接近していましたが、アガ・カーン所有馬で3歳デビュー、サン=クルーで2連勝してきたダリーヤン Dariyan が17対10の1番人気。
5番人気(99対10)のピランスバーグ Pilansberg が逃げ、ダリーヤンは後方の外に待機。しかし伸びたのは4番人気(58対10)で4番手の外に付けていたイラプト Erupt (フランス読みなら「エリュプト」)で、先行していた2番人気(11対5)のサラシン Sarrasin を首差捉えて優勝。1馬身半差で逃げたピランスバーグが3着に粘り、ダリーヤンは追い込むも届かず4着に終わりました。
フランシス・グラファール厩舎、ステファン・パスキエ騎乗のイラプトは、地方競馬のリヨンで3歳デビューから2連勝してきた馬。これで3連勝、G戦はもちろん初勝利で、グランプリ制覇に弾みを付けました。
オークス・デイ、即ちレディース・デイの最後は一昨年まで「北鉄道賞 Prix Chemin de Fer du Nord」と呼ばれていたベルトラン・ド・ブレイユ賞 Prix Bertrand du Breuil (GⅢ、4歳上、1600メートル)。6頭が出走し、去年の2冠牝馬アヴニール・セルタン Avenir Certain が7対5の1番人気。今期デビューとなった前走ミュゲ賞では8頭立て7着と惨敗しており、休養明け2戦目での復調に期待が掛かります。
2番人気(23対10)のフィントリー Fintry が逃げ、アヴニール・セルタンは例によって後方待機。直線で外に出し、前走とは一転して鋭く追い上げましたが、ゴールでは逃げたフィントリーを半馬身捉えられず2着でした。調子が上がってきたことは間違いなさそうで、次走に期待と言う所か。1馬身4分の3差で3番人気(22対5)のフォーフィラ― Faufiler が3着に入り、まずは順当。
アンドレ・ファーブル厩舎、ミケール・バルザロナが騎乗したフィントリーはゴドルフィンの馬で、3歳時の去年は6月にシャンティーのサンドリンガム賞(GⅡ)、8月には英国に遠征してサンダウンのアタランタ・ステークス(GⅢ)を制していました。秋にはサン・チャリオット・ステークス(GⅠ)で3着、今期初戦のダーリア・ステークス(GⅡ)では5着でしたが、今回はほぼ1年振りに地元での勝利となります。
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