２０１５ヨーク・イボア開催３日目
８月２１日、ヨーク競馬場イボア開催の３日目も引き続き good to soft 。この日のＧ戦２鞍は長距離と短距離、極端なレースを並べてメリハリを付けています。
先ず長距離のＧ戦ロンスデール・カップ Lonsdale Cup (ＧⅡ、３歳上、２マイル８８ヤード)は、３頭が取り消して８頭立て。アスコット・ゴールド・カップの勝馬トリップ・トゥー・パリ Trip To Paris 、これをグッドウッド・カップで破ったビック・オレンジ Big Orange も登場する豪華な顔ぶれでしたが、３対１の１番人気に支持されたのは、前走キングジョージに挑戦して５着だったクレヴァー・クッキー Clever Cookie 。シーズン初戦にオーモンド・ステークス(ＧⅢ)でＧ戦初勝利を挙げている馬でした。
３番人気(９対２)のビッグ・オレンジが逃げましたが、３番手に付けていた２番人気(７対２)でサガロ・ステークス勝馬のミッズー Mizzou が抜け、これと並走していた６番人気(８対１)マックス・ダイナマイト Max Dynamite との一騎打ち。しかし手応えが勝っていたのはマックス・ダイナマイトの方で、ミッズーに４馬身半の大差を付ける完勝。更に１馬身差で最後方から追い込んだ４番人気(１４対１)の牝馬ヒドゥン・クラウド Hidden Cloud が３着に入り、チョッとした波乱となりました。クレヴァー・クッキーも後方から追い上げましたが４着。ＧⅠ勝ちのペナルティーを背負ってジョイント４番人気(７対１)と嫌われたトリップ・トゥー・パリは５着、ビック・オレンジも７着に沈んでいます。
周囲をも驚かせたマックス・ダイナマイトは５歳せん馬で、前走はアイルランドの障害戦で２着しており、平場はその前にニューキャッスルのノーザンバーランド・プレートで２着。平場も障害も走る馬は珍しくありませんが、ハードルの前走から平場のＧⅡに勝ったのは驚きです。管理するのはウイリー・マリンズ師、騎乗していたのはフランキー・デットーリでした。
実はマックス・ダイナマイトは３歳シーズンまではフランスで調教されていた馬で、仏ダービー８着、パリ大賞典も８着と一応クラシック路線に乗った馬。その秋にはニエル賞でキズナの７着だったと言えば、記憶の片隅に残っている方もいるでしょう。それより父は日本産のグレートジャーニーであると言った方が、より親しみが沸くかもしれません。秋にはメルボルン・カップ(オッズは１６対１)に挑戦し、来年はゴールド・カップという期待も生まれてきました。せん馬だけに種馬としての価値ということを気にせず、どんなレースにも挑戦できるところが同馬の強みでしょう。
続いて開催三つ目のＧⅠ戦となるナンソープ・ステークス Nunthorpe S (ＧⅠ、２歳上、５ハロン)。２歳馬にも出走権があるのがこのレースの特徴で、２０頭の出走馬の中にもただ１頭の２歳馬が挑戦してきました。その２歳馬はアスコットでクィーン・メアリー・ステークス(ＧⅡ)を制したアメリカの快速牝馬アカプルコ Acapulco で、再度の渡英に何と１３対８の１番人気。全馬がゲートインした所でテイク・カヴァー Take Cover がゲートを押し開けて飛び出し、逸走するハプニング。結局この馬は発走除外となり、改めてゲートインをやり直しての発走、最終的には１９頭立てとなりました。
予想通りダッシュ良く飛び出したアカプルコ、そのまま快調に飛ばしましたが、馬場がアスコットとは異なっていたこともあり、２番手を追走した３番人気(１５対２)のメッカズ・エンジェル Mecca’s Angel に２馬身差の２着。大幅な負担重量差があったとは言え、古馬相手に２歳牝馬の２着は大健闘と言えるでしょう。同じく２馬身差で５番人気(１２対１)のマトムー Mattmu が３着に入り、このレース３度目の制覇を目指した４番人気(８対１)のソール・パワー Sole Power も４着に健闘。
勝った４歳牝馬のメッカズ・エンジェルはマイケル・ダッズ厩舎、ポール・マルレナン騎乗で、調教師にとっても騎手にとってもＧⅠ戦は初制覇となります。シーズン最初に渡仏してサン・ジョルジュ賞(ＧⅢ)に勝っており、Ｇ戦は３勝目。ロイヤル・アスコットにも登録がありましたが、馬場が固いので取り消し、前走は重馬場を求めてアイルランドに遠征、サファイア・ステークス(ＧⅡ)で２着していたほどの重馬場好き。この日も陣営は“もっと雨が降って欲しい”とコメントするほどでしたが、それでもＧⅠ獲りを成就しました。
今年の目標は、雨が期待できる凱旋門賞ウイークのアベイ・ド・ロンシャン賞ですが、来年も現役を続行し、馬場が重い短距離戦があれば何処へでも出かけていく構えです。
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