京都市響・第6回名古屋公演

去年のコンサートで“来年も来ますッ”と約束してくれた京都市交響楽団の名古屋公演、今年は猛暑で名高い名古屋は大暑の季節、7月30日に愛知県芸術劇場コンサートホールで開催されました。
今年の夏は特に暑さが厳しく、関東でも連日の様に猛暑日の記録が報じられていますが、覚悟して臨んだ名古屋の熱さはやはり一段上のランク。それでも来て良かった、来なきゃダメでしょ、と納得の演奏会です。

ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ
モーツァルト/ピアノ協奏曲第23番イ長調K488
     ~休憩~
ベルリオーズ/幻想交響曲
 指揮/広上淳一
 ピアノ/清水和音
 コンサートマスター/泉原隆志
 フォアシュピーラー/渡邊穣

実は、名古屋在住の家内の友人が去年の公演を聴いたとのことで、今年はそのまた友人と合計4人で乗り込むことに。優先予約を利用して1階のベストな席で鑑賞できました。
早目の夕食と団欒を済ませて会場入りすると、ホール内の冷房は効き過ぎるくらいでしたが、会場は期待を孕んで熱気充分。東京から駆け付けた評論家氏の姿も見かけます。

今回はフランス物を中心とするプログラム。最初のラヴェルから特別な時が刻まれます。ホルンのソロを中心にした管楽器のアンサンブルが見事。私はここで先ずヨーロッパを感じてしまいました。
澄み切っていながらも目に染みる様な色彩。ここに弦楽器のシットリとした合奏が加味されると、そこには落ち着いた哀しみが漂ってくるのです。まず最初の一品で、京都市響が世界でも第一級のアンサンブルに成長したことを実感。もちろん6月初旬に敢行したヨーロッパ公演の素敵なお土産に違いありますまい。

続くモーツァルトでも木管と弦のバランスは完璧。ここに清水のソロが加わり、モーツァルト協奏曲の真骨頂でもある対話の妙に暫し時を忘れます。
ラヴェルの哀しみを先取りするような第2楽章を終えると、間髪を入れずにピアノが叩くミ・ラ・ラーの単音による跳躍で開始される第3楽章は喜悦の世界。やっぱり音楽はナマで聴かなくちゃ。

喝采に応えて清水がアンコールしたのは、何と亡き王女のパヴァーヌのピアノ版。最初の和音が鳴った時に客席からどよめきが起きましたが、私も思わず声を上げてしまった一人。
このアンコール、想像ですが、清水一人が心に決めていたのじゃないかしら。言わばサプライズですが、同じ曲の原曲と管弦楽編曲版を同じ舞台で聴けるという望外の喜びに浸ります。二つの版のダイナミックスの違いが聴き分けられて、新たな発見も。

そしてメインは広上得意のベルリオーズ。彼の幻想は少なくともナマで2回は聴いてきましたが、どういう演奏に成るかは判ってはいても、改めて堂々たる構成力と斬新なアイデアに最後まで手に汗を握り通し。
特に今回は第1楽章と第4楽章の反復を全て行う徹底ぶりで、骨太でありながら光彩陸離たる管弦楽の響きに圧倒されました。私共の後ろで聴いていた友人たちも、“鳥肌が立つくらい、えりゃー感動したヨ”と驚きの声。そうでしょう、私の様に何度も聴いているスレッカラシだって舌を巻くのに、恐らく初体験なら仰天するのは当然というもの。
最後のブラヴォー連呼はホールをひっくり返したよう。

京都市響の名古屋公演は、アンコールの前にマエストロがスピーチするのが伝統。今回は開口一番、“熱いッすネ~”に大拍手。続けて“大好きな名古屋と言えば名フィル、名フィルと言えば小林研一郎先生ですよね”と、先輩に敬意。小林研一郎と言えば、「ダニーボーイ」ということでアンコールに繋げます。
今回は特別のプレゼントとして、コバケンさんの物真似付き。福島風の曲名紹介でアンコールに入ります。そう言えば広上氏、以前によく登場していたマエストロサロンで、“指揮者で食えなくなったら吉本で使ってもらう”なんで言ってましたが、そういう資質は増々磨きが掛かってきたようですな。

で、ダニーボーイ、これがあの曲かと思えるほどに分厚い弦の響きに、熱いパッションが渦巻く見事な表現。広上版ダニーボーイにまたもサプライズの名古屋の熱い夜でした。
来年も来ます、と約束してくれた当シリーズ。チケット発売当日に良席をゲットして出掛けるべきでしょう。はて来年は何人で聴くことになるのかな?

 

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