ベートーヴェンだけじゃないベートーヴェン旅

前回に続き、24日のプロムスはアンスネス/マーラー室内管によるベートーヴェン・ピアノ協奏曲全曲演奏会の2回目でした。東京公演とは違って、中々ナマ演奏では聴く機会が少ない現代作品との組み合わせが魅力的です。

7月24日 ≪Prom 10≫
ストラヴィンスキー/ダンバートン・オークス協奏曲
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第3番
     ~休憩~
シェーンベルク/地上の平和
ベートーヴェン/合唱幻想曲
 マーラー室内管弦楽団
 ピアノと指揮/レイフ・オヴェ・アンスネス Leif Ove Andsnes
 合唱/BBCシンガーズ
 指揮/デヴィッド・ヒル David Hill

今回はストラヴィンスキーからスタート。前夜と同じくマーラー室内オケが指揮者無しで演奏しましたが、これが実に見事な出来栄えでしたね。
ダンバートン・オークス協奏曲はストラヴィンスキーのバッハ讃の一曲で、言わばブランデンブルグ協奏曲の現代版でしょう。フルート・クラリネット・ファゴットが各1本、ホルン2本に10人の弦楽器奏者(ヴァイオリン3、ヴィオラ3、チェロ2、コントラバス2)による3楽章。
今回改めてスコアを見ながら聴きましたが、第2楽章の練習番号41から出るフルートのパッセージは、明らかに組曲第2番のバディヌリからの引用でしょう。私はバッハのパッセージを聴いて直ぐに判るほどバッハを聴いていませんが、他にもバッハ作品の断片が使われているのかもしれません。

バッハの現代版と言っても変拍子は極めて頻繁で、よほど集中していないとスコアを追い掛けるのにも苦労する難曲。これをマーラー室内管のメンバーは完璧に演奏して退けましたね。いやぁ~見事でした。単にベートーヴェンの付け合せじゃない。

それは後半を開始するシェーンベルクにも言えることで、こちらはア・カペラの合唱作品。BBCシンガースのデヴィッド・ヒルが指揮しました。もちろんアンスネスとは無関係の演奏です。
この作品は手元に譜面がありませんが、幸いなことにIMSLPで閲覧もダウンロードも可能。私もそうして楽しみました。原作はドイツ語のタイトルで、Friede auf Erden 作品13。興味ある方はこの曲名で検索してみてください。

さてベートーヴェンですが、第3協奏曲が始まる前にピアノの「A」でチューニングが始まります。ピアノの音が鳴ると同時に客席からブラヴォ~が上がり、他の人たちも一斉に拍手。
ここでBBCは直ぐに解説を入れ、これはプロムスの伝統であることを紹介。日本でこれをやったら非難されるのがオチでしょう。我が国の音楽教育は明治初期にドイツから入ったものですが、ハンスリックの教養主義が徹底的に浸透した結果、クラシック音楽は高尚な趣味として敷居が高くなってしまいました。
あの時にもし英国から音楽の様々な局面が紹介されていたなら、日本に於ける西洋音楽の受容も現在とはずっと違ったものになっていたでしょうに・・・。

ということでベートーヴェンに付いては触れることも無いでしょう。3番のカデンツァは、前日と同じベートーヴェンの自作。

 

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