愛ダービーは英のワン・ツー!

今日はアイリッシュ・ダービー Irish Derby (GⅠ、3歳、1マイル4ハロン)から始めましょう。6月27日、good 、所により good to firm のカラー競馬場で行われたアイルランドのプレミエ・クラシック。今年が150回目と言う記念の年でもありました。

既に枠順を紹介したように8頭立て。クラシック勝馬では英オークス馬クオリファイ Qualify のみが参戦し、英仏ダービー馬は共に回避しました。替ってエプサムではゴールデン・ホーン Golden Horn に完敗したメンバーから5頭が参戦し、その結果が英ダービーの評価にも反映するだろうという興味深いクラシックでもありました。
10対11と単勝2倍を切る圧倒的な1番人気に支持されたのは、英ダービー2着のジャック・ホッブス Jach Hobbs 。続いて11対4の2番人気には4頭出しで臨むエイダン・オブライエン厩舎の中からライアン・ムーアが選んだ仏ダービー2着馬のハイランド・リール Highland Reel 。言わば2着同士の英仏対決で、二つのダービーのレヴェル比較にもなる一戦です。

レースは5番人気(10対1)で英ダービー3着のストーム・ザ・スターズ Storm the Stars が逃げ、これをピタリとジャック・ホッブスがマークする展開。しかし2ハロン地点では早くも先頭に立った本命馬、そのままストーム・ザ・スターズに5馬身差を付ける圧巻のクラシック制覇です。粘ったストーム・ザ・スターズから、前2頭を追った3着ジョイント3番人気(8対1)のジョヴァンニ・カナレット Giovanni Canaletto までは更に5馬身半の大差。
以下7番人気(20対1)キリマンジャロ Kilimanjaro が4着、ハイランド・リールは5着完敗で、英仏対決は文句なくエプサム・ダービー組の圧勝に終わりました。ジョイント3番人気に支持されたクオリファイは更にその後、6着惨敗。

終わって見れば勝馬の抜けた英ダービー2・3着馬が、ここではワン・ツー、英国調教馬としても1・2着独占の結果となりました。ジャック・ホッブスはこれがG戦初勝利ですが、ダービーではゴールデン・ホーンと3馬身半差、その前のダンテ・ステークスでは2馬身4分の3差で、ダービー馬とはなお決定的な差があることも明らかです。英愛二つのダービーに紛れが無かったということは、即ち両ダービーともレヴェルが高いということで、今年の3歳牡馬はこれからの古馬混合戦でも「買い」ということでしょう。
勝馬は改めて紹介するまでも無く、英国のジョン・ゴスデン師の管理馬で、師は英愛ダービー・ダブル達成。ゴスデン厩舎は愛ダービー初制覇となります。鞍上はウイリアム・ビュイック、以前はゴスデン厩舎の主戦ジョッキーでしたが、今回はオーナーであるゴドルフィンの主戦ジョッキーとしての騎乗でした。イギリス調教馬が愛ダービーを制したのは、何と1993年のコマンチ・ラン Commanche Run 以来22年振り、ゴドルフィンも1994年牝馬のバランシン Balanchine 以来の勝利となります。勝馬を生産したのは、往年の名騎手ウイリアム・カーソン氏だそうな。

陣営によれば、ジャック・ホッブスはこの後夏場は一旦放牧し、秋はニエル賞から凱旋門賞の2戦のみでシーズンを締め括るとのこと。強力な凱旋門賞候補出現で、オッズは8対1が提示されました。
一方ウイリアム・ハッガス厩舎のストーム・ザ・スターズは、最長距離のクラシックであるセントレジャーに向かう公算が大きいようで、こちらは5対1と高評価が出されています。

愛ダービー・デイのG戦はもう一鞍、アイルランドではシーズン最初の2歳G戦となるレイルウェイ・ステークス Railway S (GⅡ、2歳、6ハロン)。5頭が出走し、3週間前に同じカラーの6ハロン戦を4馬身4分の1差で圧勝したロッカウェイ・ヴァレー Rockaway Valley の評価が高く、ノーフォーク・ステークス(ロイヤル・アスコットのGⅡ)2着馬ログ・アウト・アイランド Log Out Island を抑えて11対5の1番人気。
レースは2番人気(13対8)に甘んじたログ・アウト・アイランドが逃げ切りを図りましたが、2番手を追走していた5番人気(7対1)の伏兵ペインテッド・クリフス Painted Cliffs が2ハロン地点で並び掛けると、3番手から追い上げる本命ロッカウェイ・ヴァーレーに2馬身4分の3差を付ける完勝。1馬身4分の1差でログ・アウト・アイランドが3着、唯1頭の未勝利馬サーファー Saafarr は競走を中止しています。

勝ったペインテッド・クリフスは、エイダン・オブライエン厩舎、ライアン・ムーア騎乗。この陣営でブービー人気とは随分侮られたものですが、2走前のデビュー戦は8着と凡走し、その時の2着がロッカウェイ・ヴァレーでした。前走レパーズタウンではブリンカーを装着し、2戦目で未勝利を脱したばかり、9日前のレースです。初戦の凡走は嘘のような今回の走りでしたが、ブリンカーが奏功したのかは不明。オブライエン師は近い将来には外して競馬させる意向だそうです。
そのオブライエン師、この伝統ある2歳戦(1851年創設、今年が162回目。と言うことは愛ダービーより長い歴史がある)は12勝目。その中には2001年のロック・オブ・ジブラルタール Rock of Gibraltar 、2005年のジョージ・ワシントン George Washington 、2008年のマスタークラフツマン Mastercraftsman などの大物も多数。ペインテッド・クリフスがクラシックを狙える器にまで成長するかは、今後のレース次第と言うことでしょう。

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください