2015ヨーク・イボア開催初日

8月19日から4日間、ヨーク競馬場で恒例のイボア開催が行われます。かつてはイボア・ハンデが開催最大の呼び物でしたが、パターン・レース・システムが導入されるとハンデ戦の価値は下落。「イボア Ebor」は開催の名前として残り、替って現在では新しく創設されたジャドモント・インターナショナルが開催のメインになっています。もちろん現在もイボア・ハンデは行われますが、馬券対象としてはこちらの方が魅力があるようです。
その初日、G戦は3鞍ですが、前日の火曜日に14ミリの雨が降ったということで、馬場は good to soft といわゆる重馬場。これが、各陣営の思惑や結果を左右することになりました。

最初はアコーム・ステークス Acomb S (GⅢ、2歳、7ハロン)。10頭が出走し、人気は4対1で2頭が並ぶ混戦。オブライエン厩舎で、前走レパーズタウンで初勝利を挙げたばかりのレフテナント・ジェネラル Lieutenant General と、これも前走ニューマーケットに勝って注目されたレコーダー Recorder
レースはスタンド側を6番人気(10対1)のビン・バン・ボン Bing Bang Bong が逃げましたが、スタートこそ後手を踏んだものの遠い側を選んだレコーダーが残り2ハロンで先頭に立つと、横目に見て追走するビン・バン・ボンに1馬身4分の1差を付けて優勝。3馬身差で2番手を追走していたサイムリック Cymric が3着し、人気の1頭レフテナント・ジェネラルは8着に終わっています。

レコーダーはウイリアム・ハッガス厩舎、フランキー・デットーリ騎乗ですが、何と言ってもエリザベス女王の持ち馬ということが話題でしょう。もちろん女王と雖も競馬の世界では一オーナーに過ぎませんが、やはり良血の能力馬となればクラシックに期待が掛かろうというもの。ニューバリーのデビュー戦は3着でしたが、前走ニューマーケットで初勝利を挙げた時の2・3着馬が次の未勝利戦で2・1着しており、勝鞍そのもののレヴェルが高かったと評価されています。
父はガリレオ Galileo 母メモリー Memory もチェリー・ヒントン・ステークス(GⅡ)に勝っており、血統的な裏付けは充分。2000ギニーに25対1のオッズが出されました。次走はカラーのナショナル・ステークス(GⅠ)が有力。
ところで母メモリーは成長と共に気性も難しくなっていった馬で、最終的にはレースを拒否する形で引退に追い込まれました。今の所レコーダーにそのような気配は無いそうですが、一つ注意しておいた方が良いかも知れません。

続いてはセントレジャーの最も信頼できるトライアルでもあるグレート・ヴォルティジュール・ステークス Great Voltigeur S (GⅡ、3歳牡せん、1マイル4ハロン)。7頭が出走し、ここもオブライエン厩舎の馬が1番人気(11対4)に支持されていました。オブライエン師は3頭も参戦させ、どの馬にも可能性がありましたが、ジョセフ・オブライエンが選んだボンダイ・ビーチ Bondi Beach がその人気馬。前走カラー・カップ(GⅢ)を制してレジャー候補に名乗りを上げた1頭です。
逃げたのは6番人気(12対1)のメドラーノ Medrano でしたが、2番手を追走していた2番人気(3対1)のストーム・ザ・スターズ Storm The Stars が残り2ハロンで先頭に立ち、これを追っていたボンダイ・ビーチが並び掛けて2頭の一騎打ち。この競り合いでストーム・ザ・スターズが本命馬にぶつけるアクシデントもありましたが、最後はストーム・ザ・スターズが半馬身差で先着。4馬身半差で5番人気(7対1)のオブライエン勢ジョヴァンニ・カナレット Giovanni Canaletto が3着。最後の接触が審議となりましたが、最終的には入線通りで確定しました。
勝馬のコスグレーヴ騎手は接触を認めていますが、強い方が勝ったから問題無しと発言し、一方ジョセフは接触が響いたと証言しています。しかし裁決が決定したことが、結果の全てでしょう。

アコームに続いてG戦ダブルとなるウイリアム・ハッガス厩舎、パット・コスグレーヴ騎乗のストーム・ザ・スターズは、今期グッドウッドのリステッド戦に勝って挑戦したダービーが3着。その後も愛ダービー2着、パリ大賞典3着と惜敗が続き、ここで漸くG戦初勝利となります。
当然ながらセントレジャーの本命となるでしょうが、オッズはレース前の5対1から3対1に上がりました。また惜敗のボンディ・ビーチも12対1から一気に6対1に上がり、シーズン最後のクラシックでの2頭の再戦が楽しみになってきました。

最後は、開催の目玉でもあるジャドモント・インターナショナル・ステークス Judmonte International S (GⅠ、3歳上、1マイル2ハロン88ヤード)。当初はグレンイーグルス Gleneagles とゴールデン・ホーン Golden Horn の対決が最大の話題でしたが、前日の雨が文字通り水を差します。ヨーク競馬場との遣り取りの結果、当日の朝になってオブライエン師はグレンイーグルスを取り消し、最終的には6頭立ての競馬となりました。こうなってはゴールデン・ホーンを阻止する馬は無いとの評価で、ダービー馬が4対9の断然1番人気。相手も同じ3歳馬で、ロイヤル・アスコット(ターセンテナリー・ステークス)で目を瞠るような勝ち方をしたタイム・テスト Time Test が4対1の2番人気で続きました。
しかし、レースはスタートから波乱。大本命のペースメーカーを務める最低人気(100対1)のディック・ドーティーウイリー Dick Doughtywylie が肝心のスタートを失敗し、そこから一気にハナを奪って6馬身もの大差での無茶な逃げ。他馬はこれを完全に無視し、後続馬群の先頭にはジョイント5番人気(50対1)のアラビアン・クィーン Arabian Queen が立ちます。
ゴールデン・ホーンはこの後、3番手辺りを追走して残り1ハロン。鞍上デットーリはボタンを押すだけの状態でしたが、やはり雨で馬場が渋っていた所為かダービーのような瞬発力は見られず、一旦は先頭に立ったものの再びアラビアン・クィーンが差し返し、最後は首差で大逆転と言うスタンドも凍るショッキングな結末になってしまいました。3馬身4分の1差で3番人気(5対1)のザ・グレイ・ギャッツビー The Grey Gatsby が3着に入り、タイム・テストは更に1馬身4分の1差で4着。

勝ったアラビアン・クィーンは、デヴィッド・エルスワース厩舎、今年のリーディング候補シルヴェストル・デ・スーザ騎乗の出走馬中唯一の牝馬で、本命馬と同じ3歳世代。シーズン初戦のプリンセス・エリザベス・ステークス(GⅢ)に勝ち、コロネーション5着、フォルマス7着(最下位)、ナッソー3着と、それでもGⅠ戦線を闘ってきた馬で、2歳時にはダッチェス・オブ・ケンブリッジ・ステークス(GⅡ)にも勝っており、G戦は3勝目。レース内容から見て、明らかにスタミナが勝っていた結果と見るべきでしょう。
オーナーでもあるジェフ・スミス氏の自家生産馬で、今年はアスコットの長距離戦フィリー・アンド・メア・チャンピオンを目指し、来年は凱旋門賞を目標にするとのことでした。
その凱旋門賞、この結果を受けてブックメーカーはゴールデン・ホーンのオッズをレース前の9対2から8対1に落とし、トレーヴ Treve のそれは9対4から更に7対4へと上昇。もちろんゴールデン・ホーンも次はロンシャンのトライアルに出走する予定ですが、あくまでも馬場状態が鍵。グレンイーグルス同様、スピードが活きる馬場でなければ出走しないと思われます。

ゴスデン師は重馬場、エクリプス以来のブランクを敗因に挙げましたが、予定していたキングジョージを雨で回避したことが計算を狂わせたようです。一方、オブライエン師はグレンイーグルスに付いて、セックス・ステークスを「馬場が悪くなりそう」という理由でを取り消しましたが、初の10ハロン挑戦も又しても回避。現時点では馬場が良さそうな愛チャンピオン・ステークスで再び10ハロンに挑む考えを表明しています。

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください