無敗で凱旋門賞?

昨日のフランスはバスティーユ・デイ。フランス革命記念日で、所謂パリ祭の休日でした。かつて日本でもシャンソンが好まれていた頃はパリ祭も有名でしたが、最近は報道するマスコミもほとんどありませんね。
パリ祭はパリ大賞典、というのが最近の傾向のようで、去年こそ連休だったため前日の日曜日に前倒して行われたグラン・プリでしたが、今年は定位置に戻って行われました。

この日のロンシャン競馬場は good 、G戦は2鞍です。先に行われたのは古馬の長距離戦モーリス・ド・ニエィユ賞 Prix Maurice de Nieuil (GⅡ、4歳上、2800メートル)。長距離と言ってもやや中途半端な印象ですが、1頭が取り消して6頭が出走してきました。
前走アスコット・ゴールド・カップでは5着に敗れましたが、その前にはヴィコンテス=ヴィジエ賞(GⅡ)に勝っている5歳馬バサイロン Bathyron が4対5の1番人気。

スタートが良かった最低人気(31対1)のワルツァータクト Walzertakt が逃げましたが、最初は中団に付けていたバサイロンがペース遅しと見たか、5ハロン地点から思い切って先頭に立ち、そのまま逃げ切る構え。しかし一旦2番手に控えたワルツァータクトが再び本命馬との差を詰めた所に、後方から3番人気(43対10)のフリーネ Frine がインコースに切れ込みながら追い上げ、3頭が並んでゴール。
写真判定の結果、ワルツァータクトが短首差バサイロンを抑えて1着、同じく短頭差でフリーネが3番手でした。しかしフリーネが最後に内に斜行したことで、後続2頭が大きな不利。審議の結果4番手で入線した2番人気(5対2)のグレアリング Glaring が3着に、5番手入線の4番人気(44対5)のスピリットジム Spiritjim が4着に繰り上がり、フリーネは5着降格と、結果もレースも大荒れになってしまいました。

アクシデントには無関係だったワルツァータクトは、名前から想像できるようにドイツ産馬。今年の3月まではドイツでマリオン・ローテリング夫人という方が調教していましたが、5月からは現在のジャン=ピエール・カルヴァルホ厩舎に移籍した6歳馬。ドイツ時代の成績は不詳ですが、去年4000メートルのリステッド戦に3着した他に少なくとも3勝はしていたようです。
カルヴァルホ厩舎に移ってからはサン=クルーのリステッド戦で3着、古巣のドイツに遠征してオレアンダー・レンネン(GⅢ)で3着、そして前走シャンティーで3000メートルのリステッド戦で3着。いずれにしてもフランスでは初勝利、パターン・レースももちろん初勝利のようで、これからもフランスとドイツを行き来しながら長距離戦を使われていくタイプなのでしょう。

そして愈々パリ大賞典 Grand Prix de Paris (GⅠ、3歳牡牝、2400メートル)。今年は6頭と出走頭数も少なく、牝馬の挑戦もありません。11対10の1番人気に支持されたのは、アンドレ・ファーブル厩舎の無敗馬(2戦2勝)アンペール Ampere 。3歳デビューで2戦目にオカール賞(GⅡ)を制しましたが、クラシックには参戦していません。恐らく軽度の故障があったのかも知れませんが、その辺りの情報は得ていません。
レースはアイルランドからオブライエン師が送り込んだ最低人気(177対10)のアーチエンジェル・ラファエル Archangel Raphael が逃げましたが、人気通り格下。替って2番手を進んでいた2番人気(29対10)でダービー3着・愛ダービー2着の英国馬ストーム・ザ・スターズ Storm the Stars が先頭に立ちましたが、何故か精彩を欠き、3番手に付けていた4番人気(73対10)のイラプト Erupt が残り1ハロンでハナに立つと、最後方の内から追い縋るアンペールに2馬身差を付ける楽勝です。
更に1馬身4分の1差でストーム・ザ・スターズは3着に終わり、前走ロイヤル・アスコットでキング・エドワード7世ステークス(GⅡ)に勝った3番人気(7対2)のバリオス Balios も5着と、英国勢は不発に終わりました。

フランシス=アンリ・グラファール厩舎、ステファン・パスキエ騎乗のイラプトは、本命馬と同じように3歳デビューで、前走リス賞(GⅢ)を含めこれで4戦4勝。本来は重馬場を好むタイプだそうですが、これまでは良馬場で連勝し、この日も稍重程度。それでいて余力充分の楽勝でしたから、明らかに雨が多い秋競馬で本格化することは必至でしょう。
グラファール師はパリ大賞典初制覇、パスキエ騎手は2007年のザンベジ・サン Zambesi Sun に続く2勝目となります。またオーナーのニアルコス・ファミリーにとっても2004年のバゴ Bago (当時は2000メートルでしたが)に続く2勝目。当然ながら凱旋門賞に向けた新たな有力馬と言うことで、オッズは10対1から14対1とブックメーカーによって対応は様々です。

ニアルコス・ファミリーのバゴは無敗でパリ大賞典を制し、ニエル賞3着から凱旋門賞を制した馬。またイラプトのローテーションも、2006年にリス賞→パリ大賞典→ニエル賞→凱旋門賞(ディープインパクトを一蹴)と一気に頂点に立ったレイル・リンク Rail Link を髣髴とさせ、このまま無敗で凱旋門賞で女王トレーヴ Treve と対決するというシーンが見られるかもしれません。

 

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