アンスネスのベートーヴェン最終回
さて二日間続けて楽しんだアンスネス/マーラー室内管のベートーヴェン/ピアノ協奏曲全曲演奏会ですが、二日目の後は一日休憩を置いてフィナーレとなりました。
その間、25日のプロム11は「屋根の上のヴァイオリン弾き」ということで、小欄はお休みすることにしました。ということで26日の最終回。
7月26日 ≪Prom 12≫
ストラヴィンスキー/八重奏曲
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第2番
~休憩~
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番
マーラー室内管弦楽団
ピアノと指揮/レイフ・オヴェ・アンスネス Leif Ove Andsnes
最後は2番と5番「皇帝」ですが、今回の組み合わせはストラヴィンスキーのオクテット。管楽器のみによる作品で、当シリーズのストラヴィンスキーは初日が弦のみ。二日目が15人の管と弦のアンサンブル、三日目が管のみと、実にバランスが良く取れていることに改めて感心します。
八重奏も前日のダンバートン・オークスと同じく現代版ブランデンブルグ協奏曲で、編成はフルート、クラリネット、バスーン2、トランペット2、トロンボーン2(テナーとバス)の8人。これがまた実に巧い。全3楽章(第2楽章と第3楽章はアタッカ)が、バッハの精神とジャズの乗りで不思議な調和を醸し出します。
ここでピアノが持ち込まれ、前半の締めが第2ピアノ協奏曲。前回の事もあって、コンマスがピアノの「A」に向かう時に何やら意味あり気の様子。そう、ブラヴォー~を警戒しているのか期待しているのか、客席から笑い声が起き、ピアノの単音が鳴ると、ドッと拍手。正にクラシックの演奏会はエンターテインメントなのだ。
もちろん素晴らしいアンサンブル。マーラー室内管は単なる伴奏じゃなく、譜面から新鮮なアイディアを読み取ります。例えば第1楽章、ピアノが登場する前の81小節から84小節にかけてのヴァイオリンの刻みには明らかに意味を持たせている。展開部、269小節から174小節までのファーストとセカンドの対話には、対抗配置で演奏していることの効果が明瞭に聴き取れる、という具合。
演奏が終わって司会者がカーテンコールに合わせてプレイヤーの紹介をしていましたが、その中でオーボエが日本人奏者の吉井瑞穂であることに吃驚。私は不覚にもこの事実を知らなかったのですが、マーラー室内管のオーボエ首席は吉井が務めているのですね。
初日の感想でオーボエに触れましたが、その時はこの奏者が日本人であるとは全く知らず、あまりの音楽性に唖然としたもの。それが鎌倉出身の女性と知って真に誇らしく感じました。どうやら地元でも小さいコンサートを開いているようで、機会を見つけて是非聴かねば・・・。プロムスは、聴いていれば様々なことに出会うものです。
後半に付いては素晴らしいというしかないでしょう。当然アンコールがありました。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ作品31-3のメヌエット。
これで終わりかと思ったら、オケもアンコール。やはりベートーヴェンの12のドイツ舞曲集から2曲続けて、第11番と第10番が演奏されました。特に第10番のトリオ部にはトライアングル、大太鼓、タンバリンまでが賑々しく総動員されますが、これはオケの即興ではなくベートーヴェンのオリジナル。客席も演奏の途中から大喜びで、ベートーヴェン・チクルスは成功裡に幕を閉じました。
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